騎士団へ行こう
サンドイッチを大量に作ってみた。
先生は朝から王宮魔法使い様につかまり執務室に缶詰めだ。
先生が食べるだろうと思って執務室に向かうと、国王様に食事に誘われて行くことになったと抱き締められた。
「先生もたまには私と離れてお食事も良いんじゃないですか?」
「その道君の作ってくれたお弁当はどうすんの?」
「………ウルさんに持っていこうかな?」
「何でウルガルド?」
「………キスマークが男の人に及ぼす影響についてを聞きに?」
先生は不満そうに口を尖らせて見せた。
「俺が教えるのに………」
「………意識してない人に聞きたいんです。」
「?………それは、俺を意識してるってこと?」
「………意識してるのかを確かめにウルさんの意見が聞きたいんですが………」
「道君!」
「だから、ウルさんの所に行ってきます!」
私の言葉に先生は少し悩んでから嫌そうに言った。
「今日は我慢する。」
「ありがとうございます。国王様と、どんな料理を食べたか教えてくださいね。」
「………うん。」
私は先生笑顔を向けてから騎士団のある方に向かって歩き出した。
騎士団の練習場に始めて来た。
騎士さん達が私を見てざわざわしているのに気がついたのは1人の騎士さんが近付いて来た時だった。
「あの………ヤバイ可愛い。」
?
私は今日モアさんの家族が選んでくれた服を着ているからガッツリ女の子スタイルだ。
スカートはウルさんが選んでくれた物だったりする。
取り敢えずお礼を言っておけば良いのか?
「あ、ありがとうございます。」
私が苦笑いを返すと、4人の騎士さんに囲まれた。
「君可愛いね!誰かの彼女?」
「いいえ。」
一人の騎士さんの質問に答えると4人の騎士さんが同時にガッツポーズした。
怖い。
「お前ら何やってんだ‼まだ休憩じゃ無いぞ!」
突然の怒鳴り声に4人の騎士さん達がビクッと体を震わせた。
「ヤバイ、隊長だ!」
4人は一目散に声の主のもとに走っていった。
「可愛い子が居るからってナンパしてんじゃねーよ。」
隊長と呼ばれた男の人は40代前半ぐらいの男の人で暫く私を見ると近寄ってきて言った。
「美しいお嬢さん!自分はこの隊の隊長を勤めさせていただいています。ランドールと言います。以後お見知りおきを。」
「隊長が抜け駆けしようとしてる‼」
「ナンパは隊長がしてんでしょうが!」
「ずるい‼」
「黙れ、くそ野郎共!羨ましかったら隊長になってみやがれ!」
隊長さん達の攻防に私はクスクス笑ってしまった。
「「「「「可愛い‼」」」」」
私が思わず口を両手で押さえると生暖かい顔をされた。
「隊長!俺にだけ事務処理させるのをやめていただけませんか?」
そこにあらわれたのはウルさんだった。
「こんな所で油を売ってないで事務仕事をこなしてください。俺に飯を食わさないつもりですか?」
冷たい淡々とした口調で書類片手に隊長さんに詰め寄るウルさんに私は手を上げて見せた。
「ウルさん!お昼まだなら一緒にどうですか?」
ウルさんはそこで漸く私に気がついたようだった。
「ストラ?どうした?」
「サンドイッチを作ったのですが、先生の都合が悪くなりましてこの大量なサンドイッチを一人で処理することになったので協力要請に来ました。」
ウルさんは少し驚いた顔をして言った。
「そうか………それは俺で良いのか?」
「先生にもウルさんの所に行ってきます!って言って来たので大丈夫だと思います‼」
ウルさんは柔らかく笑うと言った。
「なら、いただこうか。」
「助かります!」
私達が笑い会うと回りに居た騎士さんと隊長さんがウルさんにひきつった顔で言った。
「「「「「………知り合い?」」」」」
「この子に手を出したら、家の家族全員を敵にすると思ってください。ああ、それとライガイヤ殿も。」
ウルさんは最後に私の頭を乱暴に撫でた。
「ライガイヤ殿は本気で殺しに来ると思う。」
「ウルさん、洒落にならないので止めて下さい。」
真っ青になる皆さんを見ながら苦笑いが浮かぶ。
「良かったら皆さん一緒にサンドイッチはいかがですか?沢山ありますから。」
「勿体ないし、隊長に関して言えば書類仕事が山の用にあるから誘わなくて良いぞ。」
「嫌だ‼も~計算したくない‼頭が数字でぐちゃぐちゃだ!」
「だからって人に計算書類ばっかりよこして来ないで下さい。」
「ウルガルド以外の奴なんて計算平気で間違えるからウルガルドにしか回せないだろ?」
「隊長がやる仕事です。俺は手伝ってるだけなので拒否権がありますから。ストラ、飯にしようか?」
私はウルさんの手にある書類を見つめると言った。
「全部足すだけなら128,655ですね。」
「へ?」
「自分、算盤二級計算機三級………暗算得意ですよ。え~と先生に頼めば計算機用意してくれるかな?」
ウルさん達は驚いた顔だ。
「ストラ、言いにくいんだが………手伝ってもらって良いか?」
「勿論!ウルさんに聞きたいこともあったので自分の話も聞いていただけるなら喜んで。」
「ああ、解った。」
こうして私はウルさんに連れられて隊長室に向かった。
隊長室の机の上には五センチほどの厚みの書類の束があった。
「これで全部ですか?」
「沢山あるだろ?」
隊長さんの言葉に私は苦笑いを浮かべて言った。
「先生の処理する書類はこれの50倍ぐらいありますよ。頑張って下さいよ。」
「ご、50倍?死ねる。」
「これぐらいならすぐに終わるので先にサンドイッチ食べてて良いですよ。」
私はウルさんに案内された机につくとエアー算盤で計算した。
サラサラと計算して導き出した答えを記入していく。
「ストラは凄いな。」
「私はマダマダですよ。自分が姉のように思っていた同じ孤児院に居たお姉ちゃんは美人で頭が良くて武術にたけててスタイル抜群で自慢のお姉ちゃんって感じで、彼女を見ちゃうと自分はマダマダだと思うわけです。」
「騎士団にスカウトしたいな。」
隊長さんが目を輝かせて言った言葉に私は苦笑いを浮かべて言った。
「彼女は今探偵事務所にお勤めしています。」
「たんてい?」
「浮気調査したり、迷子のペット探したりするんです。」
「何でも屋か?」
「そうですね。」
隊長さんに笑顔を向けて私は書類の束を手渡した。
「終わりました。」
「え?もう?」
「はい。」
計算が終わりサンドイッチを食べ始めるとウルさんが紅茶を淹れてくれた。
全員分の紅茶が行き渡るとウルさんはサンドイッチ片手に言った。
「で、ストラの聞きたいことって?」
「ああ、忘れてました!キスマークが男性に及ぼす影響について………世間一般からしてキスマークはエロいんでしょうか?」
「凄い質問がきたな………」
「先生とそんな話をすると酷いセクハラをうけるのでウルさんなら理性的に答えてくれるかと思って。」
ウルさん以外の方々は赤くなったり青くなったりしている。
「常識的に言えばエロいと思う。そう言う事をする相手がいてそう言う事をしているのだと容易に想像がつくからだと推測できる。」
「そう言う事ですか………」
私はキスマーク云々の流れは忘れようと心に決めた。
「それ、モアに聞くんじゃダメだったのか?」
「はっ!」
私はビックリして息を飲んだ。
言われてみればモアさんに聞く方が楽だった!
「昨日ウルさんと話してて話しやすかったものだから、うっかりしてました!」
何故だかウルさんにクスクス笑われた。
そんなに面白い事を言っただろうか?
「副隊長が笑ってる……」
「明日雨が降るぞ………」
「いやいや雪だろ?」
「嵐が来るに違いない‼」
騎士さん達が口々に言うとウルさんは笑うのを止めて騎士さん達を睨み付けた。
「午後の武術強化担当は俺だ。」
「「「「!」」」」
「思い出したか?死ぬまで鍛えてやるからかくごしとけよ。」
「「「「ヒィー!」」」」
私はそんなやり取りを見ながらクスクス笑うのだった。
ウルさんは冷静な解釈のできる人。




