ラッキースケベは唐突に
色気は必要である。
エロがなければ、技術発達は10年遅れていたと思う。
生物の目的は子孫繁栄の為。
それは人類だって変わらないはずだ。
しかし、ただ機械的に子孫を作っていてもそれは無為、無意味なシステムであって心がない。ロボットと生命体の違いはきっと心にあるに違いない。無機質なシステムにエロいという欲望があるだけで、システムから感情を持つ生命の営みに変わるのだ!決してエロいことは悪くない。経済だって、文化だってエロが貢献している部分は少なくない。皆の者、エロを誇れ!!
眼前には、下着姿の少女。年は自分と同じくらいだろうか? 長い黒髪。幼さを残しつつも目鼻がくっきりしていて、もしかしたら日本人だけの血じゃないのかもしれない。薄いピンクの下着。体つきはすごく細くて逆にちゃんと食べているのか心配になる。どうやら、着替え途中だったようだ。アニメとかで見たことある光景だから、まさか自分にもこういうことが起きるとは思っていなかった。
とジロジロ見ていて気づく。この状況は完全にまずい。彼女の方から見たら、自分はただの・・・・・・不審者なのだから。
彼女は、顔を赤らめるどころか、少し青ざめた後に、強く意思を持った目で俺を睨み、飛びかかって来た。うん、素直に殴られよう。それで済んでくれるといいな。
「この! 女の敵!!!」
見事な回し蹴りを脳天に被弾したまま、俺は、姉なら阿呆と言うことを考えながら、沈んでいく。
【復讐屋】から電話では伝えにくい情報と言われ、直接会いましょうという段取りになった。
そしたら、【復讐屋】の住所を伝えられた。
「ご都合が良ければ13時に来て下さい。後、インターホンが壊れていますのでノックをして頂けると助かります。」
「はあ、わかりました。」
そう、応えて通話を切断した後に後悔した。
深入りするつもりはなかった。
今の俺の行動に意思はあったのだろうか?
畳の上に散らかっている漫画を一つ取り読む。
読む。読む。読む。読む。
・・・・・・さっぱり内容が入らない。俺はスマホに先ほど聞いた住所を打ち込んだ。俺の家の最寄り駅から2駅離れたところに住んでいるみたいだ。アプリ上の地図を見ながら行き方を確認する。
「そうか、姉さんの友達なんだもんな。近くに住んでいてもおかしくないか。」
次の日、俺は【復讐屋】が住んでいる住所に向かった。
電車は使わずに家から自転車に乗って向かったのが、俺の判断ミスだった。
雨が降って来たのだ。途中でコンビニに寄ってビニール傘片手に自転車を漕ぐ。13時ぎりぎりになりそうだった。素直に電話して、少し遅刻しますと言って、1回家に帰れば良かった。
13時5分に目的の場所へ到着した。洋風な建物でしゃれているなとその時、思った。実際はアパートでここの2階の一室が【復讐屋】さんの部屋らしい。
少し、遅れていることもあって俺は走って階段に登る。
目的の部屋まで来て扉をノックする。
「空いているよ〜」
女性の声が中から聞こえてくる。
電話越しより声が幼いな〜と感じながら扉を開けると、着替え途中の少女の姿を目の当たりにしたのだった。
声が聞こえる。
「もう!! お客さんが来るなら先に言ってよ! お姉ちゃん。」
「ごめんなさいね。いるかちゃんがうちに来るとは思っていなくて。お客様にお出しするお茶菓子を買いに行ってたら、急に降り出してしまって、帰るのが遅くなってしまったのよ。」
「お姉ちゃん、占い師じゃん。占ってよ。それくらい!! ああ、もうどうしよう。しかも、このお客様が噂のつーくんだったなんて。おもいっきり蹴っちゃったよ。」
「一緒に謝りましょう。」
「いや、確認を怠った俺が悪いんで謝る必要ないです。」
姉妹の会話に無礼ながら、割り込む。
「起きた? 蹴っちゃってごめんよ。つーくん。痛くない?」
先ほどの下着姿の少女は俺の顔を心配そうに見つめる。
「遅刻しちゃってごめんなさい。私が全て悪いのよ。わざわざ来て頂いたのに遅刻するなんて、本当に申し訳ない。」
電話で聞いた声。姉さんの友達はこっちか。黒髪で妹より髪が短い。顔立ちは、姉妹とても似ているが姉の方がとても大人っぽい魅力を匂わせていて少し緊張した。
「いえ、自分も急な雨で遅刻していたんで、おあいこっすよ。」
俺は起き上がる。ソファーの上で寝ていたようだ。
失礼がない程度で部屋を見渡す。落ち着きながらも、整理整頓された部屋だ。俺の姉みたいに極端に不要な物を置いていないわけでもない。会話の中で、占い師という単語が聞こえた。恐らく、仕事道具だろう。天秤と水晶とかが部屋に置いてあるのを見つけた。
「えっと、それじゃあ、自己紹介するね。私は青野いるかで青野くじらの実妹だよ。君のお姉さんのつかささんとお姉ちゃんと私で【復讐屋】をやっています。君はつーくんで合ってる?」
「ああ」
何故、俺のあだ名を知っているのかという疑問と同時に察する。この少女、青野いるかはまだ、俺の姉さんが亡くなったことを知らない。姉の青野くじらを見ると、更に申し訳なさそうな顔をしていたのだった。俺は目配せで(心配しないでください。姉の知り合いに訃報を伝えることが俺の仕事の一部ですから)と伝えたかったが、目だけではそんな情報は伝えられるわけなく、不器用に目をパチパチさせるだけだった。
「えっと、青野さん」
「いるかでいいよ。」
「確かに姉妹とも同じ名前ですもんね。いるかさん。」
「そんな堅苦しくなくていいんだよ。つーくん。これから一緒に【復讐屋】をやる仲間じゃないか!」
「・・・えっと、いるかちゃん。もしかして、俺は蹴られたショックかな。記憶が整合しないんだけど。」
「大変、何か冷やすものがないかな。アイスクリームならあるけど。どこまで思い出せる?」
「いるかちゃんが薄いピンクのブラとパンツを来ていたことなら。」
「それは忘れて!!!」
この時、初めて可愛らしく顔を赤らめる少女の姿を見ることができたのだ。
恥ずかしそうにしかし、満面な笑顔で笑う少女の姿を見て、ラッキースケベは悪くないと思う俺だった。