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第3章ー16

 ハルピン市街攻略作戦だが、本来は日本軍単独で攻略したいところだが、マッカーサー将軍率いる米軍にも栄誉を与えるべきし、本来は満州国領ということもあって満州国軍も参加させねばならない。

 事実上は実際の作戦を立案する小畑敏四郎大将は、頭を痛めながらハルピン攻略作戦を練る羽目になった。


「林忠崇元帥がいかに非凡な名提督だったか。本当に実感するな。言語の違いは厄介だ」

「土方勇志大将も、中々ですがね。スペインで各国の義勇兵をとりまとめて、勇戦されたのですから」

 関東軍の幕僚達の補佐も受けながら、参謀長の樋口季一郎中将と小畑大将は作戦内容を立案しつつ、会話をしていた。


「まだ、日本語と英語、中国語で何とかなるのが救いですね。それなりに馴染みがある」

「先の世界大戦時には、日本語、英語、仏語に加え、ワロン語、フラマン語まで林元帥の総司令部では飛び交ったな。ワロン語は仏語の方言に近かったが。ベルギー軍は、表向き仏語を共通語にしているが、どうしても咄嗟の際には地の言葉が出るものだから、あれには参った」

「それは凄い。日本語の方言の差どころではありませんな」

 小畑大将と樋口中将の話を横で聞いた幕僚の1人は一驚して口を挟んだ。


 半分、冗談だが、と小畑大将は想いを巡らせた。

 現場ではともかく総司令部では、一応、日英仏の三か国語で済んでいた。

 とは言え、本格的な都市の攻略をこの地で三国共同で行うのは初めてで、幕僚は頭を痛めている。

 幕僚の多くの気を少し軽くする冗談は許されるだろう。


「昔話はそれまでにして、やはり最前線は日米軍で固めないといけないだろうな。満州国軍は、後方警備任務に当たってもらおう。どうにも不安がある」

「実力はかなり上がっていると思いますが、最前線で日本語と英語に加え、中国語まで飛び交っては堪りませんな。下手をすると同士討ちをやりかねない」

「その通りだ」


「西側から米軍が、東側から日本軍が襲い掛かりますか。北側はどうします」

「囲む師は欠くという。それから言うと北を開けるべきだろうが、ハルピン守備隊に増援が送られる可能性があるからな。完全包囲を目指すしかあるまい」

「確かに」

 小畑大将と樋口中将と幕僚達は、作戦計画を少しずつ詰めていった。


「ハルピンを死守しようとするソ連軍は、どの程度だ」

「敵の通信符丁を解析等し、航空偵察も行った結果、全部で6個師団、ただ前線から退却してきた部隊がほとんどであることもあり、実質戦力的には4個師団といったところでしょうか」

 情報を担当する幕僚が、小畑大将の確認の問いかけに答えた。


「ソ連軍は救援部隊を送りますかね」

「送らないとする根拠は無いが、ザバイカル方面から部隊を送るのは、現状から言って困難だろう。だからといって、アムール州や沿海州方面から部隊を送るのもどうかな」

「となると、ハルピン守備隊は捨て石になりかねませんが」

「それでも構わない、と考えているのかもしれんな」

「えっ」

 幕僚達と会話しつつ、小畑大将は思いがけないことを言い、幕僚の1人を絶句させた。


「ペトロパブロフスク=カムチャッキーは陥落し、ウラジオストクにも韓国軍が迫ろうとしている。外蒙古政府も足元がぐらつきだしている。ソ連としては、自国の防衛を考えないといけなくなりつつあるわけだ」

「確かに」

 別の幕僚が同意の言葉を発した。

「だから、ハルピンで日米両軍を足止めする。ここで日米両軍を足止めすれば、ソ連領への本格的な侵攻が遅れる。その間に充分な防衛態勢をソ連軍は固めたい訳だ。我々としては少しでも早く戦争は終わらせたい。だからハルピンを我々は速やかに落とさねばならない」

 小畑大将は力強く言い、幕僚達も同意した。

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