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第2章ー14

 つまり、どういうことだ?

 という疑問が沸き起こるだろう。


 結論を言えば、日本空軍には、第二次世界大戦勃発直前の1930年代末頃まで、戦略爆撃機を開発、保有するという発想がそもそも無かったといっても過言ではなかったのである。

 そのために、米国製のB-17をライセンス生産した99式重爆撃機や、第二次世界大戦終結後になるが同じく米国製のB-29をライセンス生産した五式重爆撃機が、日本空軍の保有する戦略爆撃機という事態が引き起こされるのである。

 日本空軍が、戦略爆撃機を国産開発して保有するというのは、第二次世界大戦終結のしばらく後、航空機のジェット化が進む時代になってからの話になってしまうのだ。


 日本の国内外の一部の軍事評論家から、日本空軍は旧弊な戦術空軍として発達してしまった。

 もっと早期に日本空軍が戦略空軍化して、戦略爆撃機を開発、保有していれば、第二次世界大戦はもっと早期に終結していた筈だ、という批判が為されることになるのだ。


 だが、これは後知恵にも程がある話だろう。

 そもそも1930年代以前に日本空軍が戦略爆撃機を開発、保有する必要があったのだろうか?

 そして、保有したとして有効に活用できただろうか?


 確かに第二次世界大戦勃発に伴い、欧州に海兵隊を中心とする軍隊を、日本は派遣している。

 その際に日本空軍が戦略爆撃機部隊を保有して、欧州に派遣していたら、独本土に効果的な爆撃を加えられたと考えられる。

 だが、第二次世界大戦勃発前に、そこまでの予測が多くの人にできただろうか。

 そして、1930年代の航空技術で、四発以上の重爆撃機、戦略爆撃機を量産して、攻撃を加えるに足る工業地帯がアジアにどれだけあったろうか?


 ソ連空軍がいざという際に備えて日本なり、(この世界の史実ではありえなかった虚妄だが)独なりと戦争になった際に備えて、戦略爆撃機部隊を整備するというのなら、まだ合理性がある。

 しかし、日本空軍にしてみれば、そんな戦略爆撃機を開発、量産して保有する位なら、まずは戦闘機や軽爆撃機の開発、量産を優先すべきだ、という発想になるのは、ある程度は仕方のない話ではないだろうか。

 更に言うなら、結果論とも言えるが、同盟国ともいえる米国からB-17,B-29といった戦略爆撃機をライセンス生産することが日本には出来ているのである。

 そういったことから後からなら何とでもいえる話の一つではないだろうか。


 ともかくこうしたことから、この当時の日本空軍は、日本本土防空や満州等の戦場での制空権、航空優勢確保には大活躍できたし、地上支援にも直接の地上部隊攻撃や後方の鉄道等の補給破壊と言った任務にも主に活躍できていた。

 ソ連空軍では、Iー15、I-16戦闘機がこの頃では主役で、その後継の主力戦闘機となるYak-1戦闘機は1940年1月に試作機が初飛行を果たしたばかり、LaGG-3戦闘機は1940年3月に試作機が初飛行、Mig-1も1940年4月に試作機が初飛行という現状だった。

(何れも量産化されて、最前線に投入されるのは1941年になってからの話になる。)


 そのため、日本空軍の99式戦闘機は、ソ連空軍の戦闘機より半歩進んだ状態で、この当時は戦えていたと言っても良い有様だった。

 熟練したソ連空軍の搭乗員の手にかかればIー15、I-16戦闘機は、日本空軍の96式戦闘機を上回る性能を発揮し、苦戦を強いさせたが、その一方で99式戦闘機とでは、その関係が完全に逆転した。

 スペインから帰国して、対ソ戦争に従事していた加藤建夫少佐(当時)は、

「この頃は99式戦闘機に乗っていれば、少々腕が悪くともソ連戦闘機に勝てた」

 と語っている程だ。

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