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第1章ー12

 勿論、独空軍も独陸軍の支援を、西方戦役において行っていなかった訳ではない。

 ポーランド戦役時と同様に、積極的な地上支援を独空軍は行っている。

 だが、


「戦いは数だな」

 西方戦役が始まった後、独空軍のヴィルケ中尉は、そう呟きながら、Bf109Eを操って、連日のように英仏米日の戦闘機の集団と戦う羽目になっていた。

 上官のメルダース大尉も、同様の言葉を呟いているのではないだろうか。


 Bf109Eが悪い戦闘機という訳では決してない。

 しかし、英空軍のハリケーンやスピットファイア、米陸軍航空隊が採用しているP-35,P-36,P-39(その一部は、仏空軍も採用している。)、仏空軍のMS-406,更には、日本海軍航空隊の零式艦上戦闘機等の群れと、基本的に半数以下の数で戦うことを強いられては。


「相撃ちならこちらの負け、常に3倍以上の損害を与えろ」

 しかも、ゲーリング空軍総司令官は、そのような命令まで出ている。

 実際問題として、独の国力から言えば、その命令は正しいが、できるかというと。

「無茶を言うな。そんなことはできるか」

 というのが、決して口には出せないが、ヴィルケ中尉の本音だった。


 今日も今日とて、少なくとも同数兵力は引きつけているようだが、対処しきれない敵戦闘機が、味方の爆撃機部隊に襲い掛かっている。

「何とかしてくれ」

 と飛行場に帰還後に、苦情の嵐を受けることになるだろうが、こちらとて余裕はないのだ。


 そう言う状況から、連日のように、爆撃機部隊は多数の損害を覚悟しつつの出撃を強いられている。

 特に深刻なのは、Ju87爆撃機部隊だった。

「3回、サイレンを鳴らして生き残れたら、そいつは悪魔に魂を売った奴に違いない。そうでなかったら、生き残れるものか」

 そういう言葉さえ、Ju87爆撃機の搭乗員の間から流れる有様らしかった。


(補足、本格的な西方戦役が始まるまで、当時のJu87爆撃機の一部は、敵軍に対する威嚇効果を考え、サイレンを付けていた。

 だが、隠密性を失うことや西方戦役で大量の損害を出したことから、急速にJu87爆撃機のサイレンは廃れてしまった。

 上記の言葉は、そのような背景から、Ju87爆撃機の搭乗員の間で生まれたものである。)


 一方、そのような航空戦の状況から、総予備となっていた日本海兵隊の前線への移動は、独空軍の妨害をそんなに受けず、速やかに行われることになった。

 アルデンヌ地方の戦線が危機的な状況に陥りかねない状況にあることを、レヴィンスキー将軍からの報告等により英仏軍司令部もようやく納得し、6月11日朝、日本海兵隊6個師団をアルデンヌ地方に投入することを了解したからである。

 日本海兵隊は、未だに仏軍の手に保持されていたバストーニュを拠点として、独軍への反撃を試みることになった。


(バストーニュは、この時の独軍にしてみれば、南方への進撃には重要だが、北方への進撃には余り重要ではないとみなされていた為、独軍の歩兵師団群の一部による攻撃が向けられたに止まっていた。

 そのため、西方戦役が始まった7日後の6月16日になっても、バストーニュは仏軍の手によって保持されたままとなるのである。)


 パリ近郊に置かれた日本海兵隊の駐屯地からバストーニュまでの道のりは、ランス等を経由して約350キロといったところだった。

 事前計画が十分に練られていたこともあり、鉄道輸送等を駆使した日本海兵隊6個師団の先頭部隊は、6月16日の朝にはバストーニュにたどり着いて、独軍との交戦が可能になりつつあった。

 その先頭部隊の中には零式戦車に乗った土方勇少尉の姿もあった。

 土方少尉は、独軍戦車との交戦を前にして武者震いが収まらなかった。

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