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第2章ー3

「是非も無し」

 内心でそう思いながら、欧州に展開する日本海軍航空隊の戦闘機部隊の長として、ベルリン空襲に参加する米陸軍航空隊の重爆撃機部隊の長に、源田実少佐が面会に行ったところ、思わぬ人物が待ち構えていた。


「新聞記事で見た覚えがある顔だな。何の新聞記事だったか。軍服は来ていなかった筈だが」

 その人物の顔を見た瞬間に、源田少佐はそう考えたが、すぐには思い出せなかった。

 だが、その人物の自己紹介で、記憶とその人物が一致した。


「初めまして、ジミー・ドーリットルです」

 少佐の肩章を付けたその人物は自己紹介した。

 階級は同格とは言え、その人物は自分より8歳も年長で、順調に軍人の経歴を歩んでいれば、日本海軍なら大佐の階級を多分、帯びている筈だ。

 更に海軍兵学校の大先輩でもある山本五十六空軍中将閣下等でさえ、それなりの対応を心掛ける程の重要人物でもある。

 源田少佐は、思わず背筋を伸ばして敬礼してしまった。


 ドーリットル少佐は、答礼しながら。源田少佐に話しかけた。

「まさか、この欧州の地で日本海軍航空隊の戦闘機部隊に護衛していただくとは思いもよらぬ事でした。護衛をよろしくお願いします」

「いえ、こちらこそよろしくお願いいたします」

 源田少佐は、そう答えながら、頭を目まぐるしく回転させた。

 ロイヤルダッチシェル石油で働いていて、その会社で日本支社長だったか、極東特別部部長だったかを務めていて、黒竜江省油田開発にも当たった重要人物の筈だが、米陸軍航空隊の少佐として、現役復帰していたとは知らなかったな。


 源田少佐の内心を半ば読んだのか、ドーリットル少佐は、少し補足説明をした。

「この度の世界大戦勃発、更に米国の参戦に伴い、陸軍航空隊に現役復帰するようにと召集令状を私は受けました。私は計器飛行の専門家でもありますからね。実戦の場でその腕をさらに磨くように、と上層部は考えているみたいですな」

「正しい考えとは思いますが、ドーリットル少佐にしてみれば大変な話ですな」

 源田少佐は、思わずドーリットル少佐に同情して、そう言ってしまった。


 それを皮切りに、源田少佐とドーリットル少佐は、胸襟を開いてベルリン空襲の計画について詳細をお互いに詰めようとすることになった。

(日本駐在経験からドーリットル少佐が日本語をそれなりに操れたし、源田少佐も英海軍を模範とする日本海軍の航空隊所属であることから英語をそれなりに操れたこともある。)


「ベルリン空襲に際しては、高度8000メートル前後からの爆撃を行うつもりです」

 ドーリットル少佐は、そう言った。

「正しい判断だと思います」

 源田少佐も同意した。


 爆撃機の高度が高いほど、敵戦闘機の迎撃は困難になり、高射砲の脅威も軽減することができる。

 そういったことからすれば、ドーリットル少佐の考えは極めて妥当だった。


「日本海軍の戦闘機部隊は、どうされますか?」

 ドーリットル少佐の問いかけに、源田少佐は答えた。

「基本的に高度6000メートル前後を飛行し、間接護衛を行うつもりです」


 少し補足説明をする。

 この1940年当時、日本海軍の零式艦上戦闘機は、エンジンの過給機性能等の問題から、高度8000メートル前後を飛行して重爆撃機部隊を行うことについては不安があった。

 そのために、それよりも低い高度6000メートル前後を戦闘機部隊が飛ぶことにより、爆撃機部隊を間接護衛しようという発想が生じたのである。


 勿論、予め高度8000メートル前後に敵戦闘機部隊が大挙して待ち構えていては、この護衛計画は敗北必至の計画になってしまう。

 だが、独空軍はそこまで準備していないという楽観視から、源田少佐等はそう計画を立案したのである。

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