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第1章ー2

「同盟軍への非難は、そこまでにしておけ。とは言え、英仏軍に対する意見としては間違ってはいない。機動戦を展開しようと思えば、色々と装備や教育訓練等も改編する必要があるのだが。現実問題としては英仏軍は、これまでそのような対策を取っていなかったのだ。だから、英仏軍の内部でも、現実が分かっている者からは装備や教育訓練が終わらないと攻勢は取れません、と内々に言ってくれているのだ」

 石原莞爾中将の意見に対して、北白川宮成久王大将はそうたしなめた。


 だが、そう言いながらも、北白川宮大将は考えを巡らさざるを得なかった。

 かつて、第一次世界大戦で肩を並べて戦った仏軍の現在の体たらくについては、本当に泣けてくる。

 我が日本海兵隊の零式戦車は、実質的には仏製と言っても過言ではない戦車なのだ。

 何しろ、主砲もエンジンも、仏製の物を転用して開発したのだから。

 実際、仏陸軍に日本海兵隊の零式戦車の情報を設計図込みで流したら、慌てて開発しようとしており、1年以内に量産可能という情報さえ、仏陸軍から入ってくる有様だ

(もっとも、仏陸軍の本音としては、更に日米企業の量産ノウハウの提供も必要らしい。)

 幾ら日本海兵隊が、仏陸軍の直弟子であることを、自他共に認める存在とは言え、北白川宮大将からすれば、息子のすねをかじる親にも程がある存在にさえ、現在の仏陸軍は見えていた。


「となると、やはり独軍の攻勢を返り討ちするという基本方針で行くしかありませんな。20年余り前の大勝利の再現を目指す、ということになりますか」

 二人のやり取りを聞き終えた土方歳一大佐は、口を出した。

 20年余り前の大勝利、それは第一次世界大戦末期、独軍が行った最終攻勢を英仏連合軍が粉砕した大勝利の事だった。


 1918年春、独軍はカイザーシュラハトと称される最終攻勢を行った。

 英仏連合軍はこれを迎え撃ち、大勝利を収めた。

 この時、日本海兵隊自体は補充再編制の真っ最中であり、参加していなかったが、林忠崇元帥が英仏日統合軍司令部の総参謀長として加わっており、作戦立案の一翼を担っている。

 また、当時の海軍航空隊も前線に赴き、戦果を挙げている。


 その大勝利の再現を目指す、ということか、と土方大佐は言っていた。

 だが、北白川宮大将は無言で頭を振った。

「それでは、どういう基本方針で行くのでしょう?」

 土方大佐は疑問を覚えた。


「それを考えている。あの基本方針を単純に採用するだけでは、今では古い戦術ということになる。航空機を活用すると共に戦車を集中運用して、戦線を突破し、敵の後方へと迅速に進撃して勝利を収めるという事が今ではできるのだからな」

 北白川宮大将は、暫く考え込んだ後で言った。

「確かにそうですな」

 土方大佐はそう言って、石原中将もそれに肯いた。


「だが、ここで考え込んでいるだけでは、いい知恵も浮かびそうにない。ここは外部の知恵を積極的に借りるべきだろう」

 北白川宮大将は更に続けた。

「外部の知恵とは?」

 石原中将は、北白川宮大将に問いかけた。


「ポーランド軍のレヴィンスキー将軍の知恵を借りようか、と考えている。それにポーランド軍なら、30個師団を再編制して前線に投入されようとしている。我が日本海兵隊より遥かに兵力が多いからな。英仏軍に対する影響力も大きい。そして、実際に独ソ両国軍と交戦したことのある将兵もいる」

「確かにそれは妙案でしょうな」

 北白川宮大将の言葉に石原中将は同意し、他の司令部の面々も次々に賛意を表した。


「土方大佐、君はレヴィンスキー将軍と直接、面識があったし、ポーランド語もできたな。ポーランド軍総司令部に行く際に同行してくれ」

 北白川宮大将は、土方大佐に命じた。

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