【Hiding】6 澪と霧島の救出劇
「唯ちゃんが戻らないのよ」
澪の母、美緒は学校から戻ってきた澪と霧島に告げた。
母子家庭の霧島は事実上澪の家で育っているといっていい。
学校の勉強も霧島が教えている。
「じゃかいもとカレー粉を買いにいって? 」「ええ」
「唯さんのことだからチョウチョでも追っかけて忘れているんじゃないの? 」
澪よ。どこのグラスランナーだ。
明るい御鏡家には常に趣味の良い音楽が流れている。
その雰囲気に合わないほど霧島の顔が見る見る青くなる。
「何かあったな」「何かって。唯さんに? 」
ああ。霧島はそう言うと携帯電話を取り出す。
「おばさん。失礼」
そう呟くと真への直通電話番号を打つ。
「ええ。カレーの素材を買いにいって以来の消息が不明とのことです。はい。はい。
知るかボケ。お前の娘だろうが」後半は半ばキレ気味に携帯電話を切ると呆然としている御鏡母子に苦笑い。
「お前、携帯二個持ってたのか」
ツッコミどころ違う。澪。
「行くぞ。澪」「へ? 何処に? 」
「おばさんは警察とおじさんに連絡を」
霧島は言い放った。「唯を助けに行くんだよ」
霧島は澪にスマフォを投げた。「つかえっ! 」
「あれ? これ未発売のヤツじゃないの? 」
澪は頭をひねったが、深いことは考えないことにした。
ちなみに二人とも17歳。免許は持っていない。バイクにも乗れない。自転車とスケートボードしか足はない。
「この娘を見たヤツはいないか。事件に巻き込まれた可能性が高い」
唯の画像をつけて霧島と澪がツイートすると、フォロワーの三名が反応した。
桃衣美玖 @Momoi-Miku
友達が事件に巻き込まれたようです。この子を知りませんか」 http://twitpic.com/******
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桜美 @O-mi
近くにいるみたい。車で迎えに行くわ。
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「くるま? 」「くるま? 」
二人の自転車とスケートボードをこぐ足が止まった。澪のスケボーは二輪しかないタイプだ。
危うく事故になるところだった。
「女子高生じゃなかったっけ? 桜美さん」「だったよねぇ? 」
美和。美和。美和ッ?!
「○時に唯と思しき女性が倒れた少女を抱えて救出を依頼」
「その少女達が二台の黒い車に乗って何処かに向かったのを確認」
「倒れた少女の顔」「助け起こしていた少女の顔は唯に酷似」
「車の車種」「ナンバープレート」「位置情報」
「さ、さすがトップアイドル」「持つべきものは友達だね……」
美幸と義樹、美玖の呼びかけで次々と寄せられる目撃情報とそのまとめを見ながら二人は畏怖の念を禁じえない。
畏怖のあまり呆然と立ちつくす二人の前に急ブレーキで止まった車があった。
「乗ってッ! 」
二人を止めた赤いオープンカーには妙齢の美女。歳の程は20代中ほどだが。
「桜美さん?! 」「そうよっ!!!! 」
「桜美さん」「逢坂美和。美和って呼んでいいわよ」
凄い勢いで走るオープンカーに乗りながら、澪は空気の読めない言葉を放った。
「桜美さんって女子高生じゃなかったんですか」「ぶっ 」
キキキーーーーーーーーーーーーーーーーー。
「事故るところじゃないっ 変な事言わないでよっ! 私は32歳よッ」
「え。十六歳って」霧島も余計なことを言う。
自分が過去にブログに書いていたことを思い出して一気に顔を赤らめる美和。
「可愛いな」思わず高校生二人でもそう思ってしまう。
二人からみたら立派なババアなのに。三十路の皆さんごめんなさい。
「すいません。鯖よんでました。ごめんなさいごめんなさい」
真っ赤な顔で運転しながら頭を下げまくる美和。このままでは事故確実である。
「イ、イエ、オ若イデスシ」「ソウソウ。桜美サン キレイキレイ」
事故への恐怖のあまり思わずカタコトで話す二人。
実際、ブログに乗っていたショットは女子高生で通じる。顔隠しているし。
「アレは廃棄だな」「うむ」
美和に聞こえないように二人は呟く。何に使う画像かは聞くな。
霧島はクラウドにて以前に保存した美和の限定ショットを画像削除にした。
遥未来 @Harukanaru-cosmos
おけ。会社の連中に連絡して空から探させることにした。
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「空から? 」「空から??! 」
旧友の良くわからない発言に頭をひねらせる澪と霧島。
「……」「……」「なに。あれ」
オープンカーに乗った三人は空に浮かんでいく銀色の飛行船を呆然と眺めた。
遥未来 @Harukanaru-cosmos
おれの会社の飛行船。航空写真と分析は得意だぜ。
真のおっちゃんといっしょに俺も行くわ。
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「ありえねぇ」「ありえないわ」「おかしいだろ。アイツ」
とりあえず、何故貧乏女子高生が飛行船を持っているのか。
思いのほか大騒ぎになっていく事態に三人はあきれ返っていた。
警察車両が凄い勢いで通り過ぎていくし。
一方。唯と潤子は。
「インスタントラーメンって美味しいですね」「……」
「なんで、こんなヤツまでさらっちまったんだろう」
和んでいた。
「今回、Web小説と関係ないよね」「? 順子さんなんの話ですか」
うっさい。潤子。




