魂混転生
多少変えました。
-草薙 輝-
「んっ…」
気が着くと、俺は辺り一面が真っ白な場所にいた。
確か俺はトラックに轢かれて、恐らくほぼ確実に死んだはずだ。だが、俺には意識がある。しかし目覚めてみれば、見たことのない場所にいた。
「何処なんだ、ここは………」
全くわからない。だが慌てても意味がないので、冷静に現状がどの様なことになってるのか思考する。
自分はトラックに轢かれた、そして死んだとしよう。しかし仮に死んでいたとしてここは何処だ?病室ではないことは明白だ。
しばらく考えてみたがさっぱり分からない。
何か探してみるかと思った時、後ろから人の気配を感じ、振り向いた。
そこには老人が立っていた。しかし輝はこの老人が只者ではない事を、その気配から察していた。
「ほぉ、この距離で気付くとはなかなかじゃないか」
少し驚いたと言うのかの様に、手を叩きながら老人はこっちへ歩み寄ってきた。
「あなたは誰ですか?」
「儂はしがない老ぼれだ。君の好きな様に読んでくれたら良い」
老人はそう言い、歩みを止めた。そこで俺はこの老人、いや、爺さんに気になっていた事を聞いた。
「………だったら爺さんって呼びます。………爺さん、貴方は何者ですか。その気配は何度も修羅場を掻い潜ってきた強者の気配です」
そう言うと、爺さんは静かに俺の目を見て、俺が本気で聞いている事がわかったのか、小さくため息をついた。
「………よくその年で、気配の見分けがつくな。少年には驚かされる。だったら隠しても無駄だな。………儂は死ぬ前までは、とある国でエージェントをしていた」
「………なるほど、だからそれほどの気配を貴方から感じるわけだ。…それに、貴方も死んでしまったのですか」
「………………君も、か。………武に置いて惜しい者を亡くしたな」
お互いに沈黙しあって、少しの間が出来た。
そして俺は、爺さんとの会話を続けようとした時、俺の後ろに気配を感じた。
「「!ッ」」
一瞬で背後の気配を感じた俺は、跳びながら身を捻って背後を向き、地面に着いた瞬間に爺さんと共に
構えた。
そこには少女がいた。
綺麗な顔立ちで水色の髪と金の目を持ち、簡素な白いワンピースと可愛らしい外見だが、その身から圧倒的な神々しさを感じる。
俺と爺さんが警戒している中、少女が口を開いた。
「………二人共、かなりの反応速度と反射神経ですね。………私はこの空間を管理しているアウリスと言います。二人にお願いしたい事があるので、話を聞いてくれませんか?」
俺と爺さんはお互いに目線だけを合わせ、彼女に敵意がない事を確認して、構えを解いた。
「……わかった。それでそのお願いってのはどんなことなんだ?」
「………もっと警戒されると思ってましたが………」
「儂と少年ぐらいなら相手が敵意を持っているかいないかなど、すぐにわかる。………それに君もそんな堅苦しい言葉遣いをせずに、いつもの喋り方をしても良いのだぞ」
その意見には俺も賛成だ。アウリスの喋り方は何処か肩苦しさが感じられる。
「……うん、わかった。だったらいつもの喋り方で話すね」
そしてアウリスは見た目相応の口調に変わった。
「それで私のお願いの前に、二人は自分が死んだこと……その…気づいてる?」
「あぁ、実感はないけどね」
アウリスが聞いてきた質問に 正直に答える。
「そう…。今の二人は魂だけの存在で、このままでは消滅してしまうの。でも二人の様な魂は強くて、私のお願いを叶えてくれるかもしれないと思ったの」
「そのお願いって何なのじゃ?」
「簡単に言うと、ある世界の問題を緩和して欲しいの!。その世界の住人では、どうすることも出来ないから、二人に頼むしかないの…」
「つまり、その世界に転生して、問題を緩和して欲しいってことか」
「そうなの。…図々しいのはわかってるけど、もうこうするしかなくて………、だからっ「「別に良いぞ」」…………えっ!」
「だって生き返してくれるんだろ?。だったらお願いされたら聞かない道理はないよ」
「まぁ儂は長く生きたから、このまま消えても良かったのだが、少年と同じ様な感じだな」
「………本当に良いの?私達の問題を押し付けちゃって」
「これは俺の自己満足でもあるから気にしなくて良いよ。だからその問題は聞いたら、早速転生させてくれ」
輝がそう言い、爺さんが同意する様に頷く。
二人は正義など偽善でしかなく、ただの我が儘や自己満足同意思っている。だからこそ二人は己の信じるものを貫き、ここまで強くなったのだ。
「……わかった。だったら二人共私の手の上に手を置いて」
二人の意思を感じ取ったアウリスは、自分の両手を差し出し、二人もアウリスの手の上に自分の手を置いた。
瞬間、二人が転生する世界、イクスティアの問題が頭に入ってきた。
その問題とは、種族間の関係を良くすることであった。
「あ!」
そこでアウリスが驚いた様な声を上げた。
「どうした?」
「その……二人の魂が強すぎて………今の私の力だと、一人しか……送れないの…」
そう言ったアウリスは暗い顔になった。
「……つまり、俺か爺さんのどっちかしか、イクスティアに行けないのか……」
どうしたものかと考えていると爺さんが俺の肩に手を置き、「君が生きなさい」と言った。
「………良いのか爺さん?そうすると爺さんは……」
「あぁ、わかっている。だが、私は仕事上、あまり普通の人と話す機会がなかったのでな。それだったら君の方が適任だ」
「…爺さん………」
爺さんは本気でそう思っている目をしている。
ここで爺さんの意思を曲げるのは、爺さんに対しての侮辱だ。
「………わかった。俺がいきます」
俺は爺さんの意思を尊重した。
「頼んだぞ。……しかし、君に押し付けてしまったのに何も渡せないのは癪だ。………………アウリスよ、さっきの記憶を移す方法を使っても、一人は送れるか?」
爺さんはアウリスに記憶を移したらどうなるかを聞いた。
「………ギリギリだけど、一人だけなら」
「だったら、少年に私の記憶を渡してくれ」
「………爺さん。何でそこまでしてくれるんだ?」
「……何故だろうな。儂にも分からん。だが、そうしたくなった」
「そう…ですか」
しばらくの間、静寂が空間を支配したが、爺さんが「やってくれ」と言い、アウリスが了解した。
アウリスが爺さんに両手をかざすと、爺さんから光が出て、俺に当たった。そして俺は爺さんの記憶を見て悲しくなったが、今は悲しんでいる場合ではない。
爺さんの体が薄れている。しかし爺さんは穏やかな顔をしていた。そして俺に向いて
「……君との語らいは、楽しかった……。またいつか、来世で語り合おう………」
そう言って、爺さんは消えた。
「……そうだな、だからその時が来るまで待っておいてくれよ、爺さん、いや、リチャードさん」
俺は涙を堪え、リチャードさんとの再会を約束した。
「………アウリス、俺をイクスティアに送ってくれないか」
「………わかった。向こうでお兄さんを育ててくれる人には、話をつけておくよ。またね、お兄さん」
「あぁ、またな、アウリス」
そして俺の意識は遠のき、イクスティアに転生した。
自分の才能の無さが辛いです。
他の作者の才能が望ましい。