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間章ー1

 間章になります。

「四姉弟」の半日常パートになります。

「どうも、この度は」

 それ以上は言わず、土方千恵子は、嫡母である岸忠子に頭を下げていた。

 忠子も頭を下げ返してはいたが、半ば心ここに非ずという状況のようだった。

「無理もない」

 日頃から犬猿の仲であるとはいえ、忠子は千恵子にとって嫡母と立てるべき人である。

 千恵子はそう想い、忠子に心から同情した。


 8月下旬、お盆が終わり、朝夕が少しずつ涼しさを増す中、先日、千恵子の長女である和子の百か日のお祝いを、土方家ではしたばかりだった。

(第二次)世界大戦の真っただ中であり、更に千恵子の夫の勇や義父の歳一が欧州に出征中とはいえ、全くお祝いをしないという訳にもいかない。

 文字通りの家族だけで和子の百か日の祝いを土方家ではしてすませた。


 そして、9月半ば頃に千恵子からすれば異母弟になる岸総司の初めての子、千恵子にしてみれば初の甥姪(細かいことを言えば、千恵子の異母姉、村山幸恵が既に娘を産んでおり、そちらが千恵子にしてみれば初の姪になるのだが、幸恵は表向きは千恵子とは赤の他人なので、千恵子としては叔母と名乗る訳には行かず、総司の子が、初めて伯母と名乗れる甥姪になる)が、産まれるのを千恵子は指折り数えて待ち望んでいたのだが。


 9月初めのある日の昼間、一本の電話の呼び出し音が、千恵子の想いを壊すことになった。


「はい」

 たまたま、近くにいた千恵子の義祖父、土方勇志が電話を取ったのだが、勇志自身も老齢から耳が遠くなっていたことや、電話の相手が興奮していたことから、やり取りに手間取ってしまった。

「私が聞きますから」

 千恵子が思わず口を挟んでしまい、電話を代わりに聞いたところ。


「ですから。総司の息子が産まれたのですが、総司の妻が難産で亡くなったのです。何度言えば分かるのですか」

 忠子が興奮して、半ば絶叫していた。

「ええ。それは」

 千恵子は絶句してしまった。


 その後の細かいやり取りを、千恵子は半ば忘却している。

 千恵子にしてみれば、総司の妻は、忠子には表向き内緒にしているが、学校の同窓生の妹であり、個人的な面識がある人であった。

(なお、忠子も薄々は察していたが、総司の妻が出来た女性だったので、不問にしていた。)

 その人がお産で亡くなった。

 衝撃が大きすぎて、千恵子の意識も半ばとんでしまったのだ。


 幾ら岸家と土方家に、色々と行きがかりがあるとはいえ、岸総司と土方千恵子が異母姉弟である以上、総司の妻が亡くなった場合、千恵子を総司の妻の葬儀に岸家は呼ばない訳には行かない。

 また、そもそも最近は疎遠になっていたとはいえ、岸家の家長の岸三郎と、土方家の家長の土方勇志は海兵隊時代以来の親友でもある。

 そういったことから、横須賀の自宅で行われる岸総司の妻の通夜と葬儀に、土方勇志夫妻と土方千恵子は、急きょ駆けつけて、参列することになっていた。


「済まないが、総司の息子の面倒を見てくれないか」

 岸三郎に頼まれて、千恵子は別室にいる総司の息子の面倒を見ることにした。

 確かに、総司の息子の面倒を近所の知人等に頼むわけにはいかないだろう。

 そして、総司の親戚で、赤子の面倒を見ることが出来る人間となると。

「確かに私しかいないわね」

 千恵子は、自分で自分を納得させ、総司の息子の面倒を見ることにした。

 そこに助っ人が現れた。


「私も手助けしていいかしら」

「幸恵さん」

 村山幸恵が、総司の息子と千恵子のいる別室に顔を出した。

「色々と縁があるから助けようと思って」

「どうもありがとうございます」

 幸恵と千恵子は、言葉を選びながら、会話をした。


「それにしても、こんなことになるとはね」

「ええ」

 幸恵と千恵子は、声を潜めて更に会話をした。

「総司に対して何と伝えればいいのか」

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