先生、貴方は何者ですか?
就活の失敗を人生最大のピンチ!なんて言っていた自分は平和だったな~って今、思ってるんですよ。
今?今ね、私……空を飛んでるんですよ!
いや、実際には落ちてる?
ああ、落ちてるよ、スカイダイビングさながらだよ!パラシュートなんてつけてないよ先生!死ぬの?ねぇ先生?
私は走馬灯を見始めた。
ストーカー先生が嫌がる事は絶対しないって言ったのを信じてついてきたのは科学準備室。
科学準備室のドアを開けたら空の上だったんですよ!
我が目を疑った私の背中をストーカー先生が蹴り、落っこちて今ですよ。
地面近付いて来てるよ先生。
「道君!」
見れば先生!
嫌、えっと先生が乗っているのは何ですか?
見た事無いですよ、そんなでかい爬虫類………絵本の中のドラゴンみたい。
先生が私の腕をつかんで私を真っ赤な爬虫類の上に乗せます。
「せ、先生、この………このこは何ですか?」
「ドラゴンだよ。火竜。」
「ワオ!ファンタジー………ヤバイ。意味解んない。」
「俺の母国、君からしたら異世界のリューガリューグって国だよ。俺の名前はライガイヤ・グリバーだ。」
見れば先生の髪の毛は濃い藍色に薄紫の瞳になっていた。
綺麗だ。
私が思わず見とれていると先生がニコッと笑った。
「貪っちゃうぞ!」
「嫌~!」
「冗談だよ!今は我慢する!」
今はって何?深く考えたら負けだよね?多分。
「今日から君の名前はストラーダだよ。君の道って名前は俺が二人っきりの時に沢山呼んでやるから我慢してくれ。」
「本当の名前を知られると何か不味いんですか?」
「さすが道君。君の頭の良さは惚れ惚れするよ。だから、俺以外に名前を知られちゃ駄目だ。良いね。」
「はい。先生。」
「よろしい。では城に行こうか。」
先生?し、シロってなに?
まさか、城ですか?
まさか先生、王子様的な何かなんですか?
……考えるの止めよう。
私には理解の範疇を越えているのだから考えるのは止めよう!
よくよく思えばこのドラゴンさん私を乗せてくれて命を救ってくれた恩人………恩竜だ!ありがたい限りだ!
「ドラゴンさん、乗せてくれてありがとうございます。」
私が小さく呟くとドラゴンさんはガウーと鳴いた。
「おや、コイツ道君を気に入ったみたいだ。」
「へ?そうなの?」
「ムカつくな~。この子は俺のだからな。」
「嫌、先生、先生のってのはどうかと思います。」
「………拉致は完了したから次は監禁か?」
「自分は先生のものです!許されるなら自由が多少なりとも欲しいであります!」
「冗談だよ!道君。監禁は最終手段だからね。」
「………冗談ですよね~。」
先生の美しい顔が私の緊張感をあまり刺激しないのが悪いのかも知れない。
危機感を全然感じないんだよね先生のお顔。
でも、言ってることはヤバすぎる。
私の危機管理能力頑張れ!
そんなことを考えているうちに眼下にネズミが支配する夢の国の象徴に似たお城が姿を表した。
うわ~格好いい~って思っているうちにドラゴンさんは城の中庭あたりに降り立った。
私は先生に抱えられて地面に降りた。
先生が私を下ろしてくれるとドラゴンさんは私の体に顔をすり寄せてきた。
私がおっかなびっくりドラゴンさんを撫で撫でするとドラゴンさんは気持ち良さそうに目を細めて可愛かった。
「ストラーダ君。俺が嫉妬てソイツを殺してしまう前に止めてこっちにおいで。」
「う、はい!先生!ドラゴンさんありがとうございました‼」
私がドラゴンさんにそう言って頭を下げると、ドラゴンさんは大きく羽ばたいて飛び去ってしまった。
「さあ、おいでストラーダ君。」
「はい!先生。」
私が先生に近寄ると、城の中から慌てたように3人のイケメンが出てきた。
「ライガイヤ!3年も何処をほっつき歩いてやがった!」
「ライガイヤ様~仕事してください‼僕にライガイヤ様の仕事なんて出来るわけがないんですから!助けて下さい。」
「漸く帰って来たな!そのガキは何だ?」
私が驚いているのをみて先生が言った。
「ストラーダ君、偉そうなのがこの国の国王23歳気が弱そうなやつが王宮魔法使い20歳残りが宰相26歳だ。」
「え?先生、名前教えない方向?名前呼んだら駄目な感じ?それとも監禁するから名前なんか覚えなくて良いって感じ?」
「監禁しないって!………まだ。」
先生、小さくまだって言いましたよね?私には聞こえましたよ。
「その子供は何だ?」
国王様とやらが私を指差しましたよ!
先生が私を指差した指先を掴み捻り上げているのは幻か?その人国王様なんだよね?
「いででででででで………」
「せ、先生!止めて止めて‼指が偉いことになってるから止めたげて‼」
「人様に指を指したらこうなるって教えないと、馬鹿は同じことを繰り返す。指導だ。」
「先生!口で言って解らないようだったらやるが基本だよ!まだ、口で注意!駄目、メ、離しなさい。」
私が言うと先生はしぶしぶ手をはなした。
「しっかりした男の子ですね!僕の名前はビルフールと言います!12.3歳ぐらいですか?」
「………先生?」
男の子だと思われてるんですけど、何で?
私は産まれてこのかた、男の子に間違われた記憶が無いぐらい女子なはず。
胸は控え目だがBはある。
それなのに男の子に間違われているのは何で?
「………髪が短いからか?」
先生の小さな呟きが聞こえた。
「彼はストラーダ君だ、俺のだからちょっかいかけるな!以上。」
ああ、男の子を押し通すんですね。了解です。
「ストラーダと言います。何をすれば良いか解りませんが宜しくお願いします。」
私は深々と頭を下げた。
「教育もちゃんとされてるみたいだな。俺は宰相ウィンシャスだ。ストラーダ、宜しく。」
「俺はこの国の国王のレオヘルケスだ!宜しくしてやっても良いぞ!」
「やっぱり指へし折れば良かったんじゃないか?」
「先生、指折れる瞬間とか想像しただけで鳥肌なんだけど!ゲロったら先生が片付けてくれんの?」
先生は爽やか笑顔で親指を立てて居た。
「マジで嫌だ!ゲロなんか吐かないから!」
「片付けるのに。」
「いろいろ考えたくない事考えちゃった!怖い怖い怖い怖い。」
「大丈夫だよ!ストラーダ君。」
「な、何が大丈夫ですかね?」
先生がニッコリ笑顔を作る。
その笑顔、凄く好きだ。
「って、笑って誤魔化す気だ。」
「違うんだけどな!君ならちゃんと心配する。」
「し、心配は誰にでもしてくださいよ‼」
「………そうだね~。」
「自分は仕事頑張って誰にでも優しい先生が好きなんですよ?だから、進路相談したんじゃないですか?」
暫くの沈黙に首を傾げると先生は困ったように笑った。
「もっかい言ってくれるか?」
「は?」
「優しい先生が?」
「………」
自分が何を言ったのか理解して顔が熱くなる。
「い、言わないから!」
「デレからのツン。」
「先生、少し黙って‼」
「ストラーダ君、顔真っ赤!可愛い。」
「黙れ。」
私は顔を両手で覆った。
「可愛いな~。」
「だ~ま~れ~!」
指の隙間から先生を見ると嬉しそうにクスクス笑っていた。
ムカつく。
私は思いっきり先生に蹴りを入れた。
「ストラーダ君、いつからそんな攻撃的になった?」
「いや、つい。あの、ごめんなさい!先生大丈夫?」
私の蹴りは先生の脇腹にクリティカルヒットしてしまった。
苦しそうな先生に慌てて近寄ると先生は私の肩に正面から頭を乗せてきた。
「監禁。」
「う~わん!先生ごめんなさい!もうしないから!」
「後で抱き締めても良い?」
「………わ、解ったよ~!」
先生はスッと何ら攻撃なんて受けていないように私に向き直り言った。
「約束だ。」
「だ、騙された‼」
「さあ、君の部屋に案内しよう!勿論俺の隣だ。」
「………了解です。って、え?城に住むんですか?ってか、先生は何者ですか?」
「ああ、魔導神って呼ばれてる。」
「まどうしん?」
「魔法が神なみに使えるって人って事だ。早くついておいで。」
先生、それはスルーして良い話ですか?
違う気がするんですが………あと、イケメン三人無視で良いんですか?
「ストラーダ君早く来なさい‼」
「は、はい、あの、国王様に宰相様に王宮魔法使い様失礼します。」
私は三人に頭を下げると先生を追いかけたのだった。
先生が変態すぎました………