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第3章ー12

 そういった様々な思惑が絡みながら、1940年5月下旬からの日米満韓の攻勢は発動された。


「さすがに凄い砲爆撃だな。日米の総力を挙げた大攻勢と呼ぶに相応しいものだ」

 島田豊作大尉は、思わずそう呟いていた。

 第5師団の隷下にある戦車大隊の一員として島田大尉は、この大攻勢に参加している。

 小畑敏四郎大将の命令により、ソ連軍の戦線を一度に大突破できるように、最前線のみならず、後方にまで一度に日本軍の砲爆撃が加えられている。

 これだけの砲爆撃を浴びせれば、ソ連軍の戦線に綻びが生じるのは必然だ。

 味方が航空優勢を確保していることが、これだけの攻撃を可能にしている。


「おそらく、米軍も同じような砲爆撃を加えているのだろうな」

 島田大尉は、想像していた。


 実際、その想像は間違っていなかった。

「能う限りの砲弾と爆弾を、ソ連軍に叩き込め」

 クルーガー将軍の命令の下、米軍も同様の行動を取っていた。


「ソ連軍の戦線を大規模に一度に崩壊させる」

 その意志統一の下、日米両軍は大攻勢を発動していたのである。

 その攻撃の幅は200キロ近く、その縦深は100キロに及ぶ。

 泉下のソ連赤軍のトハチェフスキー元帥が見れば、

「正に自分が理想としていた大攻勢」

 と唸りそうな作戦計画だった。

 スペイン内戦に日本が介入し、その地で、ソ連軍の各種資料を手に入れ、それを日本の軍部が咀嚼できたこと、更にその知識等を米軍が受け入れたことが、このような事態を引き起こしていた。


 2時間近い砲爆撃が行われた後、日米軍は前進を始めた。

 最前線から後方まで一度に砲爆撃が浴びせられた結果、砲爆撃により損害を被っていたソ連軍の予備部隊の移動は困難を極めることになった。

 このことは、最前線の綻びをソ連軍が防ごうとするのを極めて困難にすることになった。


「どんどん前進するぞ」

 第1機甲師団の一員として、99式戦車に乗って、西住小次郎大尉は、上機嫌で前進を開始した。

 ソ連軍の最前線は半ば崩壊している。

 我が軍の戦車と歩兵を連携させた攻撃を、まともに阻止できてはいない。

 攻撃開始の初日の内に、日米両軍の大攻勢の矛先の最先端は、40キロ近い前進を果たした。


 とは言え、それはソ連軍の阻止行動を完全に不可能にするものではなかった。

 

「何だ。あの化物は」

 西住大尉は二日目に会敵したソ連軍の戦車に驚愕する羽目になった。

 嫌、本当は自分でも分かってはいる。

 だが、それを認めたくなかった。


 これまで、どんな敵戦車であっても屠ってきた99式戦車の47ミリ砲が、自分の撃った弾も含めて、数発は命中している。

 しかも(戦車乗り的には充分な近距離である)500メートルを切る距離で当たっているのだ。

 それなのに、敵戦車は平然とこちらの砲弾を無視して、主砲で味方の戦車を撃ってくる。

 敵戦車の主砲の発射速度が遅いのが救いだが、敵戦車の主砲弾が命中した味方戦車は一撃で破壊されているようだ。


「煙幕を張って後退しろ」

 西住大尉は、断腸の思いでそう部下達に指示する羽目になった。

「KV-1戦車だ。間違いない」

 西住大尉は、歯噛みをする想いをしながら、そう呟いて自車を後退させた。

 幸いなことに、敵戦車の部隊(西住大尉の見るところ、1個小隊4両)は追撃を掛けてこず、防御に徹するようだった。


 そうはいっても。

「あいつが我が軍の進路に立ち塞がったままでは、我々は前進できない」

 西住大尉は呟いた。

 3月時と違い、我が第1機甲師団にも、100式重戦車を装備した師団直轄の独立重戦車大隊が配備され、KV戦車殺しの期待を掛けられてはいるが。

「あいつに100式重戦車で勝てるのか?」

 西住大尉は不安に駆られることになり、部下や同僚も同じ思いをこの時はした。

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