真実
「…広瀬、お前どういうつもりだ」
「っ何故ここに浩史さんたちが!」
「質問に答えなさい。何故こんなことをしているの」
「っ!……娘に頼まれたからです」
「……瑞希さん?だったかしら?
あなたは何故お父さんに頼んだのかしら?」
「…あんな小娘が姫になるのが許せなかったから。財閥の令嬢の私がなる方がいいと思ったからですわ」
「ほぉ…それで俺たちの大切な一人娘に手を出したと?」
瑞希の父親は驚いていた
そして怯えていた
俊たちは驚いて琴心を見た
前に琴心の両親が初代黒龍で初代姫だと聞いていたからだ
名前を聞いた時にもしかしてと思ったが確実ではなかった
でもそれは今確信に変わった
「この子が……御二方の娘…?」
「あぁ。」
「っその小娘が初代黒龍と初代姫の娘だろうが人を殺したのには変わりないわ!!」
瑞希が叫んだ
父親がよく2人のことを話しているのだろう
だからこの2人が初代黒龍、そして初代姫ということを瞬時に理解出来たのだ
瑞希の発した言葉で会場はもっとざわついた
初代黒龍、そして初代姫の娘が現在の姫である琴心の両親だと知ったからだ
「_少し黙りなさい」
静香の透き通った声が会場の隅々まで響いた
決して大きな声ではなかったし、威圧感があった訳でもなかったが、生徒を黙らせるのには充分だった
それだけ初代の2人の存在は恐ろしいという事だ
「人殺しですって?……琴心が?
……さっきそれはデマだと言ったでしょう?」
「でもっ!」
「でもじゃないわ。聞き分けの悪い小娘ね。」
「っ……」
瑞希は苦虫を噛み潰したような顔をした
「そもそも琴心はねっ!」
「お母さん……」
生徒は静かにしていたため、琴心の声は会場に響き渡った
琴心が喋ったことで会場はうるさくなった
でもそれは一瞬の出来事
すぐまた静かになった
それは浩史が睨んだからだ
「琴心…大丈夫……?」
静香は琴心に声をかけた
それに答えるかのように琴心は微笑んだ
「お母さん、もういいよ。
……私が全部説明する」
そう言って琴心は全てを話す決意をした
芦刈司という男の存在を
そして過去に何があったかを
「芦刈司は私の友達 “だった”
…あいつは好きな子と仲良くなるために私を利用したのよ」
静した話し始めた琴心
何かを言おうと瑞希は口を開くがすぐに口を閉じる
琴心の父、母、そして自分の父に睨まれたからだ
「あいつの好きな子は私のことが嫌いだったみたいでね
…だから私をいじめたら仲良くなれるだろうと思ったらしくて私をいじめた
その時は心から司のことを信じていたから裏切られた気持ちでいっぱいだった
友情よりも恋を優先させる…恋のためには友人を捨てるんだって」
俊たちはびっくりした
琴心にこのような過去があったということ
そして琴心が泣いていることに
「司は好きな子と仲良くなれた
それで告白したんだよね
でも呆気なく振られたの
聞いた時はざまぁみろって思ったわ
神様が与えた罰だってね」
琴心は遠い目をしていた
そして昔を思い出すかのようにゆっくとゆっくりと話した
「その後にね、司が私を責めてきたの
お前のせいだってね
私は意味がわからなかった
そしたら司はお前と最初仲良くしていたせいであの子に振られたんだって
知るかって思った
だけど言えなかった」
瑞希は何かをまた言おうとしたが口を開けなかった
琴心があまりにも綺麗だったからだ
泣きながら、でも笑っていた
その姿が華麗で今にも消えてしまいそうで……
「私は司に首を絞められていたの
だから喋ろうと思っても喋れなかった
その時丁度先生が通りかかって司と私は離された
そして公にならないように司は違う中学に転校したの
これが全てよ」
全てを言い切った琴心は足の力が抜けたのかステージに座り込んだ
俊たちは慌てて琴心の傍に寄った
「大丈夫か?琴心」
「大丈夫よ…」
「っ広瀬財閥が調べたのよ?!間違いないはずだわ!その話がデマなのよ!」
「やめろ!瑞希!こちらが間違っていたのだ」
「何で?!何でなの?!お父様っ!」
「いいからこれ以上言葉を発するな!」
必死になって叫ぶ瑞希に対して瑞希の父親は瑞希に喋ることを禁止した
「広瀬財閥……ねぇ?」
琴心の父である浩史は嘲笑うかのように微笑んだ
「えぇ!あなた方がお父様の先輩だとしてもお父様の方が今は権限があるのよ!」
瑞希は勝ち誇ったように笑った
でもそれは自分の父親が発した言葉ですぐに絶望的な顔になる
「瑞希っ!いい加減にしなさい!
この方たちは実渕財閥の方々だぞ!
俺の先輩だけではない!全てが俺たちよりも立場が上なんだ!」
実渕財閥
それは日本の誰もが聞いたことのある財閥だ
日本で1番……いや、世界で1番大きい財閥だ
それに比べて広瀬財閥は日本でも下ら辺にいる
浩史、静香、瑞希の父親以外の全員が驚いている
「え、ちょっと待って。
……どういうこと?」
琴心は頭が混乱していた
今まで会社を経営しているとは聞かされていたけど小さい会社だと思っていたのだ
「そのままの意味よ。
簡単に言うとあなたは財閥の令嬢よ」
琴心はもう言葉を発することさえ出来なくなった
それは琴心だけではないようでここにいる誰しもがそうであった
「とにかく広瀬。
お前の娘が言っていることは全てデマだ
そして瑞希……と言ったか。
まだデマなんかじゃないと信じているのなら警察に言ってみろ。
芦刈司というやつが死んだ記録なんて一つもないはずだからな」
瑞希は泣き叫んだ
狂ったように
琴心は安心したのか洸大にもたれかかって意識を手放した