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第1章ー9

 現実問題として、独軍の仏本土侵攻作戦は、極めて困難な作戦となりつつあった。

 独軍のノルウェー侵攻作戦の大敗が、仏本土侵攻作戦に影響を与えたのである。


 まず、ノルウェー侵攻作戦大敗により、独海軍水上艦隊は消滅したと言っても過言ではない状況に陥った。

 まだ、前ド級戦艦2隻等が独海軍にあり、未だに独海軍は健在だと虚勢を張ることはできたが、実際問題としては、シャルンホルスト級巡洋戦艦2隻、ドイッチュラント級装甲艦3隻、アドミラル・ヒッパー級重巡洋艦2隻等々が沈められた以上、最早、独海軍水上艦隊が末期的状況にあるのは否定できなかった。

(更にヒトラー総統が、戦車等の量産を優先する関係上、ビスマルク級戦艦等の解体を指示していた。)


 そして、ノルウェー侵攻作戦における航空戦力の消耗も馬鹿にならなかった。

 北海における洋上戦闘をあまり考慮していなかった独空軍は、日米英の空母機動部隊への航空攻撃は極めて困難であり、一説によると独空軍が1000機近い損耗を被った一方で、日米英の空母機動部隊の航空機の損耗は1割以下の50機程で済んだという。

 これは日米英の空母部隊への攻撃に際し、独戦闘機の支援が乏しかったのが一因だった。


 この辺りは、主に日米とそれ以外(英仏独等の欧州)の戦闘機と爆撃機の関係が大きい。

 日米は、爆撃機の護衛を戦闘機は密接に行うべきだ、そうでないと爆撃機の戦闘機による護衛は無意味である、という発想があり、それに基づいて、戦闘機の開発等が行われていた。

 これに対し、日米以外では、戦闘機は独自に行動し、積極的に敵戦闘機を削ることで、間接的に爆撃機の行動を容易にするという発想が主流だった。

(これは、爆撃機を直接、戦闘機に護衛させては、戦闘機の手足を縛るようなもので、却って爆撃機の護衛任務が果たせない、という考えからのものであった。)


 確かにお互いに一理ある考えではあり、悩ましいものと言えたが、1940年のノルウェー侵攻作戦においては、日米以外の戦闘機運用の発想は、害をもたらした、と言っても良い。

 何故なら、単発戦闘機の集団で洋上飛行する訓練を、ろくにしていなかった独空軍戦闘機のパイロットたちは、日英米の空母機動部隊への接敵に失敗したり、基地への帰投の際に機位を見失ったり、という事態を多発させたからである。

 

 このために大量の航空機を独空軍は、ノルウェー侵攻作戦において失うことになった。


 また、それよりもある意味で深刻な事態を引き起こしたのが、ノルウェー侵攻作戦における独空挺部隊の損耗だった。

 ノルウェー侵攻作戦によって、当時、実戦投入可能な独空挺部隊の8割以上が死ぬか、英仏米日連合軍の捕虜になるかしてしまい、生き残ったのは2割にも満たなかった。

(更にその内で、仏本土侵攻作戦に際して、実戦投入可能なのは生き残ったメンバーの半分余りで、残りは負傷を治療している有様だった。)


 それでも。ヒトラーは、仏本土侵攻作戦に独空挺部隊を積極的に投入するように指示したが、肝心の現場の独空挺部隊が空挺作戦に否定的になっていた。

(部隊の隊員の8割以上が死亡乃至捕虜になった直後に、新作戦にその部隊を投入しよう、というヒトラーの指示の方が無理があるとしか言いようがない話なのだが。)

 更に、独空挺部隊を輸送し、補給を維持する独空軍輸送機部隊も、ほぼ同様の損耗を出していた。


 以上のような状況から、独軍は仏本土侵攻作戦を大幅に練り直さざるを得なかった。

 この練り直し作業の為、独軍の仏本土侵攻作戦は、1940年5月には発動できる筈が、6月まで順延せざるを得ない状況に陥ったのである。

 また、連合軍の準備を整えさせることにもなった。

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