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女の子になろう

モアさんのお家につくとアンナさんと若い男の人が話をしていた。


「ウルガルド?珍しい。」

「モアさん、あの人誰ですか?」

「あれ?私の弟。30歳彼女なし………出来る気配すらなし。」


モアさんはうんざりした顔でそう呟いた。

がっちり系で格好良さそうな人なのに彼女なしなのか?

モアさんが知らないだけじゃ無いのか?


「ダーリン!モアにストラちゃんお帰りなさい。」


アンナさんは私達に気が付くと走って私のところまで来て私を抱き締めた。


「怖い思いをしたわね‼迎えに行かなくてご免なさいね‼」

「アンナさんのせいじゃなくて、先生に送ってもらわなかった自分が悪いのです!だからアンナさんは気にしなくて大丈夫です。」


私の言葉にアンナさんは今にも泣きそうな顔をしてさらに激しくギュウギュウ私を抱き締めた。


「お袋、その少年が潰れる。」

「ウルは煩い‼それに、ストラちゃんは女の子なんだからね‼」


アンナさんは私を離すと息子の前につきだした。


「それは失礼した。自分は王立騎士団副団長ウルガルドと言う。宜しくな。」


ウルガルドさんは私の頭を乱暴に撫でた。

藍色の髪の毛に藍色の瞳の落ち着いた雰囲気の大人だと思った。


「あ、自分は………魔導神ライガイヤ先生の弟子のストラーダと言います!よろしくお願いします。」

「………………あの魔導神殿の?あの方は人間嫌いで有名だが………大丈夫なのか?」

「………大丈夫か大丈夫じゃないかと言われると解りません………」

「そうなのか?騎士団に来るなら紹介状を書くが?」

「あ、騎士団とか無理なんで、それに………先生が自分を手離すとは思えないので大丈夫です。」

「………」


私の言葉にウルガルドさんが黙るとモアさんがクスクス笑って言った。


「あんたが心配しなくてもライガイヤ様はストラちゃんを溺愛してるから大丈夫よ。」

「溺愛?」

「そうよ!溺愛。ストラちゃんのためなら国を滅ぼすのだって厭わない感じに溺愛。」

「モアさん!先生、本気でしそうで怖いんで止めて下さい。」


私が慌てて言うとガンフさんとアンナさんにクスクス笑われた。

真剣に言ってるのに!


「そう言えばストラちゃんいくつだっけ?」

「ああ、18です。」

「立派な淑女じゃない!12歳位かと思ってた………」

「背がちっちゃいからですかね?154センチなんで………」


思わず遠い目をしてしまった。

不意にそんな私の頭にウルガルドさんの手がまたも乗った。

優しく頭を撫でられてくすぐったい気持ちになった。


「うん、頑張れ!」

「あ、はい!ありがとうございます!」


私はニコニコと笑って返した。


「ストラちゃん嬉しそう。」

「………実は自分が居た孤児院では自分が一番年上で………お姉ちゃんみたいな人は居たんですけどお兄ちゃんみたいな人は居なくて……なんか、ウルガルドさんはお兄ちゃんっぽいな~って……すみません。」


その場に居た全員に生暖かい顔をされた。

居たたまれない。

言うんじゃなかった。


「ウルガルドがお兄ちゃんなら私はお姉ちゃんね!」

「図々しい。お母さんの間違いだろ?」

「ウルガルド、首しめて殺すわよ?」

「………」


私はオロオロしながら言った。


「あ、あの、モアさんはお姉ちゃんでもお母さんでもなくて………親友なんで………駄目ですか?」

「可愛さ神レベル。ストラちゃんは私の永遠の親友よ!」

「ありがとうございます‼」


私達はニコニコと笑いあった。


「さあ、こんな所で立ち話もなんだから中に入りましょ!ストラちゃんを可愛くしないと!」


アンナさんに肩をポンポンされた。


「お、お手柔らかにお願いします。」


私の怯えた声にガンフさんとアンナさんとモアさんが不適な笑みを浮かべたのは気のせいであって欲しかった。







着せ替え人形って大変だ。

昔遊んでいた人形ごめん。

今、君の気持ちを噛み締めているよ!


「モアさん!そろそろ先生の夕飯のしたくしないとなんで帰りたいです‼」

「泊まってかないの?」


もう疲れた。

帰りたいです。


「お泊まりはまた今度にします!先生と話たいこともあるので。」

「………わかったわ………」


モアさんは残念そうにそう言った。

帰り支度をして帰ろうとするとウルガルドさんが送ってくれると言った。


「ご迷惑じゃないですか?」

「俺も城に帰るからついでだ。それにストラは俺の妹なんだろ?遠慮するな。」

「あ、ありがとうございます‼」


ウルガルドさんは柔らかく笑い私の頭を乱暴に撫でた。

この人は頭を撫でるのがデホルトか?


「ストラちゃん、ウルガルドは昔から妹か弟が欲しかったみたいだから付き合ってあげて。」


モアさんが呆れたように言った。

私はクスクス笑って言った。


「自分もお兄ちゃん欲しかったので嬉しいです。」

「そうか………そろそろ行くか?」

「はい。」


私はウルガルドさんに連れられて城にむかった。



帰り道ウルガルドさんは私の先生に対する愚痴を沢山聞いてくれた。

私は何だかスッキリした気持ちで楽しかった。


「ストラはライガイヤ殿が大好きなんだな。」

「へ?話聞いてました?」

「聞いてたよ。ストラはそんな変質的な事されてもライガイヤ殿の所に帰るんだろ?行動は嫌かも知れないが、根本的な所では好きなんだろ?」


私は暫く黙ると言った。


「先生に言ったら駄目ですよ‼付け上がって余計なセクハラを受けるはめになる未来が見えるので。」

「ああ、俺とストラの秘密だ。」

「はい。ウルガルドさんと私の秘密です。」

「ウルで良い。」

「はい。ウルさん。」


ウルさんは私の頭を乱暴に撫でた。

頭がぐしゃぐしゃだけど何だか嬉しかった。




ウルさんは私を先生の執務室まで送ってくれた。


「道君お帰り!そっちのはガンフの息子だったか?」

「ガンフの息子で、王立騎士団副団長をしていますウルガルドと言います。」

「道君浮気?」

「先生と私はお付き合いしていないので浮気は可笑しいって解んないんですか?それにウルさんは私の理想のお兄ちゃんなだけです!」


ウルさんは私の頭を乱暴に撫でた。


「ライガイヤ殿、俺は彼女を妹だと思っています。ですので泣かしたら殺します。しかし、彼女を幸せにするなら貴方を応援するつもりです。」


私が驚いてウルさんを見ると柔らかな笑顔を向けられた。


「………ウルガルド、君の名前は覚えておくよ。道君おいで。」


先生が両手を広げて見せたで私は先生に抱き付く素振りで近寄り先生の肩を掴むと先生のお腹に膝をねじ込んだ。


「………」

「ああ、つい、条件反射です。すみません。」

「痛すぎるんだけど………」

「すみません。ああ、ウルさんありがとうございました‼」


私が何事も無かったようにウルさんにお礼を言うとウルさんは苦笑いを浮かべて言った。


「少しはライガイヤ殿を大事にするんだぞ。」

「………少しは前向きに考えてみます。」

「うん。頑張れ。」

「はい。」


私は笑顔でウルさんを見送った。


「ウルガルドの事大好きみたいでムカツク。」

「恋愛対象外だからですかね?好きですよ。先生の次ぐらいに。」


先生は驚いた顔をしていった。


「好きって言葉に喜んでいいのか?それとも恋愛対象外って言われたのを悲しんだら良いのか?どっち?」

「お好きにどうぞ。」


私は先生にニコニコと笑顔を向けたのだった。


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