表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/120

プロローグー1

 プロローグになります。

 日時は明記していませんが、1940年5月下旬のある日になります。

 1940年5月16日、パリ近郊の駐屯地にて土方勇少尉は、あらためて大隊全体訓練に参加していた。

「実戦を経験して分かったことだが。やはり戦車と歩兵の協働は重要だな」

 土方少尉はそう呟いて、麾下にある戦車4両を運用していた。

「それにしても、この戦車はいい戦車だ」

 土方少尉は、自らの搭乗する零式戦車に誇りを抱いていた。


 土方少尉の見る限り、仏に来て見せられた仏英両国陸軍の戦車には、様々な欠点があった。

 勿論、各国それぞれの事情に合わせて、各国の戦車が開発されたことは土方少尉にも分かってはいる。

 だが、結果論だが、万能戦車を作らざるを得ないという半ば脅迫観念から、父、土方歳一大佐らが中心となって開発した日本海兵隊の零式戦車が卓越した戦車なのは間違いなかった。

「こいつなら、独軍の戦車は恐れるに足りない」

 土方少尉は、自信満々だった。


 実際問題として、この当時の独軍の戦車は、零式戦車に勝てない代物だった。

 フランスのM1897野砲を主砲に転用し、最大装甲は砲塔正面で傾斜80ミリ(垂直だと100ミリ相当)、重量30トン余りの車体をフランスのイスパノ・スイザ12Y航空エンジンを転用することにより確保できた大馬力出力のエンジンを駆使することにより、路面状態が良ければ最高時速50キロを零式戦車は出せたという。

 これに対抗できる戦車を、1940年春当時の独軍は保有していなかった。


 だが、この当時の独軍は何とかなる、と信じていた。

 まず第一に別に必ずしも戦車で戦車と戦う必要はない、ということである。

 航空攻撃により、敵戦車を破壊すればよい、そもそも制空権を確保できれば、戦車の優劣等問題外、という発想だった。

 更に、第一次世界大戦を経験した一部の独陸軍高級士官以外が抱いていた人種差別的な考えも、独軍全体では根強いものがあった。

 物まねしかできない日本が、独より優秀な戦車を開発保有できる訳が無い、という考えがあったのだ。

 それに零式戦車は、日本が保有するだけであり、英仏は保有していない、という事情もあった。


 その一方で、独政府は戦争が長期化しては、敗北は必至であるとも考えていた。

 何しろソ連という味方(敵の敵は味方という論理からに過ぎなかったが)がいるものの、米国という強大な敵国があった。

 独にソ連と共産中国が加わっても、米国をバックとする英仏日に国力ではとても勝てない。

 となると、短期戦により仏を打倒し、それによって伊等の中立国を独ソ側になびかせ、それによって米国と講和を結ぼうという考えになるのも無理はなかった。


 こういった考えから、独政府は軍と共同して1940年5月のこの時期、対仏侵攻作戦を具体化させつつあった。

 とは言え、その行く末には暗雲が立ち込めつつあった。


 先日、行われた独のデンマーク、ノルウェー侵攻作戦は、デンマークの確保こそ成功したものの、ノルウェー侵攻作戦は完全に失敗に終わったと言っても過言ではなかった。

 何しろ、独水上艦隊は消滅したといっても良い大打撃を被ったのだ。

 この責任を取って、レーダー海軍元帥は独海軍総司令官を辞任する羽目になった。

 また、ヒトラーは、

「役立たずの独海軍水上艦隊は廃止する」

 と宣言し、ビスマルク級戦艦等の建造を取り止めて解体し、戦車等の資材に転用することを命じた。


 実際問題として、ノルウェーが英仏日米側に立って参戦した現在、スウェーデンからの鉄鉱石の輸入は困難になっていた。

 また、ノルウェー侵攻作戦の失敗により大量の熟練した独海軍軍人が失われたことも考えると、ビルマルク級戦艦の建造は困難であり、完成したとしてもまともに運用できたのか、と言われては、多大な疑問が呈される有様だった。

 ご感想をお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ