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第1章ー20

 ちなみに、レヴィンスキー将軍や石原中将に、そう言われているとも知らず、パットン将軍は、二人のほぼ想像通りの言動をしていた。

「全くモーロン・ラベとか、言い返すなんて、高尚すぎる。独軍に対しては、ナッツで充分だ」

 そう呟いた後、米第1軍の指揮下にある米陸軍航空隊に対して、改めて命じた。

「米陸軍航空隊は、総力を挙げて、サン・ヴィットを固守している仏軍を支援しろ。ここがあいつらの要になっている。サン・ヴィットが落ちない限り、独軍はアルデンヌ方面からの補給に苦しむ」


 実際、その通りの現状が起きつつあった。

 更に、バストーニュからサン・ヴィットへ急行する日本海兵隊は、アルデンヌ方面から進撃を図っていた独軍の後方補給路を切断しつつあった。

 日本海兵隊は完全自動車化を果たしており、機動力では独軍歩兵師団を上回っている。

「側面なんて気にするな。父が、天津から北京に向かった時のように、サン・ヴィットへ急行する」

 石原莞爾中将の補佐を受けて、北白川宮大将は、そのように指揮下にある海兵隊に命じていた。


「時代は変わるが、変わらないものもあるか」

 土方勇少尉は、北白川宮大将の命令の一文を聞いた時に、そう独り言を呟いてしまった。

 北白川宮大将の父、北白川宮能久親王元帥(死後に追贈)は、義和団事件の際に現地に派遣された日本軍の総指揮を執った。

 あの時のように、日本海兵隊は全力でサン・ヴィットを目指そうとしている。

 祖父の土方勇志は、その時に徒歩で北京へと向かった。

 それから40年程が経ち、その孫の自分は、あの頃には無かった戦車に乗って、サン・ヴィットへ向かっている。

「岸中尉も同じことを想っているだろうな。あいつと祖父も同様なのだから」


 実際、岸総司中尉も似たような想いに駆られていた。

「サン・ヴィットが北京か。確かにそう見立てられないこともないな」

 そう自身が呟き、祖父の昔の功名話の一節を思い返していた。

 義兄と違い、実父を胎児の頃に失った岸中尉は、養父ともなった祖父の膝下で育った。

 祖父はしばしば、現役だった頃の思い出話をしたが、その際に斎藤一提督の部下として戦った際の話もあり、岸中尉が眼前に思い浮かべられるように詳細に語った。

 北京の柴中佐の下に、斎藤提督の手によって届けられた新選組の誠の旗、それが届いた時が、事実上、北京の籠城民が助かった時だった。

 岸中尉の祖父岸三郎提督や、土方勇志伯爵は、その目撃者でもある。

「柴五郎閣下のように、レヴィンスキー将軍を救出しないとな」

 岸中尉は、改めてそう決意し、眼前の独軍への攻撃を始めた。


「厄介や」

 お国訛りを半ば無意識の内に出しつつ、ロンメル将軍は、日本海兵隊の猛攻をしのごうとしていた。

 本来なら華麗な機動防御を展開したいところである。

 しかし、アルデンヌの地形は、そのような機動防御にあまり向いていない。

 ほぼ道路沿いに進撃、退却するしかないのがアルデンヌの地形なのだ。

 そして。


「あの怪物戦車が、先頭に立って進撃してきます」

 味方の対戦車砲が、ほぼ役に立たない零式戦車が日本海兵隊の先陣を切っている。

 空爆で敵戦車を破壊するのが相当だが、実際問題として、アルデンヌというか西方戦役全体でも航空優勢がどちらの側にあるか、というと。

「後方の補給部隊が空爆されました」

「味方の支援はどうなっている」

「敵戦闘機部隊との交戦に巻き込まれたとのこと」

 独空軍は劣勢で、英仏米日側が航空優勢を徐々に確立しつつある。

 実際、サン・ヴィットには、米陸軍航空隊による空輸により、仏軍はレヴィンスキー将軍直卒の下、補給を維持して抗戦を続けている。

「味方の装甲師団を向けてもらうしかないな」

 ロンメル将軍はそう考えた。

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