朝ごはん
目が覚めると私は自分のベッドで寝ていなかった。
まあ、想像の通り先生が犯人だ。
今や馴れ始めている先生のキングサイズのベッド。
横で添い寝しながら私の顔を見ている先生。
「勝手に自分を運ぶのは止めて下さい。」
「こっちのベッドの方が疲れもとれるだろ?」
「………じゃあ、先生は遠慮して下さい。」
「俺のベッドなのに?」
矛盾している。
だが、寝起きで頭が上手く働かない。
「もう少し寝てても良いよ。」
「………じゃあ、お言葉に甘えて………」
私が目を閉じると先生が笑った気がした。
しかも次の瞬間には先生の手が私の体を抱き締めてきた。
「離して。」
「寝てしまうなら良いじゃないか?」
「うーん………イヤイヤイヤ良くないから!先生、離して。」
「道君がキスしてくれたら離す。」
私は働かない頭で少し悩むと先生の頬っぺにキスをした。
先生がフリーズしたのでゴソゴソと先生の腕の中から抜け出した。
私は自分の部屋に戻ると着替えを始めた。
暫くすると先生がドアを叩き始めた。
「道君!道君!」
「なんですか?」
「道君は俺の事好きになってきているって事で良いのかな?」
私は着替えを済ませるとドアを開けた。
それと同時に先生に抱き締められた。
「先生の事は嫌いじゃ無いです………正直ウザいけど………」
「では、押し倒して良いな!」
「今、急激に嫌いになりました。離せド変態。」
先生はヨロヨロと私から離れた。
「嫌わないで………」
「ハイハイ。朝御飯にしましょう。」
「道君……最近俺の扱いに馴れすぎじゃないか?」
「扱いやすい先生が好きです。」
「それ、喜んで良いのかな?」
「半分ぐらい喜んだらどうですか?」
「半分ってなに?」
私は思わずクスクスと笑ってしまった。
先生はそんな私を見つめて言った。
「半分は解らないけど道君のその笑顔が見れたのは嬉しい。」
先生の言葉は私を赤面させるには十分すぎた。
「道君?」
「負けた。先生がイケメンなの忘れてた!くそ~。」
「道君は可愛いな~。」
ここ最近の私の朝はこんな感じになってきている。
ただ、この日はちょっと違くて朝御飯を食べていると来客があった。
宰相様だ。
「おはようストラーダにライガイヤ。」
「おはようございます宰相様。」
「おはよう、そして出ていけ。」
先生………
「飯時に悪いな。」
「宰相様も食べますか?」
「あるのか?」
「自分の作った物で良ければ。」
「じゃあ、いただこうか。」
先生の嫌そうな顔は無視した。
この部屋にはミニキッチンがあって私はそこで料理をするのが好きだ!
だからこそ毎朝朝ごはんを作らせてもらっている。
今朝は簡単なフレンチトーストとコーンポタージュだった。
同じものを宰相様の前に置くと宰相は美味しそうにそれを食べ始めた。
「ごはん食べに来たんじゃないんだろ?何しに来た?」
「ストラーダ君にこの前陛下に献上するケーキを選んでもらったんだが好評でな!また、頼もうと思って来た。」
「………デートの誘いとは………」
「デートとは男女でするもんだろ?」
「………」
先生はフレンチトーストを口一杯に頬張って見せた。
「ストラーダ、旨いなこれ。」
「フレンチトーストです。簡単なんですよ。」
「ライガイヤが嫌になったら俺が面倒見てやるから俺の所に来い。」
え?そんなにフレンチトーストが気に入ったのか?
先生が滅茶苦茶怖い顔になってますよ。
「………大丈夫で~す。」
「ストラーダ君は俺のだ。」
「先生のじゃないですけど、自分は先生の授業が好きなので先生の多少の変態具合は我慢できるので今のところ先生の側に居ます。」
「ストラーダ君、好きだ!」
「今、そう言うの良いです。」
先生をとりあえず凹ませて私はフフフって笑った。
「ああ、ストラーダ君は可愛い。」
笑ったせいで先生にしみじみされた。
「………ストラーダに関しては解る気がするな。」
「は?」
「何か、黒髪黒目なのがなつかない黒猫みたいな感じがする。」
宰相様の言葉に私はフリーズした。
「ライガイヤ、ストラーダを貸せ。」
「嫌に決まってんだろ?」
先生の口がひくひくしている。
宰相様が訳の解らない事を言うから………
「じゃあ、先生も一緒に行きましょう?」
「え~。」
「先生の靴が見たいと思っていたんです。」
「へ?俺の?」
「はい。先生の靴が結構ボロボロなのが気になってたんですよ!自分が選んであげます。」
先生は驚いた顔だ。
「お金が無いので先生が出して下さいね。」
「あ、はい。」
先生は苦笑いを浮かべた。
「それでも嬉しいよ。」
「当たり前です!………なんてね。」
「可愛い。」
私は先生が抱き締めようとするのを、さらりと交わして宰相様に言った。
「先生が一緒で良ければつきあいますよ。」
「………ああ、頼む。」
こうして私と先生と宰相様は街まで買い物に行くことになった。
最初に行ったのはこの前行った紳士のお店だった。
「ガンフ、今日はストラーダ君とデートなんだ!頼むよ。」
「かしこまりました………ライガイヤ様、髪の毛はいかがなさいますか?」
先生はニコッと笑って私の頭に手をのせると詠唱を始めた。
それと同時に一気に髪の毛が伸びて床についてしまった。
「先生………やりすぎ。」
「切れば良いんだよ。髪の毛はガンフの奥さんがやってくれる。」
のれんのように髪の毛を押し退けて紳士の顔を見ると嬉しそうに微笑まれた。
「妻は髪結いが趣味ですので喜びます。服は選んでお持ちいたします。もうそろそろ娘のモアも帰って来るので。」
「夜勤か?」
「はい。ストラーダ様にお会いしてからモアの話の中心はストラーダ様一色と言った感じなので、帰ってきてストラーダ様が居ると解れば喜ぶでしょう。」
モアさん好き!
私はヘニャっと笑った。
そのあと、電話のような機械で紳士が連絡をするとほどなくして茶色の髪の毛を頭の上の方で巻いた4~50代ぐらいの美人さんがやって来た。
「ストラちゃんってのは?」
それって多分私か?
私は手を上げて見せた。
「毛玉?」
「中に居ます。」
「………面白い!おいで!可愛くしてあげる!………じゃあねダーリン、この子借りるわね。」
「よろしく。」
紳士と美人さんの甘いアイコンタクトにキャー!ってなった。
何だか羨ましいような恥ずかしいようなオーラが出ている。
そんなオーラのあとに美人さんは微笑みを浮かべて私の腕を掴むと歩きだしたのだった。
部屋が繋がっていてストーカー様ならこんな感じになると思います。