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第3章ー10

 しかし、これまでの進撃等の関係から右翼を日本軍が、左翼を米軍が基本的に担当するという状況になってしまっている。

 そして、部隊の転換配置の手間を考えると、左翼に日本軍を右翼に米軍をと作戦開始前に入れ替えるというのは、時間等の問題から困難だったのである。

 そのためにこのような事態が引き起こされていたのだった。


「機甲部隊を中央部に置き、いざという場合の米軍支援にも向かうことが出来るようにしましょう。山岳地帯は歩兵部隊に任せましょう。幸い第7師団を初め、山岳部隊も駆けつけました」

「山岳部隊が駆けつけたのは救いだな」

 樋口季一郎中将の言葉に、小畑敏四郎大将は頷きながら言った。


 日ソ開戦に伴い、樺太でも戦闘が行われていた。

 こちらでは樺太が半孤立状態にあることもあり、第7師団を主力とする日本軍が優勢で、既に樺太全土を日本軍が制圧していた。

 そのために予備役兵を動員した治安維持部隊に樺太を任せ、第7師団等は満州に赴いていたのである。

(その代り、補給や補充等の関係から損耗の激しい部隊を日本本土に帰還させており、そのために小畑大将の隷下にある日本軍の総数は、春先からほぼ変わらない状況にあった。)


「国力や兵力に余裕があるなら、樺太にいる部隊等を活用してのアムール川河口からハバロフスク方面への侵攻作戦というのも、作戦家としてはやってみたいが、兵力分散の極みだからな」

 第7師団が来ていることから、小畑大将はそういった作戦を連想して思い付き、思わず口に出した。

「確かに作戦的にはおもしろそうですが、現在の状況から考えると、その侵攻部隊は内線を占めるソ連軍の各個撃破の対象になって終わりでしょうな」

 樋口中将も思わず口に出して答えて、お互いに思わず笑いあった。


「それはともかくとして、航空撃滅戦でソ連軍に対して、我々がほぼ優位に立てていることは幸いだ。大規模な作戦を発動する際に、航空支援を当てにできるしな」

「確かに、そろそろKV戦車が欧州から来る頃でしょうしな。あいつは航空攻撃で何とかしないと」

 密かに日米英仏等に誼を通じているフィンランド政府、軍から、ソ連軍の新型戦車、KV戦車についての情報が関東軍にまで届いていた。

 その情報を信じるならばだが。


「KV戦車は2種類あり、1種類は76ミリ砲搭載、もう1種類は152ミリ砲搭載とのことだったな」

 小畑大将は、樋口中将に自らの認識が正しいかを確認するためもあり、問いかけた。

「その通りです。なお、砲塔が違うだけで、車体はほぼ同じとのことです。フィンランドからの情報を信じればですが」

「フィンランド軍の37ミリ対戦車砲が全く役に立たなかった怪物戦車とのことだったな」

「その通りです。ただ機械的信頼性がかなり低いみたいです。2種類とも機械的故障から戦場に遺棄された車両が複数、フィンランド軍に鹵獲されました。それを調査した末での報告ですから」

「我が軍の最新の対戦車砲47ミリ砲は、どう評価されている」

「参謀本部からの連絡では、KV戦車が相手では、履帯等を破壊するのが精一杯とのことです」

「携帯式対戦車噴進砲は?」

「口径が70ミリありますから、当たり所が良ければというところでしょうか」

「戦車対戦車の対決になった場合は?」

「我が軍の99式戦車では話にならず、100式重戦車でさえ何とか対抗可能というところでしょうか」

「厄介極まりない相手だな」

「少しでも有利に戦えるようにという事で、57ミリ砲搭載の1式中戦車や76ミリ長砲身に主砲を換装した100式重戦車改が、来年初頭には量産可能になるそうですが、現在には全く間に合いません」

 小畑大将と樋口中将は、渋い顔で話し合う羽目になった。

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