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第1章ー6

「仏第9軍等を指揮下におけるとはいえ、気持ち的には良い気がしないな」

 レヴィンスキー将軍は、6月初めにそう呟きながら、臨時編成された(通称)アルデンヌ方面軍の軍司令官を務めることになっていた。

 その一方で、内心では独軍の仏への侵攻は阻止可能であると確信しつつあった。


 まず第一の根拠が、独にとっては北欧ノルウェー方面からの空からの脅威を無視できないことから、空軍の戦力の一部を本国防衛に当てねばならない、という状況に陥っていることである。

 ノルウェーを前進基地として、英米空軍によってベルリン等の独本土に対して夜間空襲が試みられるようになっている。

 まだ連日、首都ベルリンが空襲に晒されるような戦況ではないが、独本土防衛のために戦力を残さないといけない状況に陥っているのは間違いない。


「何で、あんなに航続距離の短い戦闘機で充分とゲーリング以下の独空軍首脳は考えたのかね?航続距離が長ければ、ベルリン近郊の空港の戦闘機部隊がベルリン防空を行いつつ、パリ空襲の爆撃機部隊を護衛することが可能だ。日本空軍でさえ、その程度の戦闘機を開発して保有しているのに、独空軍は何故に開発しなかったのだろう?」

 レヴィンスキー将軍には理解しかねる考えだった。


 第2の根拠が、第1の根拠と連動するが、独仏戦における戦場の制空権、航空優勢確保を、独空軍は行うことが困難になりつつあることだった。

 独空軍の一部が、独本土防空に当たらねばならなくなる一方、日米から大量の航空機が届いている。

 質等を無視した単純な量的比較になるが、独仏国境においては2倍以上の数の優勢を英仏米日は誇るようになっていた。

「戦いは数だからな」

 第一次世界大戦末期、独帝国軍の最終攻勢、カイザーシュラハトを英仏軍の航空優勢の前に粉砕された経験を持つレヴィンスキー将軍にしてみれば、この数の優勢は心強いものだった。


「しかし、問題は英仏日米、更に我がポーランドと言った軍同士の考えの相違だ。これに足元をすくわれるわけにはいかないな」

 レヴィンスキー将軍は更に考えを巡らせた。


 英仏軍の基本的な考えとしては、独軍の侵攻を迎え撃ち、できればだが第一次世界大戦と同様の塹壕戦に持ち込むんで長期戦による勝利を図ろう、というものだった。

 これに、我がポーランドや日米は反対している。

 特に(パットン将軍の個人的な意見に近いが)米軍は、積極的な攻勢への転換を主張している。

 しかし、レヴィンスキー将軍は、内心では米軍に同意しつつも、そう賛成意見は述べられなかった。


「英仏軍が攻勢を取らないのに、日米にポーランド軍だけで攻勢に転じるというのは無理だ」

 それがレヴィンスキー将軍の基本的な考えだった。

 では、どうするのか。

「独軍の攻勢を逆用する。それこそカンネーの戦いのカルタゴ軍のようにだ」

 レヴィンスキー将軍は、そう考えており、日本軍(海兵隊)もそれに同意していた。


 レヴィンスキー将軍には苦い思い出があった。

 カイザーシュラハトにおいて、独軍の攻勢を逆用されて、英仏軍に大勝利を収められたのだ。

 それと似たようなことを、勝利者として行おうというのである。


「そのためには不自然でない形で、独軍の攻勢を外見上は成功させないといけない。前へ前へと独軍を進ませて、それを逆用することによって独軍を包囲殲滅するのだ」

 祖国ポーランド解放を目指すレヴィンスキー将軍のこの戦役における考えを要約すれば、上記のようなものだった。

「そういった観点から見ると、アルデンヌ地方は理想的だ。何しろ戦車等が通れるとは言え、地形上から通路はどうしても絞り込まれてしまうから逆用も容易い」

 レヴィンスキー将軍は、そのように判断していた。

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