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第2章ー6

 首都ベルリンに対する日米共同によるこの時の爆撃行の戦果、損害についてだが。

 まず、米陸軍航空隊の損失だが、長距離飛行中の故障もあり、重爆撃機部隊約120機の内、最終的に喪失判定を受けたのは7機、更に飛行中に失われたのは5機だった。

 残り2機は基地にまでは還り着いたものの、修理不能、喪失判定を受け、廃棄処分を受けたのだ。

 なお、それ以外にも10機余りが被弾して、要修理の判定を受けている。

(敵戦闘機による被害なのか、敵高射砲による被害なのか、詳細は不明である。)


(更に書くなら、実際に敵戦闘機なり、対空射撃なりによって、幾ら失われたかの詳細も不明である。

 独空軍戦闘機部隊の報告によれば、少なくとも重爆撃機10機撃墜確実、未確認も含めれば20機以上が撃墜されたことになる。

 高射砲部隊の報告も大同小異で、重爆撃機だけで20機は対空射撃により撃ち落としたとなっている。)


 一方、戦闘機部隊の双方損失だが。

「独空軍の戦闘機部隊は、それなりの手練れが揃っていた。だが、我々が格闘戦に持ち込めれば、実力差が顕著に表れ、一撃離脱でも太刀打ちできた。実際、我々は8機の損失で済んだ」

 源田実少佐の報告書の一節。

「日本海軍航空隊の戦闘機部隊は、恐るべき手練れ揃いだった。一撃離脱に徹した筈だが、それでも我々の損失は避けられなかった。我々は15機の損失を出した」

 ガーランド少佐の報告書の一節。


 お互いの損失を見る限り、独空軍の戦闘機部隊は善戦したと言えるだろう。

 これは、高射砲部隊の協力や、電探による戦闘機の誘導がある程度は行われたことによるものだった。


 なお、米陸軍航空隊は、この時、約300トンの爆弾の雨をベルリンに降らせた、とこの時に自らがB-17重爆撃機の操縦桿を握っていたドーリットル少佐は米陸軍上層部に報告している。

 この数字を特に疑う資料等は無いので、この数字はほぼ間違いないと思われるが、この程度では独の首都ベルリンにそれなりの打撃は与えられたものの、実際に独の戦争遂行能力に目に見えるだけの物質的な打撃を与えられたのか、と反問されると、沈黙するしかなく、暗に反問を肯定するしかない、というのが実際のこの時の爆撃の戦果だったようだ。


 だが、その一方で、精神的な戦果は大なるものがあった。

 独の首都ベルリンに対して、日米連合の戦爆合同の大編隊による空襲が行われ、独空軍がそれを阻止しきることはできず、爆撃行が成功に終わった、という報道等は、英仏米日等の国民の多く、特にオランダ、ベルギー、仏の国民に対して、何れは独に勝てる、という抗戦意欲を高める結果をもたらすことに成功した。

 この戦果が無ければ、オランダ、ベルギー、仏の国民の抗戦意欲が低下してしまい、独軍の侵攻の前に単独講和にこれらの国の政府は応じたのではないか、という主張が実際に行われており、それを否定しきれないという現実がある。


 そして、再度のベルリン空襲を防ぐために、独空軍の戦闘機部隊の幾つかは、このベルリン空襲の直後に、対仏等の戦争が行われているいわゆる西部戦線から引き抜かれてしまい、首都ベルリンの防空に当たったのも事実なのだ。

 実際問題として、英仏米日等の航空隊の数の暴力の前に、質的には優位を未だに維持していたにも関わらず、量的劣勢から独空軍は既に苦戦を強いられており、首都ベルリン防空の為に、戦闘機部隊が西部戦線から引き抜かれたことは、そう大きな影響はないという主張があるのも事実なのだが。

 このベルリン空襲は、独の防空体制構築に大きな影響を与えた。


 最終的に、このベルリン空襲がこの世界大戦の航空戦の推移において、分水嶺になったのは間違いないようである。

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