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第1章ー1 独仏戦

 第1章の始まりになります

 そんな会話を父と息子の嫁がしていることなど、フランス、パリにいる土方歳一大佐は知る由も無かった。

 5月末、土方大佐は、近々行われると想定されている独軍の仏方面への侵攻作戦の予測、対処に手一杯という現実があった。

 土方大佐の見るところ、主な問題点は二つだった。


 一つ目が、独軍の攻勢に対し、積極的な反撃を試みるか、守勢を執った上で反攻を試みるか、という基本的な作戦方針だった。

 二つ目が、独軍がどこで攻勢を取るか、という点だった。


 特に一つ目が問題だった。

 主力となる英仏軍が、守勢に凝り固まっているのだ。

 一方、米軍は攻勢を積極的に主張している。

 そして、日本、自由ポーランド軍が中間といったところだった。


(ちなみに、ベルギー、オランダ軍の態度は、英仏よりだったが、日米、ポーランドはそれをやむを得ないと考えていた。

 何しろ、両国共に中立政策を、つい最近まで標榜しており、両国の軍部には、攻勢を取る能力は絶無といってよい有様だった。)


 英仏軍の主張は明確だった。

「長期戦になればなるほど、国力に勝る我々が有利だ。当面は、ひたすら守勢に徹すればよい。そして、完全に我々が戦力的に優勢になってから攻勢を取ればよい」

 これに、米軍、特にパットン将軍は猛反論していた。

「戦争というものは、さっさと終わらせるもの。独の野郎どもが来たら、思い切り叩きのめして、ベルリンへの進撃を図るべきだ」


「敵わないな。本音としては、パットンに味方したいが。如何せん、兵がいない」

 遣欧派遣総軍総司令官の北白川宮成久王大将は、そのように司令部の面々に嘆いた。

 実際、日本軍の主力となるのは6個海兵師団に過ぎない。

 同盟軍である英仏米軍でさえ、質においては最強と目してくれるものの、6個師団では兵が少なすぎた。

 何しろ、英仏軍は、英本国に残っている兵も含めれば144個師団もいる。

 更に祖国を脱出したポーランド軍が、祖国解放のためにと世界各地から駆け付けたポーランド系の志願兵も受け入れることで、仏において30個師団余りを整えようとしていた。

 それに対して、欧州にいる米軍は未だに司令部のみだった。

 第二次世界大戦勃発に伴い、新しく編制を完結した米陸軍師団は、マッカーサー将軍の要請等から、満州や中国本土へとまずは向けられている。


「全くですな。戦争は早く終わらせるものです」

 ノルウェーから帰ってきたばかりの石原莞爾中将も、北白川宮大将に同意していた。

「とは言え、実際問題として、我々の側が攻勢を取るのは現実には困難です」

 石原中将は言葉を継いだ。


「どういう理由かね」

 北白川宮大将にしても、理由は分かってはいる。

 だが、司令部全体の認識を一致させるために、敢えて石原中将に公言させた。

「英仏軍に機動戦の理解が乏しいことです。今、懸命に理解しようとしている真っ最中です。こんな状況で我々が独軍に対して攻勢を取れば、独軍の機動防御の前に翻弄されて終いです」

 石原中将は辛らつに英仏軍を評した。

 この言葉に、土方大佐をはじめ、司令部の面々は全員が肯かざるを得なかった。


 第二次世界大戦へき頭におけるポーランドに対する独ソ両国の侵攻作戦、特に独軍の作戦は、英仏軍を瞠目させるに足るものだった。

 第一次世界大戦の戦訓、特に機動戦の理解を自分達がしていなかったことを英仏軍は痛感した。

 その独軍の侵攻作戦に対してポーランド軍が善戦できたのは、皮肉なことに「還る所のない兵士達」、旧独帝国軍の将兵が伝えたノウハウが生きていたからだった。

 その象徴ともいえるレヴィンスキー将軍は、今、ポーランド軍の事実上の総司令官として、独軍の侵攻を迎え撃とうとしている。

 何とも皮肉なもの、と土方大佐は想った。

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