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混魂転生  作者: 炒豆きな粉
第1章 出会い編
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訪問者

もし願いがひとつ叶うなら、大金を要求したい邪な作者です。

7月1日内容付け足しました。



コウとミーナが王都にある魔法学園に行くことを決めて半年後、タマモにいつもより早く起こされたコウは人が来る事を伝えられ、


「御主の事でもあるからついてくるが良い」


との事なので、コウはタマモの後を着いて行くことにした。ついでにミーナは日が昇る前なのでまだ寝ているので置き手紙を置いておく。


そして朝日が昇る頃に、一台の大きな馬車が村に到着した。


その馬車は簡素でありながら、どこか気品を感じられる。そんな事を思っていると、馬車から男2人、女1人の3人組が出てきた。


その3人は人族、エルフ族と種族が違っており、動きやすそうな僅かな装飾を施した服装であるが、それぞれに常人では感じられない気配を感じる。


そして3人の中の1人の威厳のある60歳程の人族の男が前に出てきて、それと同時にタマモも前に出て、握手をした。


「久方ぶりだの、アルラスト国王オーガンドよ」

「あぁ、久方ぶりであるな、獣王タマモよ」


カンナギ村には人族がコウだけしかいないが、数年に一度村の外から来る人族の王の話をタマモから聞いていた。目の前の人物は話に出てきた者の特徴と一致していたのでこの人物が王である事はなんとなくわかった。


タマモが言ったこの男、オーガンド・アルラストはアルラスト王国の王であり、周りの国からは「賢王」と言われるほどの善政を敷いている逸材だ。


そして、アルラスト国王の言った獣王とは、この世で一番強い獣人5人に付く最強の称号である。


そしてタマモは一番強いらしい。


タマモと握手を交わしてから、アルラスト国王はこちらに向き、挨拶をしてきた。


「君がタマモが言っていた子供か。さっきも言った通り、私はアルラスト王国の国王であるオーガンド・アルラストという。宜しく頼む」

「ご丁寧にありがとうございます。私はコウと言います。」


そう言って頭の下げ、挨拶をした。

それを見た国王は「ほぅ」と感嘆したような声を出した後、


「この歳でここまで礼儀を通せるものは珍しいな……面白い」


と言ってからタマモに顔を向け、


「この子の事で間違い無いのだな」

「あぁ、そうだ。早速始めようかの」

「そうだな、御主が言うほどの実力の持ち主だ。楽しめることはまず間違いあるまい」


そう言って俺の顔を見た後、オーガンド国王はニヤリと口元に笑みを浮かべ、後ろの2人の内、騎士を想わせる格好の初老に見えるの人族の男に目線を送った。


「ベイオルフよ、気は抜くなよ」

「わかっておるよ、王よ。気を抜けば、そこで終わりだろうからな」


そしてベイオルフと呼ばれた男は馬車から刃を潰した鉄剣を二本取り出し、片方をコウに投げ、それをコウは手に取った。


瞬間、ベイオルフが斬りかかってきた。


いきなりのことだったが、コウは常に周りに気配を配って奇襲などに備えているので、瞬時に意識を戦闘状態に切り替え、斬りかかってきたベイオルフの剣を受け止め鍔迫り合いながら会話する。


「ふむ、この程度は受け止めるか。それに並ならぬ反射速度だな…」

「いきなりですね。何故この様な事を?」

「それについてはこの試合が終わった後で説明するのでな。それでは…少し本気を出すか!」


ベイオルフはそう言い、わざと一歩下がって鍔迫り合いの拮抗を崩してくるが、コウは引っかからず後ろに飛ぶとすぐさまベイオルフが距離を詰めて切りかかってきた。


(初撃もそうだったけど速いな…)


ベイオルフの剣の腕はかなり高く、一瞬でも気を抜けばすぐにペースを取られてやられるだろう。


(だったら、相手のペースに乗られなければ良いだけだ)


そこで ベイオルフが放った常人では反応できない速度の上段斬りを鉄剣を肩に担ぎ、鉄剣を横にして受け流して反撃する。


ベイオルフはその技術の高さに目を見開いたが、即座に反撃を避けて一旦離れた。


「受けるか、避ける事を予想しておったが、まさか完全に受け流して反撃してくるとは………。これはもう少し本気でやらぬと、倒しきれないな。…ならば」


そう言い圧を出し、さらに身体強化を発動して先程以上の剣速で斬りかかって来る。


「ハァッ!」

「…!」


気合いと共に放たれた高速の袈裟斬りを後ろに飛んで避けると、力強い突きを放って追撃してきたので剣の腹を殴って突きを逸らし、お返しとばかりに水平斬りを放つが、素早く引き戻した鉄剣によって塞がれ、拳を突き出して牽制され距離を取られる。


「…まだ、本気では無い様だな、少年よ」

「そう言うあなたもまだ圧を少し出しただけで本気ではないでしょうからお互い様です」

「気づいておったか、ならばお互いに更にもう少し本気を出すか」

「…わかりました。では、行きます!」


コウがそう宣言すると同時に、2人は走り出して高速の剣戟を繰り広げる。


「ハッ!」

「フッ!」


しばらく高速での剣を打ち合い時に流し、時に体術を使って牽制しあっていたが、ついにベイオルフが技を使ってきた。


剣を上段に構え、剣の表面に魔力を纏わせ【飛斬!】と叫び、離れているコウへ連続で剣を振るってきた。


振るった剣から見えない魔力の斬撃が数発放たれ、こちらに向かってくるが、振るった剣筋と音、感知した魔力から軌道を読み、全て紙一重で避け、目前まで迫ってきているベイオルフさんと再び打ち合う。


「………それなりの強者でも、初見で全て完全に躱したものはいない。少年が初めてだぞ!」


そう言いながらも息一つ乱さず、斬り合ってくる時点でこの人もかなりの強者だ。


「ベイオルフさんも凄いですよ。日頃から訓練してなかったら、もうやられてますよ」


ここまで強い相手は前世でも親父や爺さんの記憶の中に数人いる。だがそれは自分の癖が知られていたり、銃器や絡め手などを使っていたからだ。真正面で相手してここまで強い強者はそういない。


「それなりな圧を放っておるが、少年は平然としている時点で、そこら辺の猛者の域を超えておるな」

「一応、どんな奴にも負けない様に鍛えてますからね。でも………ベイオルフさんの剣は見切りました。そろそろ終わりにします」

「何だと?」


コウは前世でも何度も打ち合いながら相手の癖を探るのは得意だった。だからベイオルフの剣術を完全に見切ることはできた。それにこれ程のそれにと戦えたのはいい経験だった。


「だから、あなたに敬意を表して僕の技であなたを倒します」

「……ふむ、どうやら本気で言っておるな。ならば…このベイオルフを討ち取ってみよ!」


そう言ってベイオルフは更に圧を強くし、集中力を高めた。


コウは鉄剣を構え、ベイオルフに向かって走る。


ベイオルフは再び【飛斬】を放ってくるが、コウも同時に見様見真似の【飛斬】を放って全て相殺する。


「むっ!」


ベイオルフが驚いている僅かな隙に、お互いに剣の間合いに入った瞬間、【三又斬り】を身体強化を施して放つ。


「ハッ!」

「くっ!」


ギリギリの所で直撃を受け止めるか避けて反撃してきたが、全て避けて腕を蹴り上げる。


「ぬっ!」


蹴り上げて出来たその隙に最小限の動きで地面スレスレまで身を低くし、草薙流剣術中伝【鯉昇り】放ってベイオルフが苦し紛れに突き出した拳を剣の腹で防ぎ、頭上から同じく草薙流剣術中伝、【降り龍】を放って、ベイオルフが防ごうとして無理して頭上に戻してきた鉄剣を砕く。


【鯉昇り】は地面スレスレの位置から、水面を飛び出る鯉の様に素早く斬りあげる技であり、【降り龍】は空から降りてくる龍の様に渾身の力で真下に斬り下げ、瞬時に斬り上げる技である。


この二つの技は繋ぎやすいので、前世でも爺ちゃん相手によく使っていた。


「くっ!」


ベイオルフさんは砕かれた剣を捨て、殴りかかってきたが、全て避けて片手で身体強化した掌底打ちを突き出す。


「ぬぉっ!」


コウの掌底打ちがベイオルフに直撃し、5メートル程吹き飛ばした。


そこでオーガンド国王から終了の合図が掛かった。


「それまで!この【試合】、コウ少年の勝ちとする!」


そこでコウはやっと戦闘状態を解いた。


「いやはや、タマモからは強いと聴いておったが、まさか本当にベイオルフが負けるとは思わなかった」

「だから手紙に書いて置いたじゃろ、コウはかなり強いと」

「まさかあの王国騎士団長のベイオルフが負けるなんて………」


そこで国王と共に来ていたエルフ族の女性が初めて声を上げた。


その時コウは内心で、


(ベイオルフさんって王国騎士団長だったんだ。それなら【本気でなくても】あの強さも納得だな)


と思っていた。


そこでエルフ族の女性が「あっ!」と言ってコウの方を向き、


「すみません、自己紹介がまだでしたね。私はリーリン・フォレストフォードと言って、王国魔法士団長を務めています」


と言ってきたところで、ベイオルフがこちらに向かって、大声で笑いながら、歩いてきた。


「ふははっ!完全に負けたぞ!」


そう言ってコウに手を出し、握手を求めてきた。


「リーリンがさっき言った通り、儂はアルラスト王国騎士団長のベイオルフ・クライハートだ。少年、いや、コウのような強者と戦えて楽しかったぞ!【試合】とはいえ、清々しい程に負けたわい!堅苦しい敬語は要らん、儂のことはベイオルフと呼んでくれ」


そう、ベイオルフが言った通り、これはあくまでも『試合』なので本当の意味で本気で戦ったという訳ではない。その証拠にベイオルフは魔法を使っておらず、もしお互いに全力でぶつかり合った場合、近くの地形を変えかねないと思う。


「そういう事なら…。俺もあなたの様な猛者と戦えて楽しかったよ、ベイオルフ。またいつか戦おう」

「そうだな、またいつか戦おう!」


そう言い、強く握手をした時、ベイオルフのお腹が鳴った。


「ふむ、少しばかり食べてきたが、これだけ動いたのだから腹が減るのも仕方ないものか」


そう言うと、国王の方からもお腹が鳴る音が聞こえた。


「うむ、そう言えば少し食べただけであったな。話したいことがあったが、食事の後にでもするか」

「そうじゃの、だったら妾の社で人数分のうまい料理を用意しているから朝食とするかの」


そうしてコウとタマモ、オーガンド国王、ベイオルフとリーリンは社に向かった。





今回、ミーナの出番がなかった(涙)

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