買い物
鼻水が止まらん!風邪引いた………
「せ、先生………」
「うん。」
「気がすんだら離して下さい。」
「うん。」
只今………先生に抱き締められています。
何だか離してくれる気がしません。
離さないだろうな~ストーカー様だもんな~。
「先生、あの、………何で自分は男の子に間違われたんでしょうか?」
「ムードとかは無視だな。」
「自分、ムードとか解んないっす!」
先生はしぶしぶ言った。
勿論離してはくれていない。
「………多分君のそのショートボブの髪の毛のせいだろう。この国では女は滅多な事がない限り髪は切らない。だからだろう。」
「滅多な事?」
「髪切るイコール女やめるって感じ。」
「ああ………」
じゃあ、私は女やめてるって事か!
「俺は好きだぞ。道君のショートヘアー………魔法でのばせるから、ロングになりたかったらしてやる。」
先生はロングも似合うだろうな!って言って笑った。
なんなんだその幸せそうな笑顔は………
ついつい先生に見とれていると先生の顔が近づいて来た。
私は一気にしゃがんで先生の腕の中から脱出。
不満そうな顔で私を見ている先生。
仕方ないと思わない?
「正当防衛です!」
「………認めよう。」
先生は苦笑いを浮かべていた。
話は代わるが先生が私に用意してくれた部屋はこじんまりとした6畳ぐらいの部屋でシングルベットも机もあった。
その隣りには結構広い20畳ぐらいか?もっとある部屋。
キングサイズのベットやちょっとしたバーカウンターみたいなものまである豪華な部屋は先生の部屋だ。
しかも、私の部屋と繋がっている。
もう、怖いよ~。
「………襲わないで下さいね!絶対先生の事嫌いになりますから………」
「大丈夫!我慢する。嫌われたくない。」
我慢か~我慢がきく人ってストーカーになるのか?
盗撮とか盗聴って我慢が出来ない証拠じゃないの?
考えたら負けだ!
先生を信じよう‼
じゃないと死にたくなりそうだ!
先生は私の頭を優しく撫でてくれた。
「道君、必要な物があれば言ってくれ。一緒に買いに行こう。」
私は自分の部屋を見渡して言った。
「男の子のふりするなら服が欲しいかも。先生が買ってくれるって言いましたよね?」
「良いぞ!買いに行こう。」
先生はやっぱり嬉しそうで私は首をかしげた。
「先生、何がそんなに嬉しいんですか?」
「?………デートだな~って思ってさ!」
「!………それがデートなら、自分は初デートですよ。」
「‼………なんでも買ってやる‼」
先生は更に嬉しそうだ。
こうして私達は街に出ることになった。
連れていかれたのは路地裏の裏の方にあるボロボロな外観の店。
中に入るとびっくりするほど綺麗で高級感のある店で驚いた。
「ライガイヤ様お久しぶりにございます。」
出てきたのは滅茶滅茶渋いお爺さん。
ロマンスグレーだ!ってちょっとウキウキした。
「ガンフ彼女を男に見えるようにしてやってくれ!」
お爺さんは私を見ると目を大きく見開いた。
「ライガイヤ様、こちらは………」
「ストラーダ君だ。女だと言うことは他言無用で頼む。」
「………かしこまりました。では、こちらへ。」
お爺さんは私の採寸をしながら言った。
「お辛い目にあわれましたな!私に出来ることがあれば、何なりとお申し付けください。」
辛い目?ストーカーにロックオンからの異世界拉致って事なら今、現在進行形でヤバタン、ツラタンですよ?
「貴女のような美しい女性は、時に酷い目にあってしまいます………私は同じ男として恥ずかしい。」
………この人なに言ってんの?
私は首をかしげた。
「あの、え~と。」
「良いんですよ。無理に話さなくて………私は貴女の味方ですから!」
味方になってくれるなら良いか。
「ありがとうございます。助かります。」
お爺さんはニッコリ笑ってくれた。
私もつられて笑った。
採寸が終わるとお爺さんは、仮に近いサイズの服を何枚か出してくれた。
「女性に戻りたくなったらドレスをご用意いたしますので言って下さいね。」
「あ、ありがとうございます。」
私は出された服を着ると先生のもとに急いだ‼
「先生!こちらの紳士が自分の事を美しい女性だって言ってくれました!社交辞令でも嬉しかったです‼」
先生はニコッと笑うと言った。
「俺はずっとストラーダ君が可愛くて美しい女性だと思ってるよ。」
ストーカーするぐらいだからそう思ってるだけだよね?
他にストーカーしたいぐらい仲の良い女性が出来たらそっちに乗り換えるんじゃないの?
私の疑った顔が気に入らなかったようで先生にほっぺを摘ままれた。
「しぇ、しぇんしぇえ!いはいでふ。」
「俺の愛を疑っただろ?」
私が頷くと思いっきり引っ張られて千切れるかと思った。
漸くして離してくれた時は私のほっぺたは真っ赤になっていたと思う。
「酷いよ先生。」
「俺が好きなのはストラーダ君だけだよ。」
「うっ………了解です。」
先生は私の頭を撫でながら笑顔を作った。
無駄に格好いいんだよこの人………
「先生が本気だと信じます。」
「よろしい。」
お爺さんはゆっくり先生に近づいて少しだけ耳打ちした。
先生が驚いた顔をした。
「違うぞ!ガンフ、ストラーダ君の名誉のためにもそれだけは否定する‼」
「では、何故髪の毛をお切りに?」
私の髪の毛の話のようだ。
「自分の髪の毛が短いのは施設………孤児院での方針からです。」
「!そんな………辛い目にあわれましたな‼」
お爺さんは目に涙を浮かべていた。
この世界において、女性が髪の毛を切るって本当に酷いことなんだ。
どんどんお爺さんに申し訳ない気持ちになってきた。
「ガンフの見立てはやはりセンスが良い。」
「おそれいります。………ライガイヤ様、提案なのですが私の娘のモアは城でメイドをしています。きっとストラーダ様の力になってくれると思うのですが。」
「………そうだな。モアはストラーダ君を気に入りそうだな。」
「モアさんですか?」
「美人だぞ!」
「ヒャッホー!美人な友達欲しいです!」
「ストラーダ君、リアクション間違ってるぞ。」
呆れた顔の先生も格好良くて負けた気がしたけど、女性の友達が出来るかも知れないと思うだけで先生の美しさはどうでも良い気がしてくるから不思議だとその時思った。
私が風邪、娘がトビヒと良いことないのです。
頑張りたいです!