【かくれる】4 パスワードとID
二話連続投稿。昨日は更新せず申し訳ありませんでした。
「お前の書いた部の広報、大人気だぞ」「ホントッ!? みっちゃんありがとう! 」
「(部って、遥さんのところは遥さんしかいないじゃないですか)」
変な気球を使って成層圏から写真を取ったりしている奇人変人。遥は別の意味で有名人だ。
昨今は変な会社を校内で設立した。先生たちの大目玉を食らったのは記憶に新しい。
「あ。そうそう。潤子」「うん? 」
「新堀にこんなアプリ勝手に入れられてさ、なんか変なサイトがお気に入りになってるんだが」
そういえば消し忘れていた。
「シラネ? コレ? 」「……存じません」
流石潤子様。救いの神ッ!! 女神さまッ!
そう思ったかどうかはさておき、唯は心の中で快哉を叫ぶ。
「ええ。存じませんよ。消しておきますので」
「そっか。変なウィルスとか入れられてたらたまらん」
仲良く駄弁る。そんな二人に。
「(どうして自分に潤子は心を開いてくれないのだろう)」唯は軽く落ち込んでいた。
人の秘密をついて『御友達になってくれませんか』なんていう腹黒い女、
同類(遥)くらいしか寄ってこないのは当然なのだが、唯の頭にはない。
成績は校内でも和代、潤子に続く唯だが、色々と残念な子である。
「と、こ、ろ、で」
唯の目の前で揺れる遥の踵がピタリと止まる。
座り込み、机の中を覗きながら悪魔の笑みを浮かべる遥に愛想笑いをするしかない唯。
「なに隠れているのかなぁ? 」「ご、御機嫌よう。遥様」
結局、唯は机の下から遥に引きずり出され、
厭々ながらUNOに付き合わされる羽目になった。
勿論、卓上遊戯部でもない限り、こういった遊具は持ち込んではいけない。
「ほれ、これ原稿料」「わ~い! 」
原稿料と言っても図書券だが、潤子には嬉しいらしい。
「あ、コレ、うちの風呂券。おっちゃんが遥のこと気に入っててうちで働けって」
「むぅ。貸自転車屋に腹が減ったときにタカるほうが楽なんだけどなぁ」
この二人、苦学生である。
潤子と和代はコンビ二と風呂屋が一緒になった妙な下町の風呂屋で看板娘兼番頭として活躍している。
「あ、コレ、風呂券のお礼。なんか貸自転車屋のおっちゃんが貰ったって」
「わぁ? コレ映画の券? カズチャンと見に行く! 」
私を選択肢に入れて欲しいなぁと唯は思ったが無邪気に笑う潤子には通じていないらしい。
「私の上がりですね」
唯はこの莫迦らしいゲームを切り上げて、お花を摘みに行こうと思ったのだが。
「唯様。少しお話が」「? 」
唯は気がつかなかったが、潤子の笑みはいつぞや唯が潤子と『御友達になった』時に浮かべていた笑みと同一だった。
「っっ????????! 」
「素敵な小説を書いていらっしゃるのですね」
潤子の手の中の遥の携帯電話。
その中には唯のXユーザーページが表示されていた。
「IDとパスワードは手動入力にしておいたほうが宜しいですよ。唯様」
唯の背中からはダクダクと嫌な汗が流れていた。




