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プロローグー2

 このような状況に鑑み、他の面々も少し明るい側面を見るようになっていた。

「これが、日本海兵隊の海兵部隊による最新式対戦車戦術ですか。素晴らしい」

 アラン・ダヴー大尉は、率直に感嘆していた。

「スペイン内戦の実戦経験者から、そう言っていただけるとは。進歩しているようで、ホッとしました」

 偶々だが、その際に傍にいた岸総司中尉は、少し謙遜して見せたが、内心では誇りを持った。


 この日、日本海兵隊の海兵部隊(他の陸軍なら歩兵部隊)の対戦車戦術訓練が、英仏米の士官にお披露目されていた。

 ダヴー大尉は、その視察を行う一員に、仏陸軍総司令部から選ばれており、直に視察していた。

 そして、岸中尉は対戦車戦術を実演する一員として訓練に参加していた、という訳だった。


 ダヴー大尉は、スペイン内戦時に、日本人義勇兵部隊(実際には、ほぼ日本海兵隊の偽装だった)の一員として、スペインの戦野で戦ったことがある。

 その際に、ダヴー大尉は、海兵隊直伝といえる擲弾筒と火炎瓶を駆使した対戦車戦術を、スペイン共和派軍に対して実際に行った身だった。

だが、今の日本海兵隊の対戦車戦術は、更に進歩していた。


 軽機関銃班と擲弾筒班が連携し、敵の歩兵と戦車の連携を分断した上で、敵戦車に携帯式対戦車噴進弾を浴びせることで、敵戦車を破壊するのだ。

 お披露目を前提とする訓練という事で、ある程度は割り引かねばならないが、それでも対戦車ライフルや対戦車手榴弾が歩兵の対戦車兵器の第一線である英米仏の陸軍士官からすれば、羨ましいとしか言いようがない対戦車戦術としか言いようが無かった。


「携帯式対戦車噴進弾とは、便利な代物ですな。非力な兵でも、容易に扱える」

 視察を行っている米陸軍士官が感嘆していた。

「我が国でも速やかに導入したい」

 また、別の英陸軍士官も呟いていた。


 その科白を聞いたダヴー大尉は、あらためて認識した。

 この携帯式対戦車噴進弾、対戦車ロケット砲は、我が仏軍も速やかに導入するのが相当だ。


 勿論、戦車が活躍するには制空権なり、航空優勢の確保が必要というのは間違いない。

 だが、いざという時に、歩兵でも戦車にある程度は対抗できるというのは、現場の歩兵の士気を確保等するためにも必須の話だ。

 それにこの対戦車ロケット砲なら、小隊長レベルの判断で使えるというのも重要な点だ。


 この当時、対戦車砲は、どうのこうの言っても、装備の良い部隊であっても1個歩兵大隊に1個対戦車砲小隊が付属する程度である。

 だから、小隊長の判断で対戦車砲を運用することはできない。

(更に基本的に牽引式であり、機動力に欠けるというのも問題だった。)

 だが、対戦車ロケット砲なら、歩兵小隊レベルで配備されている。

 つまり、小隊長の判断で運用できるのだ。


 今でも、対戦車ライフルや対戦車手榴弾等が、我がフランス軍において、歩兵の対戦車兵器として装備されていない訳ではない。

 だが、昨今の急激な戦車の進歩の前に非力化しつつあるのは否定できない話だった。

 実際、零式戦車を実見した自分も含めた仏陸軍の士官の面々は、どうやってこの戦車を破壊すればいいのか、苦慮する有様だったのだ。


「砲戦車による待伏せ射撃で、側面又は後面を狙うのが、一番確実な手段。75ミリ級以上の野砲、高射砲の活用も行うべき。又は歩兵に対戦車手榴弾数発を抱かせて体当たりさせるか」

 ダヴー大尉は、火炎瓶対策まである程度は考慮している零式戦車相手への対抗策を、上記のように自らは判断し、この訓練の見学に参加している仏陸軍の他の士官に対して、自らの判断を評価してもらったが、他の士官の意見も大同小異だった。

 父には本当に敵わないな、とダヴー大尉は内心で嘆いた。

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