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第1章ー15

 6月17日の初日の交戦で、独第7装甲師団の戦車は思わぬ損害を被っていた。

 何しろ、明確な敵(日本)戦車の破壊報告は0、一方、味方の戦車は全て合わせれば40両以上が再生不可能な損害を被るという大敗だったのだ。

 どうやれば、敵戦車を破壊できるのか、独第7装甲師団司令部の面々は頭を痛めつつ会議を行った。


「夜襲はどうでしょう?戦車部隊は夜に弱いはずです」

 ある大尉参謀が提案した。

「普通なら、そうやがな」

 ロンメル将軍は、お国訛りを出した言葉を発しつつ、想いを巡らせた。

 相手が悪い気がする。

 相手は、サムライ、日本海兵隊だ。


 前回の世界大戦後、暇な際に日本の戦史を調べた。

 そうしたら、出るわ出るわ、日本の戦史においては夜襲は常識の世界だった。

 その末裔たるサムライが、夜襲に備えていない訳がない、いや得意中の得意だろう。


 とは言え、他に方法があるか、と言えば、正直に言ってない。

「それしかないだろう。6月18日午前2時を期し、戦車等による夜襲を掛ける」

 ロンメル将軍は決断を下した。


「気を緩めるな。歩哨に立っている間は、目を皿のようにして見張っておれ」

 岸総司中尉は、そのように歩哨に対して命令を下し、交代で休養、睡眠を部下に取らせていた。

 岸中尉自身も想いを巡らせていた。

 自分なら、今夜の内に夜襲を掛ける。

 師団規模の夜襲等、独軍なら朝飯前の芸当だろう。


 岸中尉以外の第1海兵師団の士官の多くがそう考えていた。

 前回の世界大戦時に好敵手だった独軍は、それだけ恐るべき相手という意識が日本海兵隊にはあった。

 そのために過剰ともいえる警戒態勢を、第1海兵師団は取っていた。


 更に言うなら、一両日中には日本海兵隊6個師団が、バストーニュ及びその近郊に集結する予定になっていたのだ。

 そうなれば、今、レヴィンスキー将軍が仏軍3個師団余りを率いて、独軍に厳重に攻囲されており苦戦中であるサン・ヴィット方面に、日本海兵隊は総力を挙げて進撃し、アルデンヌ方面から進撃している独軍の後方遮断任務に努める予定になっていた。


 そして、サン・ヴィットが日本海兵隊によって解囲されれば、独軍はあらためてオランダ、ベルギー方面からの侵攻を主力として、フランスへの侵攻を目指すしかなくなる。

 そうなれば、英仏軍主力と独軍主力は正面から殴り合うという状況になる。

 正面からの殴り合いという状況に持ち込めれば、英仏軍の火力の優位が活かせるようになる。


 ある意味で、欧州に展開している日米軍、及びポーランド軍の首脳の考えは共通していた。

 独軍の優位は、我々に対して戦略から戦術レベルに至るまで機動力が優位していることにある。

 そして、それを存分に生かされては、こちらは必敗だ。

 独軍の機動力を殺し、我々の主力、英仏軍の火力の優位が活かせる状況に持ち込むのだ。


 幸いなことに、我々が活用できる日本海兵隊の機動力は十二分に独軍と渡り合える。

 これを生かして、独軍が正面攻撃という機動力を殺した攻撃をせざるを得ない状況に持ち込もう。

 だが、日本海兵隊は6個師団しかいない。

 それならば、兵力不足を強みに変えるまでだ。

 レヴィンスキー将軍、石原莞爾中将、パットン将軍らはそこまで考えを突き詰めた。


 サン・ヴィットはアルデンヌ方面から北西に向かうなら基本的に通らねばならない要衝である。

 ここが仏軍の手にあっては、アルデンヌ方面から北西への独軍の攻勢は堰き止められてしまう。

 独軍の主攻勢が向かう方向を把握したレヴィンスキー将軍は、自らサン・ヴィットに赴いてこの地を死守しようと試みていた。

 そして、日米は日本海兵隊を主力としてサン・ヴィットを解囲し、独軍の攻勢を阻止する行動を展開しようとしていたのである。

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