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第5章ー14

 ポーランド陸軍のレヴィンスキー将軍は、こういった状況の中で大胆な作戦を展開することを立案した。

 先日の西方戦役の結果、アルデンヌ地方の大半を日米ポーランド軍が抑えていた。

 こういった状況を活用し、英仏軍の主力が展開するオランダ、ベルギー解放の戦いに日米ポーランド軍も協力するかのように装いつつ、不意に東方に転じることで、奇襲攻撃を独軍に加え、ライン河を渡ってしまおうという作戦である。


 当然、これには独軍が引っかかるような目標を、まずは攻めねばならない。

 そして、独軍が気が付いた時点では、手遅れになるような渡河点を選ばねばならない。

 石原莞爾中将やアイゼンハワー将軍らも、レヴィンスキー将軍の作戦の基本案には同意したが、そんな目標はあるのか、と想いながら作戦を検討する羽目になったが、レヴィンスキー将軍には、こういった作戦を展開するのに絶好の目標が見えていた。


「アーヘンという都市とその歴史をご存知ですかな」

 1940年10月初めのある日、レヴィンスキー将軍は、日米ポーランド軍の幹部が集った作戦会議の場で参加者に問いかけた。

「確かシャルルマーニュ大帝が首都とした街では。その後、いわゆる神聖ローマ帝国の皇帝が戴冠式を執り行った街でもあったと思いますが」

 歴史に強い米軍のとある大佐が答えた。


「その通りです。独第三帝国を呼号するナチスドイツにしてみれば、アーヘンは歴史的経緯から言って重要な街と言えるでしょう」

 レヴィンスキー将軍は、一旦、そこで言葉を切った後で続けた。

「そして、地形的にもここは目標としやすい街です。ライン河の西岸にあるからです」

 その言葉を聞いた会議の出席者達は、その言葉の裏に気づいた。

 ここを日米ポーランド軍が目指した場合、独軍は死守を試みるに違いない。

 そして、他に目を配る余裕を相対的に失うことになるだろう。


「アーヘンに全力攻撃を掛けることで、独軍の目をくらませ、その隙にライン河の渡河点を確保しようというのですな」

 石原莞爾中将は、レヴィンスキー将軍の意図について、そう問いかけ、レヴィンスキー将軍は肯いた。

「確かに、フランスでいえば、英仏百年戦争の転換点の一つになったランスのような街。アーヘンを攻撃するのは効果的でしょうな」

 米軍のアイゼンハワー将軍もそう主張し、パットン将軍もおもしろい、と言わんばかりの表情を示した。


「それで、どうアーヘンの街を攻撃しようというのです」

 アイゼンハワー将軍は米軍を代表して、レヴィンスキー将軍に対して問いかけた。

 アイデアは悪くない、だが、実際の攻撃方法を確認しない、と賛成できない、と暗に言っている。


「我々の総力をもって、独軍の防衛線を崩し、ポーランド軍や英仏軍をもって、アーヘンへの急進撃を試みます。アーヘンを我が軍が包囲したら、基本的にポーランド軍がアーヘンへの攻勢を行い、英仏軍等が救援部隊の阻止を主に行います」

 レヴィンスキー将軍は、淡々とアーヘンへの攻撃について説明した。


 その説明を聞いた土方歳一大佐は、その説明に違和感を覚えざるを得なかった。

 我が日本海兵隊等はどうするのだ。

 土方大佐が横を見て、石原中将の表情を伺えば、石原中将も自分と同じことを考えているような表情を浮かべている。


「そして、独軍の目がアーヘンに完全に引きつけられた後で、日本海兵隊がライン河へと突進するのです。サムライ6個師団の急襲を受けて、独軍は混乱して我々はライン河の渡河点を確保することに成功するでしょう。それともサムライは出来ないとでも」

 土方大佐らの想いを察したのか、レヴィンスキー将軍はそう話を締めくくった。

 石原中将が言った。

「サムライの辞書に不可能の文字は無い」

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