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混魂転生  作者: 炒豆きな粉
第2章 旅立ち
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商談終了

俺は目の前に座っているシモン会長に今回商談する物の1つ、味噌の入った容器を取り出した。


「ご存知でしょうが、これが本日商談をする味噌であります」

「うむ、味噌汁だったか、それを王都で一度食した事がある」


シモン会長の前に容器を置き、味噌の特徴を説明する。


「この味噌は原料である大豆をとある方法で加工した調味料の一種です。そして味噌の特徴ですが、まずは香りです」

「確かに今迄に嗅いだ事のない良い香りがする。しかしあの大豆が原料だったとは…、これは大豆の需要が増えるな」


この世界で大豆は食べ物としてあまり普及しておらず、貧村の者や馬が食べる物としか思われていない。せっかく畑の肉とも呼ばれているのに勿体ないものだ。


「この香りですが、先程申し上げたとある加工方法、発酵が関係あります」

「発酵?聞いた事のない加工方法じゃの…」


やはりこの世界ではエールなどの酒以外で発酵の概念がまだ無いようであり、シモン会長は顎に手を当てて首を傾げている。


「それでは発酵について説明します。発酵とはとても小さな生物、微生物の働きによって起こるもので、酒に酔う原因のアルコールや木を燃やした時に出る煙に含まれる二酸化炭素などが発生する過程の事です」


本当はもっと複雑な働きなのだが、科学を知らない人に説明するにはこれ位噛み砕かないと少しも理解できない。


「アルコールに二酸化炭素、か・・・、アルコールはわかるがその二酸化炭素?という物が出るということはその味噌も黒い煙を出すのか?」


今の説明である程度理解しているシモン会長に俺は少し驚きながら質問に答えた。


「いえ、それは他の成分が含まれているからであって、二酸化炭素自体は見えないです。…それにしても、今の説明で良くわかりましたね」

「これ位はすぐに理解する力がないと、1つの商会のトップとしてなくてはならないからのぉ」


それなりの商人でも今の説明だけではもう少し時間が掛かるはずだが、流石は王都で【豪商のシモン】の二つ名で呼ばれる商人と言うべきか。


「成る程、それではこのまま説明を続けますね」

「宜しく頼む」

「はい。先程説明した発酵を使って製造した食品を僕は発酵食品と呼んでいます。味噌はもちろん発酵食品ですが、これも発酵食品の一種です」


そう言って俺は味噌の他に商談する予定だった鰹節もどきを取り出した。


「これは確か、鰹節といった物か?オーガンドが持ってきた時にこれも拝見した」

「その通りです。製法は味噌とは異なりますが、同じ発酵食品です」


味噌汁の飲んだ事があると言うので鰹節の使い方は知っているだろう。


「これの使い方はーー・・・」


その後、鰹節の説明をしているとタマモが帰ってきて話に加わり、醤油やオリーブオイルなどを紹介してから金銭に関しての話になり、話にあった結果今から5年間に売れた金額の2割を貰い受ける事と、この村や、俺たちが王都に行った時に商品を融通してもらう事で落ち着いた。




商談が終わるとシモン会長は笑みを浮かべて話しかけてきた。


「いやはや、久方振りに良い商談をする事が出来た。コウ君、そしてタマモ殿、礼を言わせてくれ、…ありがとう」

「あっ…いえ、此方こそ良い商談をしてくれた事を感謝しています。ですから頭を上げて下さい」


突然シモン会長が頭を下げきたので、俺は慌てて頭を上げる様に言った。


その光景を傍で見ていたタマモはクスクスと笑っていた。


「コウが訓練以外で慌てたのを見るのは珍しいのぉ…、それにしても…久方ぶりじゃのぉ、シー坊や?」


タマモがそう言うや否や、シモン会長は先程まで下げていた頭をガバッと上げた。


「昔のあだ名を言うのはやめて下されタマモ殿!」

「くっくっく、やはりお主らをからかうのは楽しいのぉ…、くっくっく」

「もう私達も子供では無いのでからかわないで下さい!」


いきなりのシモン会長の変化に呆気を取られていたが、先程の話の内容から推測すると大体の事は予想出来た。


「シモン会長は子供の頃にタマモに会った事があるんですか?」


そう訊くとシモン会長はわざとゴホン、と咳をして冷静になった。


「あ、あぁ、子供の頃に何度か会った事がある」

「どうせなら、その時の事を説明してやってはどうじゃ?ついでにお主とオーガンドの仲についてもの」


やはりシモン会長はオーガンド国王と知り合いだったらしい。


「むぅ、コウ君が聞きたいと言うのであれば私は構いませんが……」

「是非、聞いてみたいです」


俺がそう言うとシモン会長は「それならば…」と言って昔話を語ってくれた。


「私とオーガンド、それともう一人いるのだが、私達は子供の頃に城から抜け出してきたオーガンドと良く遊んでいた友人でな、今はお互いに立場があるのであまり会えないのだが、当時は良く悪戯をして何度も叱られとった。いやぁ、懐かしいものだ…」

「意外…でも無さそうですね、主犯はオーガンド国王なのでは?」

「はっはっは、そう通りだよ。良くわかったね」


言っては悪いが、あの国王の性格から考えたら納得できてしまう。


「話を戻そうか…ある日、私達はまた悪戯をしようと集まって考えていた時に、初めてタマモ殿とお会いしたのだ」

「あの時は、今は亡き先代の国王の頼みでお主らを探しとったからのぉ…。その後に色々と説教をしている途中にシー坊と呼ぶ様になった」

「あの説教以来、私達は悪戯をしたくなくなったのだ…、思い出すのも嫌な出来事でしたよ…」


当時を思い出したのか、シモン会長は僅かに足が震えていたので、トラウマになっている様だが、横でクスクス笑っている人物は一体何をしたのだろうか……。


「まぁ、私達の出会いはこんなものだ」


シモン会長は「つまらない話だっただろう」と言っていたが、そんな事は無いと思っている。



その後、タマモがシモン会長に昼食を食っていくか聴いていたが、少しでも早く味噌や醤油の試作をしたいとの事でそのまま帰ることになった。


俺たちは見送ろうとしたが、どこから聞いたのか宴会の準備をする様に進めてきたので、商談で消費した時間も考え、お言葉に甘える事にした。




「それでは私はここでお暇します。コウ君、王都に来た時は是非、我がコーンウェル商会をご贔屓に。それと次からは私の事は会長と呼ばなくても結構だよ」

「では、次からはシモンさんと呼ばせて貰います」

「一様、この辺りには盗賊などは出ないが、何があるかわからん、気をつけて帰るのじゃぞ」


タマモの言葉にシモンさんは「分かっていますとも」と答え、一度頭を下げた後、馬車が置いてある方に歩いて行った。




シモンさんを見送った後、ミーナとルナが帰ってきたので昼食を食べたら、俺は料理を、タマモはミーナの服の着付けと化粧を、ルナはみんなを呼びに行った。


宴会用の料理を準備し、だんだん外が暗くなってきた頃には村の人達が大体集まってきていた。


ミーナの方も準備が出来ているみたいだったので、そろそろ宴会を始めるとしよう。



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