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ケンカ

軽いR15仕様になってます。


「道君は酷い女だと思う。」

「藪から棒になんですか?」

「道君が匂い付きベッドだって言ったから向こうのベッドで寝たのに………無味無臭なんだけど?」


私は笑顔で言った。


「ああ~昨日の朝、除菌出来ないかな~って思って魔法をかけてみたんですよ!成功ですね。ってか無味って………除菌魔法またしないと………」

「酷い‼」


先生はそう言って私を抱きしめた。

昨日の夜、疲れをとるために先生のベッドを奪い取った私は珍しく先生よりも先に目が覚めた。

先生が起きてきて最初に言ったのが冒頭の台詞だ。

私がそんなに簡単に自分を切り売りするような事をするわけがない。

私は仕方なく先生の背中に手を回した。


「ごめんなさい。」


私の言葉に先生は暫く黙ると私を抱え上げてキングサイズのベッドに押し倒した。


「………最近の道君は俺に甘くないかい?」 


そう言うと先生は私の首筋に舌を這わせた。

驚いて先生の体を力いっぱい押したが、びくともしない。

更に先生は私のYシャツのボタンを外し胸元にキスしはじめた。

一気に浮かんだ殺意に私は先生の顎に全力パンチをねじ込んだ。

私の上から転がり落ちる先生に私は叫んだ。


「調子に乗んな!次やったら一生口聞いてやんないから!」

「……………………………………。」


油断も隙もあったもんじゃない。

思わず私の大好きな先生の顔を殴っちゃったじゃんよ~‼

先生も何だか悲しそうだ。


「………嫌いになりたくないから、止めて。」

「………うん………ごめん。」


先生は乱暴に自分の頭をかきむしっている。


「本当にごめん。」


私は先生の頭を優しく撫でた。

ベッドの下から私を見上げる形の先生がハッとした顔で私を見た。


「先生、顔殴ってごめんなさい。」

「俺が悪かったのに、何で謝る?」

「原因私だし、先生が悲しそうな顔するから。」

「あまり俺を甘やかさないでくれ………道君、好きだよ。」

「知ってます。」


先生は苦笑いを浮かべて言った。


「スッゲー良い眺め。」

「?」

「道君、胸でかくなった?」


見ればYシャツの前が全開でサラシを巻く前の、ブラジャー丸出しの状況だった。

ブラジャーしてて良かった。

………ってなんか違くない?

私はゆっくりYシャツのボタンを閉めた。

顔は真っ赤になっていたと思う。


「忘れてください。」

「無理だよ。好きな女のあられもない姿だからね。」

「忘れてよ~‼」

「道君好きだよ。」

「バカバカバカ!」


先生は何時もの先生に戻ったみたいだった。





暫く先生の顔は見たくない。

私はミニキッチンに引きこもりケーキやらクッキーやらを焼きまくった。

先生は甘いものが嫌いだからかなり厳しいだろう。

私は出来上がったケーキやらクッキーやらをバスケットに詰め込むと部屋を後にした。

目的地は宰相様の執務室だ。

宰相様は甘いものが大好きみたいだからきっと引き取ってくれるだろう。



執務室につくとドアをノックする。

すぐに入るように言われて私は執務室に足を踏み入れた。

執務室には宰相様以外に国王様と王宮魔法使い様が居た。

大事な話の最中じゃ無かったら良いんだけど。

私が顔を出すと三人は驚いた顔をした。


「お忙しいところスミマセン。宰相様に差し入れを………」

「………ストラーダか。入ってこい………お前、髪の毛昨日のままなのか?」


よくよく考えたら服は脱いだが髪の毛は何もしていない。

長い髪の毛だった事が無かったら勿体無くて切れなかったんだった。


「切るの忘れてました!」

「………また女装させられるからじゃないのか?」


髪の毛が長かったから先生は暴走したのだろうか?


「違います!………ってか身の危険を感じるからさっさと切っちゃおうと思ってます。」

「そうか………」


宰相様?何で残念そうなんですか?


「ストラーダ君なんですか?女の子みたいです。」


王宮魔法使い様が驚いた顔で私に近寄ってきた。

私は後ろに後ずさった。


「ビルフール、無闇に近寄るな!ストラーダが怯えているだろ。」

「え?あ、ごめんね。」


王宮魔法使い様に気をとられているうちに真横に国王様が居て驚いた。


「可愛いなお前!」

「あ、ありがとうございます?」

「………ライガイヤがいけない気持ちになるのが解る気がするな。」


国王様の言葉に今朝の強引な先生を思い出してしまって赤面してしまったのは許してほしい。


「ストラーダ君、大丈夫ですか?熱があるんじゃないですか?」


王宮魔法使い様は私を心配して、私の額に手を乗せて熱がないかを調べはじめた。

私は手を乗せて居る王宮魔法使い様を見上げた。

そんな私と目があうと、今度は王宮魔法使い様の顔が赤くなった。

私の恥ずかしいのがうつってしまったと思った。


「す、ストラーダ君………上目使いが可愛すぎるんだけど………」

「はぁ?」


私が首を傾げると王宮魔法使い様は私から離れて部屋の隅っこで踞った。

ど、どう言う事だろうか?


「ストラーダ、これはどこで手に入れた?」


そんな王宮魔法使い様をガン無視して宰相様がいつの間にか私が持ってきたクッキーを食べながら聞いてきた。

いつの間に?


「それは、自分が作ったんです………先生への嫌がらせに………」

「はあ?」

「先生甘いものが嫌いだから………部屋中甘い匂いに体調悪くなっちゃえば良いと思って‼」 


その場に居た三人はキョトンとした後ケラケラと笑った。


「ストラーダ、こんなに旨いもの作れるなら俺の小姓にしてやる。俺のところに来い。」


宰相様の言葉に私の中で、それは嫌だと思っているもう1人の自分が居るのが解った。


「え、遠慮します。あ、あの、そろそろ失礼します。」


私がそう言って逃げ出そうとした時、私の手は国王様に捕まれていた。

な、何で?

私が混乱していると国王様はニッコリと笑った。


「俺のところに来い。」

「嫌です!失礼します!」


来るんじゃなかった!

私は逃げ出そうとしたが、国王様は手を離してくれなかった。

その時だった。

私は背後からギュッと抱き締められた。

先生だ。

私は少なからずホッとした。

にもかかわらず、次の瞬間首筋に電気のような痛みがはしった。


「あっ………んっ」


変な声が出てしまった。


「この子は俺のだ。触るな。」

「せ、先生、なにしたの?」

「俺のってキスマークをつけてみた。」

「………自分、今朝なんて言いましたっけ?」

「………」


先生の体がビクッと震えたのが解った。


「ご、ごめん。」

「………」

「うっ。本気で喋らないつもりか?」


先生の抱き締めている力が強くなっていく。


「………喋らないなら、やっぱり抱く。」


先生に耳元で色っぽく言われて私は叫んだ。


「止めろ~耳元で脅さないで下さい‼喋るから!ちゃんと喋るから!」

「残念。」


私は先生の腕の中で、もがいた。

だけど先生は離れてくれない、しかもまだ国王様が腕を掴んだままだ。

離してくれ。

私が国王様の方を見ると彼は先生にむかって言った。


「ストラーダが可哀想だろ?少し俺が預かる。」

「ダメに決まってんだろ?殺すぞ。」


先生は私から離れると、国王様の私を掴んでいる手を掴むと捻り上げた。


「いたたたたた。」

「先生………」

「俺からこの子を奪おうとする奴は殺すよ。」

「先生………」


私は先生の背中に抱き付いた。


「先生、その人国王様だから!」

「………」

「手を離して、メ!」


先生はゆっくり手を離した。


「ストラーダ君はコイツが好きとかじゃ無いだろうね?」

「面倒くさ!」

「ストラーダ君……」

「………自分の一番好きな顔してるのは先生ですよ。」


私は呆れた様に言った。

先生は心配そうな声で言った。


「………顔だけ………」

「先生、日頃のおこない考えろ。」

「………」

「ストーカーって知る前の先生は大好きでしたよ。」

「………」


私は仕方なく言った。


「今の先生も嫌いじゃないです。」


先生は強引に前を向くと私を抱きしめた。


「嫌わないでくれ。」

「………解りました。今朝の事は忘れるから二度としないって誓って下さい。」

「無理!」


コイツ反省してないな。


「反省してないじゃんか。」

「反省はしてる。でも、今朝の君は色っぽかったから。」

「反省してない。ってか忘れろ!」

「忘れられない。今朝の君の…」

「お願いだから忘れてよ~‼」


私は羞恥心から顔が真っ赤だったと思う。

先生はそれだけで嬉しそうに笑った。

回りの三人の顔は怖くて見れない。

滅茶苦茶怖い。


「俺達はイチャイチャするから帰る。じゃあな。」

「イチャイチャしないよ‼先せi……」


私が抗議する前に先生は詠唱をはじめ、私達は先生の執務室に瞬間移動させられた。


「先生、あらぬ誤解がうまれてしまった気がします。」

「大丈夫大丈夫。事実しか言ってない。」

「………まあ、そうなんですけどね。」


先生は私を幸せそうな顔で見詰めてからニコッと笑った。

………あれ?私………先生が好きかも?

先生の笑顔にキュンとする。


「道君?」

「いや、イケメンだな~って思っ………」


先生は私の言葉を遮るようにキスをしてきた。

なにがおきたのか解らずにフリーズする私。

先生は唇が離れるとハッとして青くなった。


「ご、ごめん!つい………本当にごめん。」


私はまだ、頭が理解できていない。


「道君………怒ってる?」

「………わ、解りません。」

「怒らないの?」

「解りません。」


先生は調子に乗ってまたキスしてこようとした。

今度は確実に鼻の骨が折れる勢いでグーパンチを顔面にねじ込んだ。

顔面をおさえてうずくまる先生を見ながら私はそこはかとなく浮かんだ好きかも知れないと言う思考を忘却の彼方に追いやったのだった。

道ちゃんの恋心が動き出しました。

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