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一緒に帰りませんか?  作者: 夕霧
4/8

模範解答を探そう

【11月】



 か、かかか可愛い…。寝とる……。

居眠りするの可愛すぎか死ねよ……。

寝息めちゃくちゃ聞こえてるけど大丈夫か君は居残り中だぞ!


「テスト範囲どこまで?」

「……は、はい!?」

「え。テスト範囲どこまでか分かる?」

隣に座っている先生が笑って言う。

「あ、は、はい!ひゃ、120ページまでです!」

「うん。じゃあ宿題の分のプリント刷ってくるね。

 それまでここやっといて。」

「は、はい。」

先生が立つ。

まだ起きない後ろの席の方。

「……。」

足を止める先生。


 あぁ、起こしちゃうんだ。

起きたら早く課題終わらせて帰っちゃうかもしれないのに。

一緒に帰りたいなあ。


「…おい、もちけい。」

起きない。

「もちけい、起きろ。」

起きない。

「こら、起きろ。」

起きた。

「お前何寝てるんや!」

私が見てる限り20分ほど前からお休みされておりました。

「…うん?」

可愛いぃぃぃぃぃぃ!!!!

いやーー!!!もう無理!!!ほんと可愛い!!!

ついでに一言、帰らないでーー!!!


「お前全然課題終わってないやんけ。」

!?

その言葉に思わず拳を握りしめそうになる。

早よやれよ、と呆れて先生が離れて行く。


 ちらっと振り返ると、目が合った。

どちらからともなくクスクスと笑い始める。

可愛いなこら。おい。

君は笑ってる場合じゃないけどな。

「…寝てた?」

「寝てた。」

「20分くらい寝てましたよね?」

「もっと寝たと思う。」

 嘘だろこいつ。

前から薄々思ってはいたが万年睡眠不足か。一緒だ。


「寝息めっちゃ聞こえてましたよ。」

「嘘。」

 軽くはにかむ姿がこの世のものとは思えないほど輝いていた。

口を開けて尚も何か言いかけた望月くんだったけど、足音が聞こえてきたので体を戻す。

私もノートに向かう。はい何も書いておりません。


「お前どこまで終わってん。」

「ここ。」

「お前何やっててん。」

「寝てた。」

「今日どうすんの。もうあと20分で授業終わるで。」

「え。帰る。」

 呆れるまでに罪悪感なしの受け答え。

だけど…帰るのか…!!やったあ…!!!


 俄然やる気が出てきた。やるぞぉぉぉぉおおお!!!


「えー、これで8時からの授業を終わります。ありがとうございました。」

「ありがとうございましたー。」


よっしゃ終わったあ!!!!


「もちけいお前帰るんか?」

「帰る。」

「その分今度やれよ。」

「…うん?」

「うん?ちゃうやろ。やれよ!」

 その後、微かに「やりません」と聞こえた。

やれよ。


「先生どこまで付いてくるの?」

「駐輪場出たとこまで。何か悪いことあるか?」

「いや何もないけど。」

 これ私と早く2人っきりになりたいとかいう意味だったら空飛べるほど嬉しい。

絶対違うけどな。まあ心の中で言うだけタダだし。


 自転車に鍵を付け、駐輪場を後にする。

後ろからもチャリチャリ…と音がするのが心地良い。

「痛っ。」

 心地良いとか褒めてやったのにぶつかるな。

「え?俺がぶつけたの自転車だけど?」

「…じ、自転車が痛い。」

「先生ー。この人自転車の気持ちになってるー。」

「いや、日和ちゃん優しいってことやろ。」

「ち、違います。」

軽い坂道になっている道を抜け、先生と別れる。


「じゃ、気を付けてなー。」

「はい。さようなら!」

「……。」


 ほえー。何喋っていいか分かんない。

そもそも自転車乗った方がいいのか押した方がいいのか分かんない。

望月くんは自転車乗ってるし私も乗った方が…。

「…押す?」

 びゃっ!?

「の、乗った方がいい?」

「どっちでも。」

「う、うん。お、押す…。」


 これ本当に模範解答は何なんだろう。

私は少しでも望月くんといたいから歩きたいって思ってるけど、

そんなこと思われてる訳ないしさ。

まぁ、優しい故の気遣いか。そう思っとこ。


 他愛もない話をしながら歩いていくと、

コンビニの前で望月くんが立ち止まった。

「あ、俺コンビニ寄るね。」

「うん!分かったー。」

「じゃ。」

「はーい!」


 割とあっさりと別れを告げられ私の脳内は混乱しまくる。

いやいやいや待て待て、これはもしかして私嫌われてるパティーンじゃね?

一緒に歩くの嫌でした??

早く帰りたかったですかそりゃあそうですよね!!

逆にここまでお話してくれてありがとうございました!!はははすみませんねぇ!!


 信号待ちをしながらほんの少しだけ溜め息をつく。


 そのとき。


ゴツン。自転車に何かがぶつかった。


「!?」

 慌てて振り返ると、全身真っ黒の人物が立っていた。

「いた。」

「も、望月くん!?」

 まっくろくろすけ少年は私の横に並び、コンビニの袋から何かを取りだした。

ガコンッ。

自転車のカゴに入る。

「な、何!?」

「なんか。金あったから買った。」

「え、え、いいよ!」

 突き戻そうとすると手でブロックされる。

「えっ、あっ…、ありがとう…!」

「うん。」

 前を向いたままの返事。

でもつっけんどんには感じられなかった。


 カゴに入っているのはチョコレートのお菓子。

ふと望月くんが持っている袋を見てみると、同じお菓子が入っていた。

!!!!!!!!

これ私食べたら同じものを口にすることになるんだよね!?

わあ感動!!!


「たかむーがさ、メロンパンの皮だけのやつ美味しいって言ってた。」

「へえー!食べたことないなー。」

「そういう訳で買ってくる。じゃあな。」

「あ、うん!バイバイ!ありがとう!!」

 あいつコンビニをハシゴしやがる。


 鍵を開け、家の駐輪所に入ったところで、喜びが爆発した。

どっひゃーーーー!!!!!

これもらってよかったんだよね?回答間違ってないよね?

と、というか…私だけに買ってくれたんだよね…?

わあああああああ頭破裂しそうーーーーー!!!!


「ただいま。」

「おかえり。あれ、それ何?」

「ジェントルマンがくれた。」

正面を向いたら真っ赤になってるであろう顔が見られるので

自分の部屋に行って言う。

「へぇー。バレンタイン欲しいっていうアピールか。」

「えー?そんなのってある?」

「そうだと思うけどね。」


 バレンタイン…。

バレンタイン。ゑ?

あ、あと3ヶ月くらい。

期待して待ってくれてるんだったらそれはそれで嬉しいけども。


 机の横の茶色い棚に手を伸ばし、一番高い所にそっと箱を置く。


 これは、どうしようもなく落ち込んだ日か、世界一嬉しい事があった日に食べる。

心の中で決意し、笑ってみた。


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