第七話 そしてハヤトは戦士になった
次の技能は【冒険者技能】よ。
これは簡単にいえば、職業としての技能ね。【ファイター】とか【ビショップ】【メイジ】【ナイト】【アーチャー】【シーフ】などがあるわ。
気をつけてほしいのは、【冒険者技能】は冒険に関わる職業の習熟度を表しているのであって、その人の生業ではないの。
たとえばさっきの王女の【冒険者技能】は「【プリンセス】Lv.21」「【メイジ】Lv.19」に設定されているわ。ちなみに一般人の平均値は基礎ステータスと同じ「10」よ。
「さっきの王女、めちゃくちゃレベル高いんだな。全然そんなふうに見えなかったんだけど……。で、俺の設定値は?」
ハヤトの【冒険者技能】は、これよ。
【ファイター】Lv.1000
【メイジ】Lv.1000
「うおっ! すげえ高い! これはたしかにチートだな!」
でしょ。これだけ高ければ、もう剣の腕はぶっちぎりで大陸一、どんな魔法も使いたい放題ね。
「……あれ。でもこれって『腕力』とか『知力』が高くないと意味ないんじゃねえの」
あはは。するどーい♪
で、次は【戦闘技能】なんだけど
「まてまて!! 笑いながらスルーすんな! このままだと、この技能は宝の持ちぐされってことかよ?」
そうね。剣を持ち上げる力もないのに必殺技はたくさん知ってるとか、初心者向けの魔法ですら威力が怪しいのに呪文だけは全部知ってるとか、そんな頭でっかちのシミュレーション人間になるわね。
「そんなエロ孔明みたいなのはいやだ……。じ、じゃあ、さっきのステータス、やっぱり『体力』じゃなくて『知力:5000』にするわ」
エロ孔明?
「――いや、何でもない。聞かなかったことにしてくれ」
どういう意味かしら。
「……全知全能の神なんだから、当然知ってるだろ」
――ああ、そういうこと。スマホでググったら出てきたわ。
「全知全能設定はどこいった!」
もうゲームだってバレちゃったんだからいいわよ。なによ全知全能とか。バカじゃない?
「お前が言い出したんだろうがあああ!」
ところで知力でいい? 腕力じゃなくて?
「…………。
剣の腕だと戦闘だけにしか使えないだろ。魔法なら戦闘以外にもいろいろつぶしが利きそうだし」
まあそうね。魔法だと呪文さえ唱えれば、いろんな状況で使えるから。知力8のくせによく頭が回るわね。
「悪意のこもったほめ言葉だな! あ、そうだ。魔法を使うのに『呪文』ってやっぱ唱えなきゃいけないんだよな。『風の精霊シルフィよ、我に力を貸し、敵を討つ刃となれ』とかいうの」
ハヤト、そういう言葉がさらっと出てくるあたり、あなたも立派なラノベマニアね。
「いちいち揚げ足とるな! ラノベ好きは否定しないけど。たまたま最近読んだ小説にそんなフレーズがあったんだよ。――で、魔法を使うには呪文が必要なんだろ。俺、呪文なんて全然知らないんだけど」
…………あっ。
「え?」
えーと、そうね。呪文ね。たしかに必要ね。そうそう。そうだった。
「……なんであわててんの」
気のせいよ。気のせい。
「…………レオニラ。まさかとは思うけど、もしかしてお前、呪文を設定するの忘れたとかいうんじゃないだろうな」
あはははは。
「あははははじゃねえ! え、じゃあ魔法は使えねえってことか!?」
大丈夫。ファイターのハヤトもカッコいいわよ♪
「本当に大丈夫かよこのゲーム。すげー不安になってきた……」
というわけで「腕力:5000」ね。設定しておくわ。
「なんか釈然としない……」