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Review(レヴュー)!  作者: 鴉野 兄貴
エロを書いて何がわるい!

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【かくれる】3 遥(ハルカナル)

 「ふう」

唯は「普通の」なろう投稿を文芸部のPCから行う。部員たちも例外ではない。


 昨今の文芸部は電脳化が進んでいる。

御互いに書いた小説や詩を見せ合う程度から、他校の文芸部とのメール交換による交流。

先輩(OG)作家との交流とPCは欠かせないツールである。


 とはいえ、文章に含めて字の美しさも当然文芸部活動に求められる。

「潤子さん。この字はちょっと」苦笑いする唯に肩を落とす少女。

上背は並み。もしくはそれより少し低い程度。


酷暑の季節なのにタイツとアンダーウェア、冬服。極めつけは薄い手袋。肌の露出は顔のみ。

思わず彼女の胸元に目をやってしまった唯は眉をしかめる。


ちちがでかい。マジ。でかい。


 「ううううううう。書き直します。新堀さん」

がっくりと肩を落とす少女。潤子。


 高峰潤子たかみねじゅんこ(本名:風鳴潤子)。

その正体は日刊ランカー『風鳴かざな』。

歴史を舞台にした悲劇を得意とするがこちらは泣かず飛ばず。

ランキングに乗るのはもっぱら歴史を舞台としたシモネタギャグ小説である。


 「潤子、お前。……こほん。潤子さん。小学生でもこのような誤字はしませんよ」

穏やかに微笑むのは彼女の姉(実は親友)で高峰和代たかみねかずよ

妹に反してその字面は丁寧。清楚。繊細。


 もっとも、和代は字を書くことよりPCで絵を描くことのほうが得意である。

本人曰く、幼少期は絵の具が買えない環境だったそうだ。

時々美術室で美術部に混じって粘土を弄ったり油絵を楽しむ姿が散見される。


 「和代さんは詩を書いても綺麗ですよね」「大したことはありません」

文芸部員たちに謙遜する和代。彼女自身は本来帰宅部なのだが。


 「ホント。何でも出来るよね。カズちゃ……和代御姉さまは」

この二人が猫に占領されたオンボロアパートに住んでいることは周知の事実だが、

和代にせよ潤子にせよ、不思議な気品がある。そこがあのハルカナルとは違う。


 「この俳句は斬新です。私もこういう表現が出来たらいいのに」

「潤子さんのほうが俳句は得意です」羨望の視線を潤子に振ることで回避する和代。かなりの世渡り上手。


 「ううん。和代御姉さまのほうが俳句や詩は得意ですよ。あと楽器も」

和代は音楽部にも出入りしているが、見事なヴァイオリン捌きを披露する。

潤子は、楽譜すら読めないらしい。


 賑やかな部室だが、和代が来ないときは潤子と唯しかいない。

他の部員はPCを使えばほとんどの活動ができるため、和代が来るかどうかで決まる。


 「やっぱり、潤子さんと『御友達』になって良かった♪ 」「……」

普段は素直で子供っぽい潤子だが、唯には思うところがある。

お嬢様学校である『神楽坂女学院』において、

チンポチンポイェーイ! なシモネタ小説を書いているとバレる事は死を意味するが。


 「(なんでばれたんだろう)」

潤子は言葉に出来ぬ叫びを脳内に留めて頭を掻き毟りたい衝動に駆られている。


 「ああ。潤子様。これからも私たちはずっと親友ですよ」

ハルカナルみたいな手癖の悪い女と関わりになっているとロクなことがないし。

唯のその言葉を聴いて潤子は滂沱の涙を心の中で流した。


 「御疲れさまでした。お片づけは私と潤子様がやっておきますので皆様は」

「和代様っ! 美味しいパフェの店があるんですよ」「いえ、和代様は私の家で勉強を見てくださる約束です」

「いえ、私と校内図書館に行く約束ですわ」

勝手に『約束』が決められまくっている状況に和代は苦笑いする。


 「潤子さん。申し訳ありませんが」和代は上品に潤子に謝罪する。

「(すまん。今日は一緒に帰れそうに無い)」「(ふん。カズチャンなんか知らない)」

「(そんなこと言うなって。後で埋め合わせすっからさ)」


 潤子と和代の絆は深い。アイコンタクトで高度な会話をかわす二人。

勿論、和代の取り巻き(部室を出たとたん更に増えている)は気付かない。


 「凄い人気ですよね。和代様」「姉は男性より、女性の心を掴んでしまうようです」

男性なんて父親以外見たことの無い生徒も少なからずいる環境では、それはそれはモテる。


 「お~い。新堀」

その声を聞いて唯は身体を震わせ、即座に机の下にかくれた。

「はしたないですよ。新堀さん」潤子に必死で手を振って「(しゃべるな)」とアイコンタクトする唯。

しかし、唯のアイコンタクトは潤子には通じていない。


 唯が隠れるPCデスクの上に軽い衝撃。

唯の視界に机に座った女性のかかとが揺れるのが見える。


 「潤子。新堀見なかったか? 」「イナイ。ニイホリ イナイ」

カタコトで喋る潤子にニヤリと笑うハルカナル


「いるんだな」


 「いない。いない」「イナイ。イナイ」

机の下と、ハルカナルの前で首を振る娘たちの声に流石のハルカナルもあきれ返る。


 「……あれ」

ハルカナルの視線が潤子の手に握られた原稿に。


 「潤子。お前詩も書くようになったのか? 」「う。うん」

見せろ。そういってひったくるハルカナル


 「ふん。ふん。ふん……お前、いいセンスしてるじゃん。今度またうちの部の広報書いてくれよ」

「ほんと? みっちゃん! 」潤子の表情が明るくなる。この二人、妙に気が合う。


 早く出て行って欲しい。出て行け。ハルカナル

というかお花を摘みに行きたい(トイレに行きたい)

唯の苦悩は続く。

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