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第2章ー15

 そして、戦術空軍として日本空軍が採用した各種の爆撃機、例えば、99式襲撃機は前線での直協任務等で活躍し、その姉妹機として99式軍偵察機も活躍した。

 また、99式双発軽爆撃機、99式中型爆撃機も、航空撃滅戦や敵後方の補給部隊等への攻撃等の任務で活躍しており、国内外でそれなりに高い評価を受けている。

 こういった戦闘機や戦術爆撃機の質的優位があったからこそ、日本空軍は対ソ戦に際して陸軍の支援において効果的な役目を果たすことが出来たのである。

 だが、戦術空軍にある意味、特化していたことは、別の戦線で苦闘を強いられることにもなった。

 それは敵奥地を叩く戦略任務を主に行う戦線での戦いである。


 例えば、対ソ戦争で、シベリア鉄道を完全に運行不能にしてしまえば、極東ソ連軍は立ち枯れという事態を引き起こすし、ソ連極東部の住民生活に大打撃を与えることになり、ソ連極東経済を破壊することにもなるだろう。

 だが、日本空軍が国産開発した軍用機は、航続距離的に敵奥地を攻撃すること自体は何とかなっても、爆弾搭載量等の問題があり、そんなに大打撃を与えられる代物ではなかった。


 また、更に厄介な敵が待ち受けている戦線が、日本にはあった。

 それは中国戦線だった。

 江蘇省等を制圧し、中国本土、それも中国北部、中部の沿岸部のみを日米満韓は制圧しているような状況にあると言って良かった。

(細かいことを言えば、満州国は通称であり、満州国のトップである蒋介石は、自分は中国全土を領土とする中国正統政府首班であると主張していたが、現実的な問題から、蒋介石政府の最大の支持母体である日米両国政府でさえ、非公式には満州国政府と蒋介石の率いる政府を呼称していた。)


 では、この後、どうすべきなのか。

「中国人民5億人は、中華民族主義を守り抜くために戦い抜くだろう。我が国の唯一の講和条件は、日米が我が国に対する不当な侵略行為を認め、謝罪して賠償金を支払い、日米の傀儡たる満韓両国政府を完全に否認し、朝鮮半島まで我が国の正当な領土と認めることである。それが認められるまで、我が国の人民は喜んで戦い抜くだろう」

 共産中国政府は、そう公言していた。


 一方、米国のルーズベルト大統領は、次のように言っていた。

「共産中国政府が無条件降伏するのが、唯一の講和条件である」


 そして、共産中国政府を打倒する手段として日米満韓各国政府、軍によって選ばれたのが、日米満韓各国が確保していない中国全土における広範囲にわたる戦略爆撃という方策だった。

 とはいえ、この方策を命ぜられた際に主力となる日本空軍や米陸軍航空隊にしてみれば、言いたいことは分かるがどこを爆撃すればいいのか、という想いに駆られる方策であった。


 言うまでもなく共産中国政府の領内に枢要な工業地帯と言えるものは乏しい。

 独のように工業地帯に対して戦略爆撃を加え、それによって国内工業生産に大打撃を与えて、共産中国政府に無条件降伏止む無しの事態に至らせる等、極めて困難な話だった。

 また、鉄道網に大打撃を与えることで、国内輸送網に大打撃を与えるということも、この当時の中国本土ではそんなに鉄道網には国内輸送網が依存しきっている訳ではなく、中々に困難な話であった。

 更に、その主力の一翼を担う日本空軍が、戦略爆撃を行うに足りる重爆撃機を開発、保有していないという現実もある。


 山本五十六空軍本部長の回想によればだが。

「我が空軍が、戦略爆撃を行える重爆撃機部隊を保有していなかったことは微妙な足枷で、それが対中国戦線の被害を多くしたのは否定できない」

 ということになる。

 こういったことから中国戦線は泥沼化し、悪戦苦闘を強いられることになる。

 第2章の終わりです。

 次から、第3章に移り、主に満州を舞台とするソ連と共産中国対日米満韓の激突の話になります。


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