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第4章ー5

 牟田口廉也中将の発言を受け、樋口季一郎中将が発言した。

「まず、いわゆる満州領内からソ連軍を基本的に排除するのが第一段階です。それが完了した後で、満州東部、満州北部、満州西部、及び満州領内に分けてそれぞれで、ソ連軍に対する対処を開始します」

 樋口中将は、そこで発言を一旦は切った。


「満州東部については、日本軍と韓国軍が対処します。ハバロフスク方面へ対処する軍を第1軍、イマン方面へ対処する軍を第2軍、マンゾフカ方面へ対処する軍を第3軍、ヴォロシロフ方面へ対処する軍を第4軍と仮に呼称しますが、第1軍と第3軍は牽制に使い、第2軍と第4軍が主な攻勢軸となり、シベリア鉄道等を二か所で完全に寸断します。そして、イマンとヴォロシロフを制圧した後、第3軍を投入し、イマン以南を完全に占領下に置きます。その後、ハバロフスクを攻略して、攻勢は一段落することになります。なお、韓国軍は助攻に徹し、ウラジオストク制圧を目指します」

 樋口中将は説明を行った。


「満州北部は、米軍が対処します。ブラゴベシチェンスクを中心とするアムール州制圧を米軍は目指すことになります」

 樋口中将の説明は簡略だった。

 満州北部への攻勢は、米軍が行う以上、米軍に任せてしまうべきだということだろう。


「満州西部ですが、ザバイカル方面からの大規模な攻勢が、ソ連軍によって行われる危険性が、それなりにはあります。これに対しては、米軍が基本的に対処しますが、日本軍も一部を予備として残しておき、救援に迎えるようにしておくことで万全を期します。その任務には山下奉文中将率いる機甲部隊を宛てる予定です」

 樋口中将の言葉に、山下中将は満足げな表情を示した。


「満州領内ですが、ソ連軍に味方する民衆によるゲリラ活動の危険性は否定できません。そのために満州国軍に治安維持のために奮闘してもらう予定です。少なくとも、日米軍が対処するよりも住民の支持を集めやすいと私は考えています」

 樋口中将は、説明を終えた。


 なお、樋口中将の意見は、小畑敏四郎大将の考えでもあった。

 会議が始まる前に小畑大将と樋口中将は、関東軍の幕僚と入念な作戦計画を立てていた。

 だが、小畑大将が自ら言っては、会議の参加者が忌憚のない意見を言えないかもしれない。

 そういった考えから、小畑大将ではなく、樋口中将が発言することになっていた。


 樋口中将の発言を聞いた日本軍の将官の多くが同意する姿勢を示した。

 まずは足場固めとして、満州領内からソ連軍を基本的に駆逐する必要があった。

 更にソ連軍に味方する住民への対処の必要もある。

(日米満韓側も、反ソ、反外蒙古を唱えるモンゴル民族主義の住民が行う武力闘争への大規模な武器援助等を行っていることを考えれば、お互いさまとしか言いようがないが。)


 そして、北満州においては、半年乃至1年に渡って、ソ連軍の統治下にあったためもあり、様々な問題が生じている。

 例えば、鉄道はソ連仕様の広軌に改軌されているし、一部の指導者層の住民は家族ともども、従前からの反ソ活動等を理由に反革命罪として軍事裁判に掛けられるためにソ連へと連行されている。

(従前からの反ソ活動というが、要するにソ連に味方してソ連軍の侵攻に協力しなかったことから、半ばでっち上げられた犯罪だった。


 こうした状況に鑑みれば、満州国政府という基盤があるとはいえ、北満州において、安定した統治体制を再構築するのには、大変な手間が掛かると日本軍、政府は考えざるを得なかったのである。

(なお、米満韓も、これには同意していた。)


 来春にならないと対ソ侵攻は無理だ。

 それが、この会議の参加者の殆どの意見であり、最終的な会議の結論にもなった。

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