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第3章ー11

 満州方面でそのような攻勢作戦が立案されていた頃、韓ソ国境でも攻勢作戦が立案されていた。

 板垣征四郎大将は、内心では不安を覚えていたが、表に出さないようにしつつ、韓国軍の幹部と攻勢作戦について話し合いをしていた。


「ウラジオストク攻略作戦の発動について、日本軍はできる限りの協力をする予定があります」

「おお」

 板垣大将の言葉に、韓国軍の幹部はどよめいた。

「但し、それは物資等のみです。我が軍の兵力は、満州方面で手一杯であり、韓国方面には割けません」

 その板垣大将の続けての言葉に、韓国軍の幹部は相次いで噛みついた。

「我が国は50年近く、日本の忠実な同盟国でした。その同盟国よりも蒋介石を支援するというのですか」

「満州方面には、米軍もいる。日本軍を同盟国の我々の支援に回していただきたい」


 よく言うよ。

 板垣大将は、顔に出さないようにしつつ、内心でぼやいた。

 シベリア出兵で機会主義的対応をして、尼港事件で我が国の国民にまで犠牲者を出させた癖に。

 また、満州事変でも果実を日本にさらわれた、と陰で非難しているらしいが、そもそも当時の中華民国政府の挑発行為に、韓国政府も周囲を巻き込んで煽り返してしまい、結果的にお互いに引っ込みがつかなくなった末ではないか。

 挑発行為を煽り返して更に傷口を広げ、最後にどうするという見込みも無しにやり返すな。

 それらのために、我が国がどれだけ韓国の尻拭いをし、血を流す羽目になったと思っているのだ。


(ちなみに、これは板垣大将の個人的な想いであり、必ずしも正確な認識ではなかったが、この世界の当時の多くの日本人が共感する想いでもあった。)


「皆様の要望は日本本国に伝えます。ですが、本国から私に与えられた指示は、既に述べた通りです。今回のウラジオストク攻略作戦については、兵力的には韓国軍のみで行っていただきたい」

 板垣大将の懸命の説得に、韓国軍の幹部の面々も矛を収めざるを得なかった。


「それならば、我が韓国空軍は全力をもって、ソ連空軍の航空基地に対する航空攻撃を加え、航空優勢の確保に努めよう」

「その航空優勢の下、我が韓国陸軍はウラジオストク攻略を目指して前進しよう」

「我が韓国海軍も巡洋艦や駆逐艦による海上からの支援を検討しよう」

 韓国軍の幹部は、板垣大将の目の前で、それぞれの立場に応じた発言をし出した。


 板垣大将は、半ば冷ややかな想いをしながら、その光景を眺めていた。

 韓国軍が、ウラジオストク攻略作戦を発動することについて、自分も賛同はする。

 だが、戦力的にはかなり無理筋だろう。

 質的にソ連軍よりかなり劣る韓国軍が、ソ連軍に攻勢を取って勝てるとは思えない。

 それが成功するとしたら、かなりの兵力を満州方面にソ連軍が向けており、圧倒的な兵力を韓国軍が確保している場合になるだろうが、現状では、そこまでの格差が韓国軍とソ連軍との間にはできていないとの情報が、自分の手元には入っている。


 だが、韓国軍が攻勢を取る意味は、韓国軍からすれば言語道断の話だろうが、我が日本軍的にはソ連軍をウラジオストク防衛に引きつけるという点で大いに意味がある。

 既にソ連太平洋艦隊は水上艦艇を大量に失っており、また、機雷封鎖によってウラジオストクは軍港としての価値を急速に失いつつある以上、軍事戦略以下の観点からすればウラジオストクを守ることは意味を喪失しつつあると言っても過言ではない。

 その一方で、ウラジオストクは、ソ連にしてみれば極東における極めて重要な拠点であり、国家戦略の観点から言えば、そう易々と日米満韓の占領下にすることはできない。

 韓国軍の攻勢は、ソ連軍を引きつけることになるだろう、そう板垣大将は考えていた。

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