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第1章ー22

 少し場面が変わり、1940年6月20日時点での独仏戦の戦況説明になります。

 実際、皮肉ともいえる話だが、この頃のルントシュテット将軍と仏陸軍総司令官たるガムラン将軍との意見は、ほぼ一致していた。


「オランダに対する独軍の攻勢ですが、オランダ軍による洪水線を活用した抵抗により、攻勢阻止に成功しています。ロッテルダム等に対する空爆を行うことにより、独からオランダに対する降伏勧告が行われていますが、その空爆も、我が英仏米日の航空隊により、かなり阻止できており、オランダ政府は降伏勧告を敢然と拒絶している状況です」

 1940年6月20日朝、あらためてアラン・ダヴー大尉は、仏軍総司令官であるガムラン将軍に対して、最新の戦況を報告していた。

「うん」

 ガムラン将軍は、黙って肯いた。


「オランダ南部からベルギーを通り、フランスを目指す独軍の攻勢ですが、アルデンヌ地方からの側面攻撃により後退を余儀なくされています。とは言え、秩序だった後退であり、前線の士気も高い状況です。反攻は充分に可能と思料されます」

「しかし、リエージュ、ナミュールまで独軍の攻撃により失陥するとはな。独軍の矛先は、我々の防衛線をえぐり抜いたか。新聞等は、我々を叩くだろうな」

 ガムラン将軍は、この件に関しては意気消沈しているようで、そう半ば後悔の独り言を呟いた。

 日米、ポーランド軍の将帥から事前警告を散々されていたのに、ガムラン将軍は完全に無視してしまっていたのだ。

 ダヴー大尉と言えど、この件に関しては、ガムラン将軍を弁護する気になれなかった。


「アルデンヌ地方の戦況は、日本海兵隊を投入したことにより、好転しています。詳しくは後述しますが、独C軍集団は攻撃を行っているといっても、威力偵察レベルの攻勢しか行っていません。この状況に鑑み、独仏国境に展開していた部隊の一部も、アルデンヌ地方に向かいました。アルデンヌ地方の独軍は、日本海兵隊を主力とする南方からの反攻への対処に苦慮する筈です。また、サン・ヴィットを我が軍が死守しているために、アルデンヌ地方からベルギー南部を目指している独A軍集団の攻勢は息切れしている模様です」

 ダヴー大尉は、そのように報告しながら、内心では日本海兵隊の奮戦を誇らしく思った。

 独軍の戦車を、日本海兵隊の戦車は圧倒しているらしい。

 速やかに日本海兵隊の戦車を我が軍も導入したいものだ。

 これには、ガムラン将軍は黙って肯くのみだった。


 ダヴー大尉の推測だが、ガムラン将軍とすれば、日本海兵隊等に助けてもらったことを素直に感謝すべきなのだろうが、日米、ポーランド軍の事前警告を無視したことから、このような結果になっている。

 仏政府内では、この失敗からガムラン将軍を仏陸軍総司令官から更迭しようとする動きさえあるらしい。

 ガムラン将軍の意気消沈ぶりからすると、自発的に辞任するのではないか、と自分には思える。


「独仏が直接に国境を接しているアルデンヌ地方以南からスイス国境に掛けてですが、そこに展開している独C軍集団は、攻撃を行うにしても威力偵察レベル程度に止まっています。ここから再攻勢を行うかもしれないぞ、と独軍は虚勢を張っているだけのようですね」

「何故、そう判断するのだ」

 ガムラン将軍が自分に質問してきたので、ダヴー大尉は、(内心だけで)肩をすくめながら答えた。


「ベルギーに侵攻した独軍は、アルデンヌ地方からの補給に苦しみ、オランダ南部からベルギー方面への補給路に依存しています。このような状況で、独仏国境でも大攻勢を展開しては、ベルギー方面の独軍の補給は苦しくなる一方です。ベルギー方面の攻勢の足を引っ張るようなことを、独軍はしないでしょう」

 ダヴー大尉は明確に答え、ガムラン将軍は得心したのか肯いた。

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