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ハッピーエンドはここじゃない  作者: 水月康介
2年次2学期 ―承前―
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この学校で最も有名な女子生徒

 繭墨乙姫まゆずみいつき


 この学校で最も有名な女子は誰かと問われれば、ほとんどの生徒が彼女の名前を挙げるだろう。


 容姿端麗、成績優秀。身体を動かすことに関しては並なので文武両道とはいかないが、現在は生徒会長をつとめており、文化祭などの学校行事を成功させている。その際の非公式ミスコンでは得票数1位という勲章も持っている。


 腰までかかる長いストレートの黒髪と、端正な面立ち、そこにアクセントとなる紅縁のメガネが、彼女の印象をややキツいものにしていた。


 仰々しい肩書や、日本人形のように凛とした外見から、苦手意識を感じる生徒は多いが、逆にそれがいいというマゾい男子もかなりの数が存在している。


 ただ、彼女のキツさを実際に体感したことのある者はほとんどいないだろう。


 淡白な性格なので、基本的に周囲の人間と関わろうとしない。

 毒舌キャラのようにケンカを吹っ掛けるわけでもない。


 大多数の生徒にとっての彼女は、成績優秀で真面目な生徒会長、そのものずばりのイメージを持つ、ある意味とても記号的な女の子なのだ。


 そんな彼女でも色恋に心を乱すこともあるし、失恋することもある。

 ミスをすることもあるし、自信を失うこともある。

 かと思えば、辛辣な言葉から一転して、やさしい言葉をかけてくることもある。


 そういう姿を、僕は縁あって近くで見続けてきた。


 僕が彼女に好意を持っているのは、彼女が生徒会長だからってわけじゃない。順序が逆だ。好きな子が生徒会長になってしまっただけなのだ。


 文化祭最終日。

 キャンプファイヤーの炎が揺らめく幻想的な夜に、僕は繭墨に告白をした。

 立派になってしまった彼女の肩書に、多少の気後れを感じつつも。


 返事は、イエス。

 天にも昇る気持ちというのは、あの瞬間のことを言うのだろう。


 誰もが認める高嶺の花、繭墨乙姫と。


 あまり目立つとは言えないこの僕、阿山あやま鏡一朗きょういちろうは。


 その日めでたく、恋人同士になった。


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