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第2章ー1 空の戦い

 第2章の始まりになります。

 欧州方面の地上戦は、1940年6月に一時的な頂点に達したが、空の戦いは地上戦とリンクする部分はともかくとして、それ以外の部分は半ば独立して起きていた。

 この点は、アジア方面についても同じで、1940年5月後半以降、英仏米日等と独ソ中は、様々な航空作戦を立案して実施している。


 欧州方面について、西から述べるならば、独空軍による主に仏本土の都市等を目標とする夜間空襲が、徐々に本格化していった。

 これは地上戦における迅速な仏打倒が困難になっていったことから、仏本土に対する恐怖爆撃、夜間空襲を独空軍が行うことによって、仏国民の継戦意欲を削ごう、という意図から計画されたものだった。


 実際、親ソや親独的傾向のある仏共産党や仏人民党の支持者たちは、独空軍の空襲に呼応して、対独ソ中との単独講和を叫ぶようになっていた。

「今なら名誉ある講和を、我が国は独ソ中と結ぶことができる。それによって、我が国は世界、欧州における大国としての地位を保つことができる

 彼らは、こう叫んだ。


 幸いなことに、ノルウェーが英仏米日等側に立っていたこと等もあり、独本土への反撃の空襲が英仏米の航空隊によって行われていたことや、戦況が全般的に英仏米日等側に有利に少しずつではあったが傾いていったために、彼らの声が世論の多数を占めて、仏政府が単独講和に傾くことまでには至らなかった。

 だが、彼らの声は決して小さいものとは言えるものではなく、パリ警視庁から弾圧されながらも、デモ隊を組んでパリ市街を練り歩くくらいの力を1940年の春から秋にかけて彼らは持ち続けることになる。


 この独空軍による仏本土への空襲は、どちらかといえば嫌がらせに近い空襲と言って良く、相対的なものだが、そんなに大きな物的被害が出たとは言い難い。

 だが、仏国民の国民に対して、心理的に与えた影響は大きかったと言えるだろう。


(これは、独空軍にしてみれば、西方戦役を行う独陸軍の直接支援に、より力を注がねばならなかったという事情もあり、仏本土への空襲は低調なものになった。

 更に言うなら、独空軍は戦略爆撃機を事実上保有していなかったことも足かせになった。

 悪く言えば、独空軍は戦術空軍として基本的に作られたために、仏本土への戦略爆撃で余り効果を挙げることができなかった、といえるだろう。)


 その一方、独空軍の行ったオランダ、ベルギーへの空襲は、仏本土への空襲と比較した場合、かなり大きな影響があった。

 オランダ、ベルギーの場合、国土の大部分が独陸軍の制圧下に置かれ、更に残りの国土も独空軍の空襲も受けるという事態になったからである。

 ロッテルダムやブリュッセル等は、独陸軍の制圧下に置かれるという事態は免れたが、独空軍の爆撃の脅威に頻繁にさらされる事態に陥った。


 実際、オランダ政府やベルギー政府は、英仏米日等の直接支援にも関わらず、極秘の政府首脳会議において、いわゆる「名誉ある単独講和論」がかなりの力を一時は持ったらしい。

 それだけ深刻な被害が国民の間で出る事態が、オランダやベルギーでは引き起こされていたのである。

 こちらも、英仏米日等から航空隊が応援に駆けつけたり、オランダ、ベルギーも自国の航空隊の拡張に大童で取り組むことで、何とか「名誉ある単独講和論」がオランダ、ベルギー両国政府の首脳、幹部の間で正式に取り上げられる事態は免れたが、かなり危うい事態がもたらされたのは事実だった。


 このように、この1940年の春から秋に掛けて、仏本土やオランダ、ベルギーに対して行われた独空軍の空襲は、決して大規模なものとまでは言い難いものだったかもしれないが、軽視できない影響を各国に対して与えていた。

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