第八話 コマンダー・ハヤト
次は【戦闘技能】ね。
これは戦いに直結する能力のこと。具体的に扱う武器にどれほど習熟しているかを示すものよ。たとえば【斧:Lv.12】とか、【弓:Lv.13】とか。
「で、俺のは?」
ハヤトの【戦闘技能】はすごいわよ。全て習熟レベルが1000だから。あ、ちなみにこれも一般人の平均は10ね。ハヤトは通常の人間の百倍よ。
「何に習熟してるんだ?」
たくさんあるわよ。この通り。
【片手剣】Lv.1000
【拳銃】Lv.1000
【二挺拳銃】Lv.1000
【サブマシンガン】Lv.1000
【グレネードランチャー】Lv.1000
【戦闘ヘリ操縦】Lv.1000
「…………えー、レオニラさん」
なんでしょう。
「これ、実際にこの世界で使えるの、ほとんどないよな?」
片手剣が使えるでしょ。
「片手剣だけだろ! ほかの武器はこの世界の文明レベルじゃ到底無理だろうが! ってか、なんでこんな役に立たない技能ばっか設定したんだよ!!」
これくらいあった方がカッコいいかなと思って。
「カッコよさで選ぶんじゃねええええ! ちゃんと斧とか弓とか盾とかも設定しろよおおおお!!」
ハヤト。あまり怒ると血圧が上昇して体に悪いわよ。
「お前のせいだろうがああああ!!」
で、最後に【特殊技能】ね。
これは、言ってみれば「必殺技」みたいなものよ。魔王を倒すために必ず役に立つ技。
「はあ、そうですか」
あれ、どうしたのハヤト。テンション急降下してるわよ。
「全然期待してないので。何でもいいから早く説明してください」
なによ、元気出してよ。この【特殊技能】は、ちゃんとチートだから。
ハヤトには、三つの特殊技能があるわ。まず一つ目が「イーグルアイ」。
これは、敵の弱点――装甲の薄い部分を見抜いて、そこを狙い撃ちするというもの。この技を使えば、攻撃力が一時的に三倍になるのよ。
「三倍、か。けっこうデカいな。使用制限とかは?」
ないわ。ただしこれを使うには一ターン「ため」をつくらないといけないけど。
あ、言い忘れてたけど、このゲームの戦闘シーンはターン制よ。こっちの攻撃が終わったら、次は敵の攻撃、っていうふうに、攻撃ターンと防御ターンが交互にくるの。
「まあ、それなら使えるか……。二回攻撃するより、二ターンかけてこれを使ったほうがダメージは大きいってことだよな」
それに弱点を集中的に狙うから、うまくいけば敵は次のターン、痛みのあまり動けなくなるの。そうすれば、二回、三回と連続攻撃も可能になるわ。
「お。そう聞くとなんだかすごく使えそうな気がしてきたな。で、あとの特殊能力は?」
再びヤル気になってきたようね。次の二つはもっとすごいから。
二つ目の特殊技能は「ホワイトナイト」よ。
「へえ、なんだかすごそうだな。効果は?」
敵対的買収を仕掛けられた会社を、買収者に対抗して友好的に買収または合併する、経営者には欠かせない技能よ。
「はいきたー。期待した俺が間違いでしたー。意味わかりませーん」
この世界で会社を起こして経営者になれば、必ず役に立つはずよ。
「魔王を倒すのに会社起こすとか、そんな冒険聞いたことねえよ!」
大丈夫。戦闘にも応用できるはずだから。たぶん。
「どうやって応用すんだよ!」
で、最後が「デスマーチ」よ。
「なんだか不吉な名前だけど……どうせ役に立たないんだろ」
アンデッド系のモンスターと、不吉な音楽に合わせて一緒に楽しく踊れる能力よ。おもしろそうでしょ。
「……もう『イーグルアイ』だけでいいわ」
あらそう? これもいちおう使えるのよ。すごく強力なのに、もったいないわね。
以上で勇者ハヤトのパラメーターに関する説明は終わりよ。質問は?
「……質問というより山積みの疑問があるけど、もういいです」




