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第3章ー5

 スミス提督の下に入っている情報に従えば、ペトロパブロフスク=カムチャッキーの防御態勢は、次のようなものだった。


 まず、ソ連赤軍、1個歩兵(狙撃)連隊がその主力だった。

 それに詳細な口径が不詳で12門乃至16門を装備している1個野砲兵大隊、それに76ミリ高射砲4門を主な装備としている対空中隊、また、工兵中隊か工兵大隊もいると推測されていた。

 だが、これらは正規軍だ。

 ある意味では、容赦なく米軍が攻撃できる。

 問題は、民兵隊だった。


 ペトロパブロフスク=カムチャッキーの残されている市民の数は、10万人と推測されていた。

 一部の市民(女性や子どもの多く)は、第二次世界大戦勃発に伴い、陸の孤島と基本的には化してしまうペトロパブロフスク=カムチャッキーから既に脱出している模様だった。

(これは、当時のソ連政府が人道的だったから、という訳ではなく、少しでも補給の困難を減らすという軍事的合理性からなされたものだった。

 市民が多くいれば、食料等の補給もそれだけ多く必要になるからである。)


 そして、残されている市民の多くが、民兵隊に志願していた。

(実際には、そのほとんどが、市当局によって、志願を半強制されていたらしい。)

 その数は、2万人余りと推定され、真実のところは、民兵2人か3人に旧式の小銃1丁が渡され、1丁につき30発の銃弾しか配給されず、敵兵を倒して銃や弾を手に入れるという事になっていたらしい。


(なお、これらは、ペトロパブロフスク=カムチャッキー攻防戦が終結した後の米軍の公式発表でもある。

 この時のソ連政府の主張によると、市民の多くが祖国を護ろうと自発的に民兵隊に志願したのであり、市当局による志願の強制があったというのは、全くの事実無根である。

 また、小銃やその銃弾等も、民兵隊全員に行き渡る数量が確保されていたという。)


 こういう情報が入っている以上、米軍としては、ペトロパブロフスク=カムチャッキー市街に対する攻撃を行うに際しては、一般市民からなる民兵隊との戦いも覚悟せざるを得なかった。

 そうなってくると、下手をすると非武装の市民を誤って攻撃する可能性も考慮せねばならない。

 スミス提督以下の米海兵隊の将校達は、頭を痛めながら、ペトロパブロフスク=カムチャッキー市街への攻撃を行うことを決断せざるを得なかったのである。


 更に米軍の頭を痛める事態が起こった。

「日本空軍は、ペトロパブロフスク=カムチャッキー市街への攻撃に際して、重爆撃機部隊の投入を拒絶しただと」

 スミス提督は、本来なら無関係の通信士官を、思わず怒鳴り上げてしまった。

「はい。詳細はその電文に書いてある通りです」

 その通信士官は、首をすくめながら、恐る恐る持参してきた電文をスミス提督に差し出した。

 スミス提督は、その電文を半ばひったくって読み、渋い顔をした。


「日本空軍としては、重爆撃機部隊をペトロパブロフスク=カムチャッキー市街地への爆撃に投入することは、一般市民への犠牲を大量に出すことであり、反対せざるを得ない。戦闘機部隊は投入する」

 その電文の内容は、要約すれば、そういうことだった。


 確かに間違ったことは書いていない。

 市街地に対して、重爆撃機部隊が爆撃を加えては、一般市民の犠牲者が大量に出るリスクが高い。

 とは言え、実際にその市街地を守るソ連軍や、それを支援する民兵隊に対して攻撃する火力が不足するというのは、攻撃を加える米海兵隊にしてみれば、堪ったものではなかった。


「やむを得ない。実際に攻撃する際には米海軍に協力を仰ごう」

 スミス提督としたは、苦渋の決断をし、ペトロパブロフスク=カムチャッキーを何としても攻略しようと努力するしかなかった。

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