【Hiding】1 霧島と真の会合
霧島の機嫌は最悪であった。
イライラとした表情を隠そうともしない今の彼は普段の社交性を微塵も感じさせない。
加えて周囲の冷たい視線。今すぐにでもこの場を出て行きたかったが。
「なんで俺がアイツから逃げなければならないんだ」
そう思いなおし、堂々と胸を張ってふてぶてしくソファに座る。
そこに遠くから女の子の声。霧島は心の中で舌打ちした。
遭いたくないって言ったのに。
「あれ? 霧島じゃん」
はしゃぐ女の子の声は『霧島』と確かに発言した。
違和感を感じた霧島は振り返る。
「ん? 遥?! 」「おお。霧島だ。霧島だ。マジ久しぶり」
そこにはお嬢様ルックの遥がいた。
「おおおおおおっ??! お前なんちゅう格好をッ??! 」「似合う? 似合う? へへっ~ん! 」
……。
……。
「俺さ。確か澪と一緒にお前と風呂に入った記憶があるんだが」「うむ。あの頃はとおちゃんもいて楽しかった」
いやいやいやいや。霧島は普段の老成っぷりを出すことが出来ず、泡を食っている。
「確か、親戚の家にもらわれて」
「うむ。苦労した苦労した。朝日兄ちゃんと新しい父ちゃん母ちゃんはよくしてくれたけど」
霧島はマジマジと遥を見た。
遥の均整の取れた体型は普段の運動で鍛えられていて、
女性的な柔らかさは若干欠けるもののなかなかに魅力的な少女といえるが。
「お前、男だったと思うんだが」「気のせいだ」
読者の皆様には意味不明だが、霧島君の記憶の中では遥は女性ではなく、男性だったらしい。
幼少時代の友人の性別を間違えて覚えていることは稀に良くある。
変な沈黙が豪奢な部屋に流れた。
「いやいやいや。俺お前のチ●コ見たしッ?! どっから突っこめばいいのよっ?! 」
「なに? 突っこむ? ほうほう。霧島君はいまだ童貞なのか。ならばしかたな……」
堂々とスカートを翻し、下着に手をかけようとする遥に霧島の手刀が炸裂した。
このお話は十五禁だ。遥。
……。
……。
「和人。未来君を見なかったか」「そこで伸びている」
顎で遥を指し、珈琲を啜る霧島。
状況を一瞬で理解した唯の父。真はため息をついた。
「またか」「またかってコイツ、いつもこんなのばっかりなのか」
どうも、この娘は刹那的な行動に出ることが多く、
連れて帰ってはみたもの、真もホトホト困っている。
「今、礼法を教えている」
無理だと思うぞ。霧島はいいかけたが、真にも関わりたくないが旧友とは言え、今の遥に関わる気はない。厄介ごとはごめんだ。
「この莫迦がなんでこの家にいるかは知らないけどな」
霧島は珈琲のカップを置いた。
「うちの莫迦母があんたにどんな迷惑をかけたかよくしらねぇが、今の俺たち母子とあんたは他人だろ」




