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第1章ー17

 6月18日一杯を、日本海兵隊は後続部隊の到着と反攻準備に費やすことになった。

 一方、独軍は第16軍を中心にして、日本海兵隊を中核とする連合軍の反攻準備に備えることになった。

 6月18日深夜までに、バストーニュ近郊に全ての日本海兵隊部隊は集結を完了した。

 また、北白川宮大将自らが、遣欧総軍の司令部をバストーニュにまで移動させていた。


「それでは攻勢に転じるか」

「はっ」

 6月19日早朝、北白川宮大将の事実上の問いかけに、参謀長の石原莞爾中将が答えたのが、日本海兵隊の反攻開始の事実上の合図となった。


「畜生が、こんな状況でサムライを阻止できるか。20年以上前の屈辱を、また味わうのか」

 ロンメル将軍は怒りに震えながら、日本海兵隊の反攻を迎え撃った。

 味方の主力の対戦車砲の口径は37ミリだ。

 早速、味方からは「ドアノッカー」と呼ばれ出した。

 零式戦車相手に零距離から撃っても、正面からでは37ミリ対戦車砲弾は跳ね返されるのだ。

 一方、零式戦車は容赦なく榴弾を撃ってくる。

 相撃ちにもならずに、対戦車砲を扱う兵が殺傷されてしまう。


「零式戦車には88ミリ高射砲を使うしかない」

 ロンメル将軍は、さすがに有能な将帥だけあって、すぐにそこは見抜いたが、問題は88ミリ高射砲が機動力にさっぱり欠けていることだった。

 スペイン内戦で、88ミリ高射砲が対戦車砲に転用可能なことを知っていた日本海兵隊は、真っ当と言えば真っ当な対抗策を編み出していた。


「ハッチャンは、どこにいるのかいなあ」

「節をつけて歌うように言うのは止めて下さい。ここは戦場です」

 江草隆繁大尉の言葉に、部下の一人がツッコミを入れ、江草大尉は苦笑いをした。

 その笑い声が、無線を通じて、部下達にも聞こえ、部下達の多くも笑ってしまった。

 笑いを収めた江草大尉は、部下達に言い聞かせた。

「そう言われても仕方ないが、敵の高射砲陣地を潰さないとな。味方を助けるためにも」

「「その通りですな」」

 部下達も口々に答えた。


 江草大尉の率いる「彗星」艦爆隊は、独軍の高射砲陣地に対する爆撃任務に当たっていた。

 88ミリ高射砲の命中率は、決して高くないのだ。

 何千発に1発と言われても仕方ない程度しか命中しない。

 だが。


 高射砲陣地が控えていると分かっていながら、爆撃任務を行う爆撃機部隊は少ない。

 やはり自分達への脅威は、基本的に避けたいものだからだ。

(特に88ミリ高射砲は、練度の高い兵による操作ならば、1分間に20発の射撃が可能だったという。)

 そのために88ミリ高射砲陣地への爆撃は、基本的に避けられるのだが、事情が事情だった。


 味方の日本海兵隊が、サン・ヴィット救援に急行するためには、その途上にある88ミリ高射砲陣地はできる限り潰しておく必要があった。

 そうしないと、日本海兵隊の進軍が阻止されてしまうからだ。

 そのために、江草大尉率いる「彗星」艦爆隊は、88ミリ高射砲陣地破壊任務に当たっていた。


「見つけました。敵高射砲陣地です」

「良く見つけた」

 部下からの報告に、江草大尉は笑みを浮かべながら言った。


「敵高射砲の射撃を避けるため、各自の判断で爆撃せよ」

 無線で江草大尉は、そのように命じて、自らも急降下を開始した。

 敵高射砲陣地を制圧するために、1機毎に60キロ爆弾4発を自分達は搭載している。

 更に念のために、海兵隊に対して、敵高射砲陣地の場所を知らせておく。

 自分達が潰せなかった高射砲は、海兵隊の榴弾砲が片付けるだろう。


「よし、命中した」

 敵高射砲の破壊は出来なかったようだが、砲を操作する兵に被害を与えたのは間違いない。

 部下達も当てているようだ。

 こうして、進軍の途上にある高射砲陣地を日本軍は潰していた。

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