【Stealth】10 澪よ。男(とら)だ。お前は男(とら)になるんだ
「まさか。澪タンにこんな可愛い彼女が出来るなんて」「うむ。こういう日もいつか来ると思っていた」
帰宅し、唯を見るなりニコニコと笑いながら料理を作り出した御鏡美緒。澪の母。
そして、珍しく家に帰ってきた御鏡零。澪の父。潜水艦乗りで自衛隊出身。
「お久しぶりです。御鏡のおじ様」「うむ。久しぶりだな。しばらく見ないうちにすっかり美人になったね」
そういって微笑む零にはにかむ唯。知り合いなのだろうか。
「真のヤツは元気かい」
微笑む零に眉をしかめる唯。其の様子をみて零は楽しそうにニヤリ。
「元気なようで何より」「……」
アハハと零は笑うと、唯の頭をゴシゴシと撫でる。髪が乱れた唯は口元をゆがめて手櫛を頭にかけた。
「まさか、真のヤツの娘を連れてくるとはなぁ」
零はそういって笑うと。
「ヤツは18で子供を」「それ以上喋るな」
澪は必死で親父を止めた。この若作りの親父は何を話すかわからない。
18で子供を作ったって。高校生か大学生じゃないか。澪は父が余計なことを言わないか心配でならない。
「ところで、息子よ。いいものをやろう」「? 」
ズリズリと部屋の外に引きずり出される澪。こういうときの零はろくなことをしないのだが。
一方。母・美緒は料理を終え、何処からか取り出した服を唯に見せている。
この家には年頃の娘はいないはずなのに、何故かある服の数々。色々ツッコミどころがある。
「ククク。これだこれだ。日本の技術の結晶をくれてやる」「(嫌な予感)」
零はそういうと、ポケットから何か取り出す。五つのなにかが連結された銀の袋。
「0.005ミリの超高級コンド」
澪の奥義。『1インチパンチ』が父に炸裂した。
「どうして。どうしてこうなる」
『一緒にお風呂に入りましょう』との申し出は断固拒否したが、この家には澪の寝場所は。
下のリビングのソファを躊躇なく日本刀で両断してニコニコと笑う零はこういった。
「しまった。何故かソファが壊れたな」壊したんだろ。
「ふしぎねぇ。来客用のお布団。皆クリーニングに」
美緒もニコニコと笑っている。不思議でもなんでもない。腐女子め。
「健闘を祈るぞ。息子よ」親指を出してカッコよく決める零。問題はその親指。中指の上から伸びている。
「澪タンにもそんな日がくるなんて」美緒は涙を流している。
「ああ。私の澪タン。私と結婚してくれると言ったのが懐かしいわ」
何年前だ。澪はツッコミを入れたかったが、両親が突っこむことを期待しているのは別のものである。
「しっかりビデオに撮ってやるから安心しろ」
どんな変態だよ。 や め ろ 。 絶 対 や め ろ 。
「邪魔しないように、隣の部屋で聞き耳を立ててあげるわ」
や め ん か 腐 女 子。
必死で抵抗のアピールをする澪。そしてその両親に対して、
貸してもらったパジャマを着ながら小首をかしげる唯。
ちなみに、この期に及んでも。唯は澪の事を女性だと思っていた。
「では、今夜は眠りましょう」
必死で「勉強しなければ」と言う澪に「では、一緒に」と微笑む唯。
唯の勉強の教え方は霧島以上だった。
あっという間に先に出題されていた夏休みの宿題が終わり、其の上高度な講義まで受けてしまった。
「こ、更新を」新堀唯の更新。横でのツッコミや編集は更に完璧だった。
流石名門文芸部部長。隙が無い。誤字脱字に重複表現。今までの更新分まで完璧なチェックが入った。
「じ、じ、じ自習をしなければ」
「澪さま。体調が悪いと申されていらっしゃったのに勤勉ですね」
そういえば、そう言った気がする。
「ダメですよ。はやく寝ないと」
唯の腕が澪の腕にからみつく。
澪の脳が沸騰した。
攘夷でござる。攘夷でござる。
黒船来航でござる。ポッポー。ポッポー。ピーポ ピーポ。
大政奉還しか我らの生きる道はありませぬ。生麦事件で生卵。
死んで花実が咲くものか。隣の客はよく餓鬼喰う逆だ。
*いしのなかにいる*
「明かり。けしますよ」
ずりずりとベッドに引きずり込まれる。澪。
「女の子同士で眠るなんて初めてです♪ 」
*おおっと! テレポーター*
「澪さん。今日は色々あって。とても楽しかったです」
隣の部屋では澪の両親が迷彩服を着てスタンバイしている。
海上自衛隊の癖に隠密も出来る澪の父。本当に何者なのだろうか。
「いけ。そこだ。ぶちゅーっと 」「貴方。気付かれますわ」
零はさておき、美緒。あんたも何者だ。
「今日は。眠りましょう」
おやすみなさい。唯がふざけるように澪の頬にキスをした瞬間。澪の意識はホワイトアウトした。
唯は澪の腕に抱きついたまま、穏やかな寝息を立てだした。
「早く。しろよ」「ふふふ。青春ですね」
隣の部屋では、澪の両親が色々と悶々としていた。
次の日。澪たちはやけに化粧のノリが良くてツヤツヤな母と、やつれきった父をみることになる。




