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第1章ー13

 さすがに日本海兵隊の先頭部隊が、バストーニュに到着したことは、独空軍の航空偵察により、速やかに把握されることになった。

 更に後続の日本海兵隊の部隊も駆けつけようとしている。

 多くの独陸軍の軍人が、このことを南方からの脅威と感じた。

 特に一部の軍人は、過剰に反応することになった。


「何やと、バストーニュに日本海兵師団が到着しつつあるやと」

 第7装甲師団長を務めていたロンメル将軍は、その一報を受けた瞬間に驚愕した。

「日本海兵隊、サムライが前線に来たのか」

 ロンメル将軍は、深刻な表情を浮かべながら、独り言を呟いた。


 第一次世界大戦時のカポレット=チロルの戦いにおいて、ロンメル将軍(当時の階級は中尉)は、独山岳部隊の一員として、日本海兵隊と戦っているが、その時の戦いは、ロンメル将軍にとって悪夢だった。

「アルプスの麓、文字通りの独山岳部隊の庭で、日本海兵隊の前に独山岳部隊が敗走する羽目になるとは」

 ロンメル中尉(当時)は、そうボヤキながらトレントまで退却止む無しという敗北を喫したのだ。


 あの時の屈辱は、何としても晴らさずにはおかない。

 改めて、ロンメル将軍は決意した。

「第4軍司令部、いやA軍集団司令部に意見具申だ」

 通信担当士官に、ロンメル将軍は指示を下した。

「バストーニュ方面からの日本海兵隊の反攻に対処するための任務を、第7装甲師団にも与えられたい」


 ロンメル将軍からの意見具申を受けたA軍集団司令官のルントシュテット将軍は考え込んだ。

 日本海兵隊が、単なる海兵師団なら歩兵師団に任せておけば充分だろう。

 しかし、日本海兵隊なのだ。


 彼らは第一次世界大戦当時、独皇太子から

「独近衛師団よりも、日本海兵師団を指揮下に置きたい」

 という(通称)逆感状を与えられるという栄誉に浴した。

 また、海兵隊なのに、先の世界大戦時に既に戦車師団を編制したくらいで、戦車等の扱いもうまく、機動戦にも長けている。

 更に日本海兵隊の装備している戦車の量はともかく、質も端倪すべからざるものがある。


「槍の穂先を自ら折る事態を招くかもしれないが、やはり装甲師団をバストーニュ方面に全く向けないという訳にはいかないだろう」

 ルントシュテット将軍は、最終的にそう考え、ロンメル将軍の意見具申を受け入れた。

 ロンメル将軍率いる第7装甲師団は、この時点でミューズ河を渡河できそうな地点まで進撃していたが、バストーニュ方面に急きょ転進することになった。


 6月18日、第1海兵師団長を務める小松宮輝久王少将は、遣欧総軍からの連絡を受けて、独の装甲師団がバストーニュ方面からの反攻に備えるため、転進しつつあるという情報を掴んだ。

 第1海兵師団麾下の諸部隊は、バストーニュからサン・ヴィット方面を目指すための準備を整えようとしていたが、この事態に鑑み、小松宮少将は、第1海兵師団を集結させ、バストーニュ近郊で第7装甲師団を迎撃することにした。


「独装甲師団が向かいつつあるだと」

 土方少尉は、その情報を聞いた時に驚いた。

 上官である岡村徳長中佐は、指揮下にある戦車大隊に次のように命じていた。

「指揮下にある戦車大隊は、各中隊毎に分割、各海兵連隊の指揮下に入り、対戦車戦闘に従事せよ」

 土方少尉は、岡村中佐の命令に従って、対戦車戦闘の準備を整えた。


 岡村中佐にしても、本音では戦車大隊を一つにまとめ、独装甲師団の戦車部隊と雌雄を決したかった。

 だが、独装甲師団は200両以上の戦車を保有している。

(装甲師団毎に微妙な差があり、第7装甲師団の戦車定数は225両だった。)

 日本海兵師団が保有するのは1個戦車大隊、定数54両に過ぎず、海兵連隊と共闘するしかないというのが現実だったのである。

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