表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
混魂転生  作者: 炒豆きな粉
第1章 出会い編
13/18

もう一人の妹

行進ちょっと遅れてすいません

俺達は途中で釣った魚を回収し、アルフレッド達を連れて村に帰ってきた。


社に向かう道中にアルフレッド達を珍しそうに見ていた村人達から幾つかの質問をされたので、何があったかを説明した。説明を聞いた村人達はアルフレッド等に労いの言葉をかけていたが、村人達の態度にアルフレッド達は驚いていた。


(まぁ、この村の人達は皆タマモに50余年前の事実を教えられているし、魔族に対して忌避感を持っていないからな)


その後、俺とタマモはアルフレッド達を連れて社に戻るとミーナが既に帰ってきており、アルフヘッド達と俺達とした様な自己紹介をお互いにして社の中に入ってもらい、居間に案内した。ユキカゼが居なかったのでミーナに聞くと、どうやら森で狩った獲物を狩りに同伴した者達と食べるらしい。


「俺は昼食を作るからミーナは風呂沸かしてきて」

「はーい、沸かし終わったら手伝うね」


そこでセリスティアさんから声が掛かった。


「あっ!昼食を作るのをお手伝いわね、流石にあそこまでしてくれたのに何もしないのは悪いからね」

「わかりました、台所はこっちです」

「少し待って、ルナはお父さんと一緒にいる?」

「ん…」


ルナは(村に戻る途中に愛称で呼んで欲しいと呼ばれた)コクリと頷くと、タマモと話をしているアルフレッドさんの方へ歩いて行った。どうやらルナは初対面の人には恥ずかしくなってセリスティアさんの後ろに隠れるらしいが、いい人だとわかった人にはルナ曰く普通に接するとのこと。


セリスティアさんを連れて台所に行って手を洗い、献立をどうするか、誰が担当するかを話し合い、野菜のスープと卵焼きと鳥のトマト煮を俺が、サラダと川魚の塩焼きをセリスティアさんが作る事になった。


「じゃあ、始めますか。野菜は朝に取れたのがそこにあります。それと塩はこっちで、皿はその棚の2段目に入ってます」

「わかったわ」


セリスティアさんに食材や皿の位置を確認してもらい、それぞれ自分の調理を始める。調理中、俺の手際の良さにセリスティアさんに何度か感心した眼差しを向けられた。

調理の途中に風呂を沸かし終わったミーナが来たので鳥のトマト煮を手伝ってもらい、それぞれの料理が完成したので居間に運ぶ。


「昼食が出来ましたよ〜」

「そうか、運ぶのを手伝おうかの」

「私も手伝いますね。おぉ、どれも美味そうだな」

「ん、美味しそう」


協力してちゃぶ台に料理を運び、全員座ったところで俺、タマモ、ミーナが「いただきます」と言うと、アルフレッドさん達が不思議そうに聞いてきた。


「あの、タマモ殿、その「いただきます」というのはなんでしょうか?」

「あぁ、知らなくて当然か、これはこの村では数年前から始めた食前の挨拶であってな、食材と作った者に感謝をする言葉じゃ」

「ついでに食後はご馳走様でしたと言いますよ」

「素晴らしい考えですね!では私達も見習って、いただきます」

「いただきます」

「…いただきます」


全員がいただきますを言った後に食事を始め、味の程はかなりの好評だった。特に俺の作った卵焼きは気に入って貰えた。


食後はタマモとミーナがセリスティアさんとルナを風呂に案内し、女性陣が風呂に入っている間、俺はアルフレッドさんと2人っきりになったので、例の冒険者達の件についた話を聞いた。


「アルフレッドさん達はどうしてあの冒険者達に襲われていたのですか?」

「あぁ、実はね……」


話によると、アルフレッドさん達は旅をしており、5年前にルナが産まれたのを機に安住の地を探していたらしい。しかしなかなか見つからずに月日が経ち、次はどこに行こうか話し合っていた時にあの冒険者達と出会ってしまったらしい。その冒険者達はアルフレッドさん達を奴隷にして売り払おうとしたらしく、その後は抵抗したが追い詰められ、そこに俺とタマモが来て、後は知っての通りである。


ついでに帰る途中に偶然落ちていたギルドカードを見れば、印がクロノス帝国のものだった為、帝国の人間で間違いなかった。


「この話はタマモ殿にも既に話していてね、タマモ殿からここに住まないかと誘われているんだよ」

「そうなのですか。良い案だと思いますが、アルフレッドさんはどうするんですか?」

「私個人としては、是非ここに住んでみたいと思っているし、セリスやルナも同じ気持ちだと思う。なので話し合った後に答えを出すよ」

「そうですか」


その後、お互いに談笑を交わしていると女性陣が風呂からあがって交代になり、アルフレッドさんと共に風呂に入って更に談笑を交わし、風呂から上がった後、アルフレッドさん達は話し合ってカンナギ村に住む事に決めたようだ。


今日は社に泊まる事になり、タマモはオルドさん達にこれから彼らが村に住む事になった事を伝えに行き、アルフレッドさんとセリスティアさんがそれに同行したので家には俺、ミーナ、ルナの3人しかいないので、3人が帰ってくるまで話し合っていた。


「そう言えばルナちゃんって適性属性はなんなの?」

「ん…、風と闇、ってお父さんが言ってた」


どうやらミーナは風呂場でルナと仲良くなったらしく、愛で呼んでいた。その調子で村の人達とも仲良くなってほしい。それにしても適性属性が二つもあるとは珍しい。


「へぇ〜二つもあるんだ!凄いねコウお兄ちゃん!」

「そうだな、ルナは凄いね」

「ん、ありがと。ミーナお姉ちゃんとコウお兄ちゃんは適性属性は何?」


俺とミーナの言葉に、頬を少し染めたルナは恥ずかしかったのか逆に質問してきた。するとその質問を聞いたミーナは「あ〜」と言い少し気まずそうに俺の方を見ていた。


「?、どうしたの?」


ルナはミーナの不自然な態度を見て、不思議そうに桃色の瞳を覗かせていた。


「えーとね、私は火属性が適性でね、その、コウお兄ちゃんは…」

「コウお兄ちゃんは?」

「俺は無属性だよ」

「え?…無…属性…?」


ミーナが言いにくそうなので、俺自身が伝える事にした。俺の言葉にルナは驚いて困惑した顔を向けてくるので、無属性が世間一般でどう思われているのか知っているらしい。


「ホントにコウお兄ちゃんは、…無属性なの?」

「そうだね、でもまぁ、普通の無属性ではないかな」

「?、どうゆうこと?」

「えっと、じゃあ今から【ストリング】で糸出すから、引っ張ってみて」


俺は【ストリング】で糸を出し、ルナに渡す。


「わかった…」


俺から渡された糸をルナは摘み引っ張ると、糸は千切れることなくビンッ!という音を立てて伸びていた。


「…切れない、何で?」

「まぁ、こうゆうこと。普通の【ストリング】は子供の力でも一気に引っ張ると切れるけど、この糸は〈魔鋼糸〉同等の強度がある」


〈魔鋼糸〉とは、鋼の様に硬い魔力の籠った糸のことで、ある魔獣の体内から作られる事で有名な希少価値が高い糸である。しかしこれではただ硬い糸を出しただけなので、今度は攻撃系の魔法を使う。


「他にも例えば、あの木の中心に【ショット】を撃ってみるから見ていて」

「…わかった」


ルナは頷き、俺が指差した木の中心を見たところで【ショット】を放った。放たれた【ショット】は寸分違わず木の中心を貫通し、後ろの木に当たって少し表面を削った所で止まった。ルナはその光景に驚いていた。


「だからまぁ、見ての通り俺は普通の無属性ではないんだ」

「……ん、わかった。コウお兄ちゃんはコウお兄ちゃん、普通の無属性の人達とは違う」


少し間をおいて答えたルナの顔にはもう困惑の表情はなく、尊敬の眼差しを向けられていたので、どうやら俺のことを信じてくれたらしい。


俺は信じてくれたルナの頭を撫でてあげた。


「うん、信じてくれてありがとうね、ルナ」

「あぅ」


いきなり俺に撫でられた事に顔を赤くしていたが、恥ずかしさと同時に気持ち良さそうな顔をにしていた。


「う〜、ルナちゃんばっかりズルい!」

「はは、じゃあミーナにもやってあげるね」


ミーナが拗ねて頬を膨らませていたので、ミーナの頭も撫でてあげると尻尾を振って喜んでいた。そうして2人を撫でていると、気配を感じて後ろを向くとユキカゼが帰って来た。


「お帰りユキカゼ」

「あっ!ユキカゼお帰りなさい!」

「!、狼!」


俺がユキカゼに声をかけると、ミーナもユキカゼに気付いた。しかし初めてユキカゼを見るルナは急いで俺の後ろに隠れた。


『ただいま帰りました。それとその子がセリスティア達が言っていたルナちゃんですね』

「え、狼が喋った?」


ユキカゼが喋った事にルナは驚いていたが、先程ユキカゼの言った事から既にアルフレッドさん達にも会っているみたいだ。


「ルナ、この狼はユキカゼって名前で、俺達の家族なんだ」

「そう…なの…?」

『えぇ、私はユキカゼといってコウ達の家族です。それにしても…ふふ、またコウに妹が出来るのかしら』


ユキカゼは俺の服の裾を摘んでいるルナを見てそう言うと、ミーナが「あっ!」と声をあげた。


「それだったら私にも妹が出来たって事だよね!」

『ふふふ、そうなりますね、そうなるとミーナもお姉さんですね』


ミーナは尻尾を揺らして喜び、ユキカゼはそんなミーナを見て微笑んで(いる様に見える)見ている。


「あぁ、そう言う事になるね」

「え、私…コウお兄ちゃんとミーナお姉ちゃんの…妹なの?でも、血は繋がってないし……」


ルナは話の流れについて行けず、混乱していた。


「血は繋がっていなくてもルナは私とコウお兄ちゃんの妹だよ!」

「そうだな、家族っていうのは血の繋がりだけじゃないからな、ルナは俺とミーナの妹だよ」

「あっ」


そして再び頭を撫でてあげると、ルナは顔と耳を赤く染めて俯き、しばらくすると急に俺とミーナに抱きついてきた。


「二人とも大好き!」

「ありがとう、俺も大好きだよ」

「ミーナもルナちゃんが大好きだよ!」


それから3人で少しのあいだ抱き合っていた。その間ユキカゼは娘を見る母親の様に『あらあら』と言っていた。


その後、タマモ達が帰ってきて、村を案内した後に晩飯を食べて人数分の布団を敷き、寝る事にした。


ついでにルナとミーナの願いで右から順にユキカゼ、タマモ、ミーナ、俺、ルナ、セリスティアさん、アルフレッドさんという様な並びで眠る事になった。ルナの寝顔は穏やかで、どんな夢を見てるのか笑っていた。


(また、家族が増えたな)


そんなことを思いながら、俺は眠りについた。





今回から基本コウ視点にする事に決めました。それと不定期更新には変わりありませんが、二週間に1回は更新します。


それではまた次の話で

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ