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第1章ー11

 1940年6月10日、独軍の西方攻勢、仏本土侵攻作戦は発動された。

 独軍の侵入を受けたオランダ、ベルギーは直ちに英仏等の味方として参戦した。

(既にベルギーは、事実上の英仏等の側に立っているといって良かったが、参戦してはいなかった。)


 独軍のB軍集団の攻勢は、英仏にしてみれば、予期したとおりであると言えたが、A軍集団の攻勢は、英仏のみならず日米、ポーランド軍にしてみても、やや予想外の展開だった。


「A軍集団の攻勢は予期していたが、北方を目指そうとしているようなのは予想外だったな」

 独軍の攻勢の現状が徐々に把握されるにつれ、アルデンヌ方面軍司令官を務めるレヴィンスキー将軍は呟く羽目になった。

 レヴィンスキー将軍としては、独軍は西方をひたすら目指すと予測していたのだ。

「仕方ない。戦争は相手があるものだ」

 レヴィンスキー将軍は、指揮下にある部隊、仏第9軍等に対して北方への遅滞戦闘を指示し、仏第9軍等もその指示に応えた戦闘を図ろうとしていた。


 仏第9軍等が、そのような戦闘を行えたのには、幾つかの訳があった。

 まず第一に、レヴィンスキー将軍から予め遅滞戦闘に徹するようにという指示があったことである。

 そのために後退、いや退却戦闘になっても、仏軍の将兵達は事前の指示通りに動いているだけだ、と自分を誤魔化すことができたのである。

(これが退却厳禁の指示がある中で、退却止む無しという戦闘になっていては、仏軍将兵の士気低下は顕著極まりないものになっていただろう。)


 第二に、独軍の火力が余りにも乏しかったことだった。

 機動力重視に奔る余り、独軍は英仏軍に対して火力が不足する事態に陥っていたのである。

(戦後の調査によると、独軍歩兵1個師団の火力は、英仏軍歩兵1個師団の火力の8割といったところである等、独軍の火力は英仏軍の火力に対しては明らかに劣勢だった。

 それでも個々の歩兵同士の戦闘では、独軍歩兵は英仏軍歩兵より優勢に戦っている。

 これは独軍歩兵の英仏軍歩兵に対する相対的優位を示すものではあり、歩兵の命を代償にこの時の独軍は前進できたといえる。)


 そして、第二と関連するが、独軍戦車が余りにも脆かったことだった。

「日本海軍以下の戦車が、独陸軍の主力戦車なのか?」

 英仏軍の前線の将兵にしてみれば、信じられない事態だった。

 日本から遥々駆けつけた日本海兵隊、つまり日本海軍の戦車は75ミリ野砲を主砲としており、最も厚い砲塔正面は80ミリ傾斜装甲を持っていたのである。

 自軍の戦車より、日本海軍の戦車が優位なのは把握していたが、独軍の戦車も同等、いやそれ以下の戦車(独のⅠ号戦車のこと)でさえ前線に投入している。

「これなら独軍の戦車は恐れるに足りない」

 仏軍の砲戦車は、固定砲塔とは言えど75ミリ野砲を搭載しており、正面から撃ち合えば、容易に独軍の戦車を破壊できた。

 そして、アルデンヌ地方の地形は。


「側面に回り込め、敵は砲戦車だ」

「幾ら戦車でも森の中で側面に回り込めるか」

 アルデンヌ地方を進撃する独軍の上級指揮官からの指示に、現場が反発する事態が多発していた。

 確かにアルデンヌ地方の地形は、困難とは言え、戦車等の進撃が可能である。

 しかし、森林地帯等のアルデンヌ地方の地形は、独軍の諸部隊が仏軍の部隊を迂回して、仏軍の側面に回り込むのを困難にしていた。

 そのために、自らの血を流しつつ、独軍の諸部隊は前進することを余儀なくされたのである。

 更に


「白い星を付けている。米陸軍の航空隊だ」

「独空軍はどこ行った?」

 独空軍による航空優勢が確保できないまま、英仏米日各国の航空隊の攻撃に晒されて進撃せざるを得ない独陸軍の攻撃はつらいものとなった。

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