不器用さんのちょこれいと
【2月】
ねえ、知ってる?
2月14日はバレンタインデーなんだよ。
あうあうあうあうあうあうあ。死にそう。
チョコさ…頑張って作ったよ……。
望月くんのだけ特別ラッピングもしたし……。
でもさぁ、私手先不器用なんですよねーーー!!!!
どっかの誰かと違って!!!!!
何が言いたいかというとチョコ美味しいのかな!!!大丈夫かなーー!!!
「ひよー、夕飯できるよー。」
「あっ、あ、うん!」
今日は2月16日。
バレンタインは一昨日だったけどしょうがない、あの方は火曜と土曜にしか塾来ないから。
学校で渡すのは…ほら…クラスも違うし…恥ずかしいし……
いや違う!!焦らしプレイってやつ!!!!
も、もうさ…チョコは出来あがっちゃってるししょうがないけど…
メッセージカードの中身が思いつかないよーー!!!!
昨日からずっと調べてたのに…!!
告白はもちろんするつもりないけど、ほら、ちょっとドキッとさせる的なのは…したい……。
「ひよちゃーん、遅くなってごめん!」
「更紗ぁーー!」
更紗と私は塾の前で集まりました。さて何の為でしょう。
「じゃ、やってみて!」
「あっ、え、う、うん……。
……これ、チョコ。いつもありが…とう…。」
「……。」
「……。」
「ひよちゃん緊張しすぎやろー!!」
「い、いや、だって!!」
そう、これはチョコを渡す予行練習。
「ひよちゃんはな、緊張したり照れたりすると目見んくなるから、ちゃんと見いや!」
「が…頑張る。」
頷きを返してみたものの、緊張が治まらない。
っと…、もうこんな時間!!
「ごめん更紗、そろそろ行くわ!」
「うん!頑張って!!」
「更紗も、頑張れ!!」
互いに好きな人がいる。恋バナ友達。
今日が2人とも運命の日、かもね。
「……。」
何で今日に限って奥の自習スペース行っちゃうかなぁ望月慧!!
は、早く出てきてよ授業始まっちゃうじゃん!
先輩なんかと話さなくていいでしょ、私のところに来てよ!!
「日和ちゃん?」
「あっ、はい?」
望月くんをわざわざ身体を捻ってまで見ていたためか、先生に怪訝な目を向けられる。
「もしかして…チョコだったり?」
「ま、まぁそうですね。」
「授業始まってもちょっと渡すくらいやったら大丈夫やでー。」
「本当ですか?ありがとうございます…!」
ありがたいけど今週だけ何で担当の先生が違うんですか!私だけ!!
いつもの先生だったら望月くんと私が入れ替えだからこの休み時間中に渡せたのに…。
「起立してください、8時からの授業始めまーす。」
うわあああああこの挨拶終わってから来て!やっぱ今来ないで!!
挨拶をし終わった瞬間にガタンと音を立てて椅子に座る。
慌てて振りかえると望月くんがこっちに来ようと…あれ、いない…?
ガシッ。
反射的に、背後を通り過ぎようとした彼の手を掴んでいた。
い、今のすごい幽霊ってか変質者みたいになってたけど大丈夫か!?
いやそんなことよりチョコ、渡さねば…!
脇に置いておいたカバンのファスナーを開けると、可愛らしい袋が存在感を主張している。
渡すんだ私……えっ?
いつの間にか望月くんは私の右側に移動しており、自らもカバンを開けていた。
え?ん?逆チョコ?そういう感じ?
一瞬混乱したが数秒の沈黙の後、観念して袋を渡す。
「……いつも、ありがとう……!」
う、と言ったところでパッと顔を見る。
わわわわ、めっちゃこっち見てますね!?
真っ直ぐ此方を見る視線に、心臓が更に飛び跳ねた。
「…サンキュー。」
あ、待ってそれどう見てもその小さいカバンには入らな……。
「入んねえやこれ。」
照れたような顔をしつつ、「手で持つしかない。」と笑って言った。
「ご、ごめん、大きかったかな…?」
「別に。……ありがとうでした。」
去り際にペコリ、と会釈して、彼は私の視界から消えた。
わ、わっふぁ!!!!死ぬかと思いました!!!!!!
「授業してもええー?」
うわびっくりした!
「あ、あ、はい!すみません!!」
どうしよう吐き気のようなものが治まらない。
ずっと喉のあたりに何かが痞えてる。意外にメンタル弱いな私。
だけどなんで望月くんカバン開けたの?私がチョコ渡すって分かったの?
おっとまずい吐きそうだ。
恋をするのは多分これで3回目。
でも(義理に見せかけた)本命チョコを渡すのは初めて。
ちゃんとメッセージカードも添えるなんて、幼稚園の頃以来かもね。
相手は父親。
七瀬日和、きっと前進できたと思います!!
さあホワイトデーはあと一カ月後!




