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第1章ー23

「この後は、どうなるのかな」

 ガムラン将軍は半ば独り言を呟いた。

「サン・ヴィットの救援を、日本海兵隊等が果たすかどうかが、一つの鍵でしょう」

 アラン・ダヴー大尉は、ガムラン将軍に話しかけた。

「サン・ヴィットの攻防戦が終わった時が、この独軍の攻勢の始まりの終わりとなるでしょう」


「ふん」

 ガムラン将軍は、ダヴー大尉の返答を聞くと鼻を鳴らした。

「確かにそうだな。その後は、わしは知る必要は無さそうだ。多分、辞職することになるだろう」

 その返答を聞いたダヴー大尉は、内心で思った。

「確かに、それが賢明な判断でしょうな。日米、ポーランドからの警告を無視し、このような事態を招来したのですから」


 ダヴー大尉の想いと関わりなく、前線の戦況は動いていた。

 独軍の目論見としては、今やサン・ヴィットを攻め落とし、アルデンヌ地方からリエージュ方面への補給路を確立して、第二次攻勢の準備を整えるのが最優先目標となっていた。

 一方の英仏米日等の側の軍の目論見としては、サン・ヴィット救援を果たし、アルデンヌ地方からリエージュ方面への補給路を完全に切断し、リエージュ方面に展開している独軍の包囲殲滅態勢を整えるのが目標となっていた。


 そのような双方の目論見がぶつかり合ったことから、サン・ヴィット救援を目指す日本海兵隊6個師団の前に独装甲師団6個が展開して迎え撃つという事態が引き起こされることとなったのである。

 この方面の独軍の現地最高司令官とも言えたルントシュテット将軍にしてみれば、本来からすれば、独装甲師団は独軍の攻勢に際して、槍の穂先となるべき存在で防御に使うのは間違っていた。

 しかし、日本海兵隊6個師団を迎え撃つのに、独歩兵師団で対処するというのは、現場の士気に与える影響が大きいことを覚悟せねばならなかった。


 最早、独軍が88ミリ高射砲に頼らずに、零式戦車に対抗する手段はほぼ一つしかなかった。

 歩兵が対戦車爆雷を大量に抱いて体当たりを行うことである。

 零式戦車に対しては、対戦車ライフルはほぼ無効であり、37ミリ対戦車砲は味方の兵からも、「ドアノッカー」と揶揄される現状である。

 火炎瓶で、零式戦車を破壊できないか、とやってみたが、エンジン部を金網で覆う等の火炎瓶対策を零式戦車は予め施されており、余り効果が挙がらないことが判明していた。

(これはある意味では当然で、スペイン内戦で日本海兵隊は、火炎瓶によりスペイン共和派の戦車に対処していたのである。

 自らの戦車が火炎瓶で攻撃された場合について対処方法を講じておくのは当然だった。)

 自分の武器では、まともに対処できないとあっては、兵の恐怖心は倍加する。

 そういった状況下で、独歩兵師団の集団で、日本海兵師団を迎え撃つのは困難だった。


 更に独軍にとって航空優勢が失われつつある現在、独装甲師団が存分に活躍できるのは、この時しかないというルントシュテット将軍の判断もあった。

 第一次世界大戦以来の数々の戦訓は、航空優勢の無い状況においては、戦車部隊の威力は半減以下になるということを、敵味方双方に熟知させていた。

 更に言うなら、最初にロンメル将軍が率いて日本海兵師団と戦った独第7装甲師団には、3号戦車は配備されておらず、4号戦車が24両であり、2号戦車が68両、主力となっていたのは38t戦車91両という現実があった(なお、他に1号戦車が34両、主砲等の代わりに大型無線機を搭載した3号指揮戦車が8両配備されていた。)。

 こういったことから、今後の主力となる独3号戦車や4号戦車の集団と零式戦車とを激突させ、日本戦車と雌雄を決しようという判断も、ルントシュテット将軍の内心ではあったのである。

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