表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
復讐屋  作者: 未半人前
1/8

カップラーメンは姉より優先

 人は一人では生きていくことはできない。コンビニエンスストアにて販売されているカップラーメン一つを例にとっても、想像に及ばない手間と苦労がある。今、啜っている麺だって元は小麦であり、小麦農家が丹精込めて育て上げたはずなのだ。小麦から小麦粉に変えて、麺を作る。実際は工場で大量生産されているはずなのだが、俺はその過程を知らない。物流だって、発砲スチロールの器だってどうなっているのか知らない。

 ここで一番重要な問題は、俺はその過程を知らずにお湯を入れて3分待つだけで空腹を凌げるということなのだ。たかが、100円のカップラーメン。それでも、関わっている人は想像を絶する。お湯だって、電気やらガスやらポッドやらヤカンがないと作れないではないか。人は人と知らずにつながっている。


「ラーメン食べている時に阿呆なこと考えすぎでしょう。」

俺の高尚な考えに口を挟む姉。視線は手に持っているスマホ画面に注がれている。

「今日は、帰りが早いじゃん。仕事クビになった?」

「クビになりたい。辞めたい。働きたくない! つーくんはいいなぁ。阿呆なことを考えていれば生きていけるのだから。あんたが働きだしたらしっかり扶養してよ!」

「何で、姉さんを扶養しなくちゃならないんだよ。」

「ユーアーマイブラザー。 アンダースタン?」

「よく、就職できたな。そんな英語力で。」

「こう見えても警部補でーす。」

「日本の警察は死んだ!!」

俺の姉は、警察官だ。と言っても、テレビでよく見る犯人を捉える刑事というものはではない。どちらかというと事務職で警察庁に務めているそうなのだ。警視庁と警察庁があることを姉が就職する時に初めて知った。

 警察庁は国が運営する行政機関で、警視庁は東京都を管轄する警察のトップ。捜査に関しては警視庁あるいは各都道府県警がメインとなり、警察庁はその裏で政治的なことをしている認識だ。政治的なことって何だか知らないが。


 具体的に姉がどのような業務をしているのか知らない。機密等の理由で家族にも話すことがタブーになっているともネット上の記事で知った。ちゃらんぽらんの姉だが、意外にも真面目なのだ。


「つーくん!! ちょっとマッサージして!」

「・・・食い終わったらな。」

いつもと変わらない日常。スマホからテレビへと視線の矛先を変えた姉に俺は、ため息をこぼすのであった。


・・・・・・

姉が亡くなったのはそれから、ちょうど1週間後だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ